FNSドキュメンタリー大賞
帰ってくるはずの娘が帰ってこなかった・・・
母は作り続けます 甘い甘い卵焼きを・・・
父は歩き続けます 娘の通学路を・・・

第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『通 学 路』 (制作 東海テレビ)

<8月20日(火)深夜27:13〜28:08放送>
 「なぜ、はねられたんだ。青信号なのに・・・通学路なのに・・・」

 毎朝、お母さんが学校に通う子どもたちを見送ります。送り出す時のコトバは、必ずといっていいほど「行ってらっしゃい。クルマに気をつけてね」です。

 1966年12月15日に愛知県猿投町(さなげちょう=現・豊田市)で発生した『猿投町ダンプカー事故』。保育園の前で横断歩道を渡ろうとしていた保育園児の列にダンプカーが突っ込み、園児10人、保母1人が死亡。第1次「交通戦争」を象徴する大惨事に、当時の佐藤栄作首相が緊急対策を指示するなど、日本中が国をあげて通学路の安全対策や、子どもたちをとりまくクルマ社会を見直す機運が盛り上がりました。

 あれから35年・・・。去年、三重県津市で、小学2年生の花井香菜(はない・かな)ちゃんが交通事故のため死亡しました。事故があった交差点は通学路でした。

 「なぜ、はねられたんだ。青信号なのに・・・通学路なのに・・・」

 通学路は安全な道と思っていた父・花井孝之さんは、娘を亡くした後、初めて通学路を歩き、「こんな危険な場所を歩かせていたのか・・・」とおえつを漏らしました。あまりにも危険な個所が多かったからです。
 ガードレールが途中でなくなってしまう場所。クルマが来ると塀に張りつくようにしなければ通れない狭い道。そして事故現場の交差点の信号機は点滅式でした。
 亡くなった娘の通学路の危険個所は、花井さんが数えただけでも20個所以上に上りました。地元の自治会が行った通学路の危険個所についての緊急アンケートの結果、市に対策を陳情した危険個所は140個所以上に上りました。

 通学路での交通事故で娘を失った花井さんは訴えます。
 「子どもたちに安全な通学路を・・・。こんな悲しい思いをするのは私たちだけで十分です・・・。」子どもたちの命を守るため、地域をあげての取り組みが始まりました。
 猿投ダンプカー事故があった国道を大型車が猛スピードで走り抜けていきます。そこには大惨事があったことをしのばせるものは何も残されていません。保育園の園長は「風化させちゃいけない」と、子どもたちを前に、静かに大惨事の記憶を話し続けています。

 通学路にはたくさんのクルマが走っています。そんな道を、とても危ない思いをしながら子どもたちは学校へ通っています。第1次交通戦争の象徴ともいわれた「猿投ダンプカー事故」から35年。子どもたちをめぐるクルマ社会の状況は変わったのでしょうか・・・?
 今でも毎年5000人以上の小学生が通学路で交通事故に遭い続けています。
 番組では「通学路を安全に」と訴える遺族の活動や、その家族、地域の動きの取り組みを追うことで、クルマ社会の中の子どもたちが置かれた現状を考えます。

 取材を担当した東海テレビの野瀬義仁ディレクターは番組の見どころや取材を終えた感想をこう語っています。
 「通学路での交通事故で、小学2年生の娘を亡くした父が、事故後初めてランドセルを空けました。まだ1年余りしか使われていない『赤いランドセル』。まるで宝物のように、何重にも布で包まれていました。でも、ランドセルの皮には穴があき、裂けて、歪んでいました。中から取り出された文房具や教科書…。筆箱は砕け、教科書は複雑に折れ曲がっていました。父はおえつをこらえて何度も深いため息をつきました。母は、まだランドセルを見ることができません。交通事故が、被害者に、そして被害者の家族に何をもたらすのか、何よりも雄弁に語っていました。帰ってくると思った娘が帰ってこない・・・親にとってこれほど辛いことはないと思います。食事の時、いつも話題になるのは亡くなった娘のこと。亡くなった娘のことを話している時だけ家族に笑い声がよみがえります。娘の席はいまも母の隣です。そして母は娘が大好きだった甘い甘い卵焼きを、今も作り続けています。父は、事故のあった交差点に、毎週通い続けています。今年5月で事故から1年。取材を始めた頃は、一緒にいるのが辛くなるほどでした。しかし、『通学路を安全に』という遺族の切実な思いが、少しずつ地域を動かしていきます」

 8月20日(火)深夜27:13〜28:08放送の第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『通 学 路』(制作 東海テレビ)にご期待下さい。


<番組タイトル> 第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『通 学 路』
<放送日時> 8月20日(火)深夜27:13〜28:08
<スタッフ> ナレーション : 松下由樹
プロデューサー : 山内公明
取 材・構 成 : 野瀬義仁
撮    影 : 国井幹祐
音    声 : 桜井祐介
効    果 : 岡 泰典
T K・記 録 : 磯谷ひろみ
<制  作> 東海テレビ

2002年6月19日発行「パブペパNo.02-181」 フジテレビ広報部