FNSドキュメンタリー大賞
ゴミは減量するのか?それとも大量に焼却を続けるのか?
相反する国策の狭間で、揺れ動く地方自治体


第10回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『炉は眠っていた 〜ゴミ対策 矛盾する二つの国策〜』 (制作 さくらんぼテレビ)

<9月26日(水)深夜26:35〜27:30>
 21世紀の日本はまさに課題だらけです。景気回復、財政再建、構造改革、環境対策…。そんな中、小泉政権はついに「財源を地方に譲渡しても良い」との構想を口にしました。政策設定は霞ヶ関で、地方自治体は黙々とその目標を達成するという「主従関係」に、ついにメスを入れようというわけです。これは戦後半世紀あまり続いてきた日本の基本構造の大変革で、まさに「聖域なき改革」です。しかし、その行く手には大変な難問が待ち構えています。

 今、日本各地では実に100もの新しいゴミ焼却炉が建設されています。きっかけは4年前に厚生省(当時)が、ダイオキシン類の基準を抜本的に見直すとしたことでした。新基準は「ゴミ焼却などで発生する猛毒ダイオキシン類の発生量を、一気に800分の1に減らす」という内容でした。旧式の焼却炉では新しい基準をクリアできないため、各自治体は一気に新焼却炉の建設に乗り出しました。
 山形県も無論例外ではありません。県内には4基の焼却炉が新設されることになりました。しかし、県北部にあり新庄市など8市町村で構成している「最上広域市町村圏事務組合」の建設計画では、地域住民の反対運動が起きます。例によって迷惑施設に対する拒絶反応…と思われたのですが、騒動を追跡取材していくと、様々な問題が浮かび上がってきました。
 住民不在の行政、密室の意思決定、国の方針と地方自治体の実情の乖離、そして中央の方針に従順に従う地方…、中でも重大な問題は、全く相反する二つの国策が同時に推し進められている現実でした。
 2010年までに焼却ゴミの量を15%減らすという減らすという大目標を掲げたはずの国が、今回は一転してダイオキシン類の対策のために大型炉を作れとの通達を発しています。一体、21世紀、この国はゴミを減らすのか、それとも大量に焼却を続けるのか…この絶対矛盾が問題を引き起こさないはずがありません。
 国は苦しい財源の中から新炉の建設に1兆円を超える補助金を用意し、自治体に提示しました。ただしその補助金には当初、こんな条件が付いていました。「100t以上の焼却炉を建設する場合に限り、4分の1を補助する」。
 財政が苦しい地方自治体の大半は、補助金を使って炉の大型化に乗り出します。ところが地方にはそれほど大量のゴミはありません。減量化も進めています。その結果皮肉にも、ダイオキシン類対策のために作ったはずの大型炉は、ゴミ不足で休止せざるを得ない状態となりました。一定量以下のゴミを燃やすと、ダイオキシン類が発生する恐れが高いからです。
 そしてその危険性を避けるために、また新たな費用、税金が投入されています。大きすぎる炉を建設した費用と加えて、二重の税金の浪費です。
 相反する国策の狭間で、地方自治体はどう揺れ動いたのか。独自に入手した莫大な量の議事録をもとに、苦悩と混乱を描きました…。

 取材を終えたさくらんぼテレビの斉藤伸子ディレクターは、
「取材期間は1年半に及びました。その間、多くの方にご協力いただきましたが、内部事情を証言していただくインタビューのOKをもらうまでに、かなり時間がかかりました。
 国策としてのゴミ対策の矛盾を描いてみましたが、住民サイドと行政サイドの両方から俯瞰しないと、この矛盾は見えてきません。またこれは当然山形県だけでなく、全国に共通する身近な問題です。矛盾するどちらの道を選ぶか、その答えを番組の中から感じ取っていただけたらと思います」
と語っている。


<番組タイトル> 第10回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『炉は眠っていた 〜ゴミ対策 矛盾する二つの国策〜』
<放送日時> 9月26日(水)深夜26:35〜27:30
<スタッフ> プロデューサー : 冨沢弘行(さくらんぼテレビジョン報道制作部長)
取 材・撮 影 : 斉藤伸子(さくらんぼテレビジョン報道制作部)
撮 影・編 集 : 和田幸一(さくらんぼテレビジョン報道制作部)
構    成 : 高橋 修
ナレーター : 野田圭一、郷里大輔(共に、AONI PRPODUCTION)
<制 作> さくらんぼテレビジョン

2001年9月4日発行「パブペパNo.01-297」 フジテレビ広報部