FNSドキュメンタリー大賞
「ハワイで原爆について語りたい・・・」
広島で原爆被害の悲惨さを語り続ける講釈師の願い果たしてその思いはかなうのか・・・?


第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ハワイで原爆を語りたい 〜70歳・講釈師雲助の思惑〜』(制作 テレビ新広島)

<6月19日(水)深夜26:55〜27:50>
 広島には多くの原爆を語る人々がいます。

 その中の一人アマチュア講釈師「緩急車雲助(かんきゅうしゃくもすけ)70歳(本名・久保浩之)」は、原爆の悲話や、昔から広島に伝わる物語などの演目を創作し、「講釈師」として、現在活躍しています。

 雲助さんは15歳の時、国鉄に勤め、そのかたわら演劇活動に参加し、しゃべることに興味を持つようになりました。それ以来、いろいろなところで講釈をしてきました。

 広島県の大崎下島の「遊女哀歌」の講釈や、修学旅行で広島にきた高校生などに「原爆講釈」を行なうほか、韓国でも、講釈師として精力的に活動しています。

 雲助さんの一番の願いは、ハワイで広島から移民した人に講釈するということ。ハワイで「原爆について語りたい」「犠牲者の数だけ『原爆』を伝えたい」と思い続けます。

 雲助さんはハワイのホノルル県人会の人に手紙を出し、原爆講釈を受け入れてくれるように頼みます。しかし、簡単にはOKがもらえません。移民の多くは2世、3世で、「日本語がわからない」「原爆問題は受け入れない」という理由から、良い返事をもらえないのが現状でした。その後、あきらめずにいろいろ働きかけたおかげで、ハワイでの原爆講釈に理解を示してくれるところが見つかります。しかし、アメリカ同時多発テロが起こり、「原爆を題材としての企画内容は難しい」と断られてしまいます。

 原爆講釈を受け入れてもらえないもどかしさを感じている時、ハワイで受け入れてくれるところが決まったという朗報が入り、やっと雲助さんの念願のハワイ行きが決定します。

 雲助さんは原爆講釈の3つのレパートリーの中から「石に影を焼き付けた男」」を選びます。しかし、この話は少しアメリカを批判するようなニュアンスが含まれてており、友人たちは「黒い弁当箱」の話をするように勧めます。原爆の被害を強調するあまり、原爆への怒りの気持ちで、話が大きくなることを心配した友人たちの進言です。「黒い弁当箱」の話は広島平和公園記念資料館に展示されていて、ある弁当箱について語られるもので、実際に被爆にあって亡くなった少年の話です。雲助さんは果たしてどちらの話を選ぶのでしょうか。

 番組を担当した松田恵子ディレクターは、
「雲助さんの毎月のスケジュールはびっしりと詰まっています。若者顔負けのパワフルな行動力に心から感心しました。雲助さんは私に『原爆はいけん』。『核はなくさんにゃあいけん』と『原爆』のむごさについて熱く語り、『被爆者ひとりひとりを供養するため原爆講釈を続けていきたい』と話されます。しかし、原爆講釈で供養をする、とはどういうことなのか。きれいごとではないのでは。いろいろな疑問が膨らみ、雲助さんにとって原爆に対する気持ちがどういう位置にあるのかを表現したいと思い、雲助さんのありのままの姿を映し出すことにしました」
と話します。

 今なお、「リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)」という言葉が生き続けているアメリカ。雲助さんは、ハワイ移民たちの原爆に対する考え方や捉え方の相違を感じながらも、被害者の立場に立った「雲助流講釈」を貫きます。原爆のむごさを伝えるだけでなく、アメリカを批判するような雲助さんの言葉に、番組ディレクターは何度もヒヤリとさせられたといいます。松田ディレクターは、
「雲助さんのありのままの活動を通して、被爆者と原爆を意識していない人たちの原爆に対する意識や思いの溝が少しでも、縮んでほしい。原爆はどんどん風化し、核は一向に廃絶されないのが現実です。雲助さんのような原爆を語るひとには是非、『原爆のむごさ』を若い人の胸に響かせてもらい、後世に話を残してほしいと思います」
と語っています。

 被爆者と原爆を意識していない人の間・・・。原爆を伝えていく側はどうやって、恐ろしさを伝えられるのか。

 番組では、ハワイ移民の人たちの原爆に対する考え方や捉え方のギャップを描きながら、雲助さんの原爆に対する並々ならぬ強い信念と生き方を通して、「現代の人々の『原爆』とは何か」を見つめます。

<番組タイトル> 第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『ハワイで原爆を語りたい〜70歳・講釈師雲助の思惑〜』
<放送日時> 6月19日(水)深夜26:55〜27:50
<スタッフ> プロデューサー : 辻井正典(テレビ新広島)、横田孝浩(TSSプロダクション)
ディレクター : 松田恵子(TSSプロダクション)
構    成 : 増田健太郎、松田恵子(TSSプロダクション)
ナレーション : 古沢智子(テレビ新広島)
編    集 : 山本憲治(TSSプロダクション)
撮    影 : 山本 龍(TSSプロダクション)
音    声 : 広瀬康詞(TSSプロダクション)
映    像 : 柳谷基司(TSSプロダクション)

2002年6月5日発行「パブペパNo.02-142」 フジテレビ広報部