FNSドキュメンタリー大賞
食中毒事件で廃部となった“雪印アイスホッケー・チーム”
北国のスポーツチームを襲ったリストラの嵐と、最後までリンクでの勝負をあきらめなかった企業スポーツマンの物語


第10回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『「廃部」 食中毒事件から1年・揺れた企業チーム』 (制作 北海道文化放送)

<8月15日(水)深夜26時55分放送>
 去年6月、9000人にも及ぶ患者を出した雪印低脂肪乳食中毒事件。当初、大阪工場に原因があると思われた食中毒は、実は北海道の大樹工場が停電したことに始まることが明らかになった。大樹工場が営業停止となるまでのおよそ1カ月半、マスコミが競って雪印食中毒事件を報道し、矛先は異物混入事件など、雪印以外のメーカーにも向かっていったのは記憶に新しいところだ。
 現在、東京に本社を置く雪印乳業は1925年(大正14年)に、前身と言える「有限責任北海道製酪販売組合」として産声をあげた。1950年(昭和25年)に正式社名を雪印乳業株式会社とし、その後日本のトップブランドとなったのは衆知の通りだ。
 その後雪印は業界内部でリーダーシップをとる一方、企業としてのスポーツチーム作りにも力を入れ、陸上部、スキー部、アイスホッケー部を設け、北国の代表的な企業として選手の育成に努めてきた。とくにスキーとアイスホッケーは国内での各大会やリーグ、ひいてはオリンピックまで、雪印の選手が活躍する姿は全国的に知られており、特に道内ではウインタースポーツに親しむ子供たちの目標となっている。
 しかし食中毒事件から約2ヶ月半が経った去年9月26日、会社から突然アイスホッケー部と陸上部に「廃部」の2文字が突きつけられた…

 8月15日(水)放送の第10回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『「廃部」 食中毒事件から1年・揺れた企業チーム』(制作 北海道文花放送)では、集団食中毒という大事件の結果「廃部」が決定していながらも夢を捨てずに戦い続ける雪印アイスホッケー・チームの選手たちの姿を追いながら、企業スポーツチームのあるべき姿、人間の誇りとは何なのかを考える。
 制作にあたった遠藤克ディレクター(北海道文花放送報道部)は、「廃部の発表に同席した岩本祐司監督は、まだ現実が飲み込めていないようでした。チームの継続取材を決めたのは、この時です」と取材のきっかけについて語る。

 食中毒事件が起きてから間もない去年の7月13日、スポーツ関連の3つの部は事件の重さを受け止め活動を自粛した。廃部の決定は9月29日の活動再開を待っていた矢先のことだ。9月30日から始まる日本リーグを直前に控えていたアイスホッケー部の選手たちは、この事実を監督兼選手である岩本祐司から聞かされた。不安を隠しきれないまま、開幕に向けて新横浜へと旅立ち、優勝できれば自分たちの運命が変わるかもしれないと最後まで戦い抜いた…。
 「廃部の決定は覆らないとしても、日本リーグで優勝できたなら、自分たちの運命が変わるかもしれない。岩本監督率いる雪印チームは大きな目標に立ち向かうことで廃部の不安を乗りこえようとしました。前半戦の成績が3位にとどまり、新しい年を迎えての初練習は気迫のこもる感動のシーンです。そしてチームは準優勝という輝かしい成績を残すことができました」(遠藤ディレクター)

 食中毒事件から約1年、業界最大手の座から転落した雪印乳業は、工場の廃止、従業員の削減など再建に全勢力を注いでいるが、失ったシェア復活に悪戦苦闘している。
 一方、スキー部の存続とは裏腹に4月30日で廃部となったアイスホッケー部の選手たちは、受入先の決まらないまま、自主トレーニングを始めている。札幌では新しいチームの設立準備が始まったものの、まだどうなるか決まっていない。選手にとっては廃部の決定があったときと変わりのない宙ぶらりんの状態が続いている。7月上旬、岩本監督は、新しいチーム要員からはずされた。一般社員として会社に残るか、別の道を歩むことになるのか、まだはっきりしていない…。

 「再建途上の雪印乳業と、選手生活を続けたいアイスホッケー部。両者のこの1年と、まだ進路の見えないアイスホッケー部の今後を、監督兼選手として最後のリーグを率いた岩本祐司を中心に、国内における企業チームの今後の在り方も含め描きました。
 企業の生き残りのためにはリストラが唯一の手段とされ、企業を守るために犠牲となる従業員が増える中で、ひとりひとりの人間としての誇りとは何なのかについても、問いかけてみました。
 この番組は、未曾有の食中毒事件が引き金になり、北国のスポーツチームを襲ったリストラの嵐と、最後までリンクでの勝負をあきらめなかった企業スポーツマンの記録です」
と遠藤ディレクターは締めくくった。


<番組タイトル> 第10回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『「廃部」食中毒事件から1年・揺れた企業チーム』
<放送日時> 8月15日(水)深夜26:55〜27:50
<スタッフ> プロデューサー : 原子敏明
ディレクター : 遠藤 克
撮    影 : 小出昌範
音    響 : 佐々木佳久
ナレーション : 宇野章午
<制 作> 北海道文化放送

2001年7月31日発行「パブペパNo.01-259」 フジテレビ広報部