FNSドキュメンタリー大賞
母親の訴えを聞かぬ小児科医たち!
そして小児科病棟のリストラ…
小児科医療の本来のあり方を探る渾身のドキュメンタリー!!

第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『母だからこそ…リストラされる小児病棟』 (制作 テレビ西日本)

<12月13日(水)深夜26:25〜27:20放送>
「小児病棟のリストラが進む中、この番組を通じて小児医療に関する議論が少しでも活発化すれば、そして子を持つ母にもっともっと声をあげてもらえればと思います」(小寺 敦ディレクター)

 「いつもと違う!ただの風邪のはずがない!」。
 こう訴えた母のSOSは無視され、4歳3ヶ月の幼い命が失われた。

 福岡市の主婦・高山圭子さんの一人娘・花菜ちゃんが亡くなったのは、今から3年前のこと。ただの風邪と診断されてからわずか17時間後のことだった。そして死亡診断書には「心筋炎」という聞きなれない病名が書かれていたのだ。
 「心筋炎」とは風邪のウイルスなどが心臓の筋肉に入りこみ炎症を起こす病気。風邪と症状が良く似ているが、見落としはそのまま命を落とすことにつながる。逆に早期発見、早期治療さえ行われていれば助かる病気でもある。高山さんは、花菜ちゃんを診察した医師に「ただの風邪じゃありません。いつもと様子が違うんです」と訴え続けたが、医師はこの叫び声をないがしろにしてしまったのだ。
 その一方で、現在の医療の現場で子供達を守るはずの小児科が次々に減っているというのだ。この10年間で全国で実に400もの小児病棟が姿を消している。理由は「子供の数が減っていること」「子供が的確に自分の症状を訴えることができないため診察が難しいこと」、そして何より小児科は保険点数が低いため「儲からないこと」というのが主なものだ。
 さらに、母親の訴えに耳を貸さない小児科医の存在がある。実は、母親の訴えを聞くことが小児科の基本だといえる。つまり、子供は自分の症状を的確に表現できないので、子供と四六時中接している母親の目が大切という意味だ。しかし、この「いろはのイ」が医療現場では必ずしも守られているわけではない。

 番組取材中、高山さんは第2子を身ごもった。最初は再び母親になる喜びを見出していた高山さんだが、出産が間近になるにつれ、信じられない感情を抱く様になったと話す。
「たったひとりの我が子を亡くした後で再び子を身ごもるということは、想像していた以上に辛いものだったと実感しています。出産が現実のものとして近づいてきている今だんだんとおなかの子に対する感情が信じられない方向に向いてきています。それは“愛情”とは対極にある感情です。花菜はいなくなったのにこの子は生きている…。それが時々我慢ならないのです」
 高山さんが取材班にあてたメールには「花菜ちゃんを亡くし止まったままの時間」と「現実に流れている時間」のギャップに苦しむ高山さんの姿が窺えた。そして出産。無事3500グラムの元気な男の子を出産し、高山さんはかつての自分を少しずつ取り戻し始めた。
「一番が2つになったと思います」。第2子貴一くんを新しい家族に迎えた高山さんは、その時の気持ちをこう語った。
「この子が生まれるまでは娘に対する愛情の一部をこの子に削り取られてしまうと思っていたけど、そうじゃなかった。単に自分の中の愛情のキャパシティーが増えただけなんだ、と。だから一番が2つになったと思います」と高山さんは話す。
 最愛の娘を亡くしてから、外に出ることを避けていた高山さんだが、今では外に出て太陽の光や風や音を楽しめる様になっていた。下を向いて青ざめていた表情も、やがて明るさを取り戻していた。
 番組は、まず今年8月に福岡県内で放送したが、番組を見た高山さんからは、次のよう感想がメールで寄せられた。
「貴一が生まれて以来、初めて花菜の映像を目にしました。苦しいかなと思ったけれど不思議とそうではありませんでした。テープを回したあの一瞬一瞬が、まるでついさっきのように鮮やかに蘇りました。そして私の腕の中には貴一がいる…。花菜が“現実の時間”にやってきてくれた気がしました。かわいくてかわいくてしかたがなかった…。『貴一、お姉ちゃんが笑ってる!』と私たちも笑いました。4人家族を、今までで一番強く感じた瞬間でした。ありがとうございました」(高山さんからのメールより)

 取材を担当したテレビ西日本の小寺 敦ディレクター「番組の中で、子供を亡くした気持ちや心境の変化等を赤裸々に語ってくれた高山さんからのメールは、比較的高かった視聴率や再放送を求める視聴者の反響よりも番組の成功を実感させてくれるものでした。ドキュメンタリーには『人の成長を追う』という一面があると思います。この番組では『最愛の子供の死』『同じ境遇の仲間』『新たな生命の誕生』など、様々な経験を経て、高山さんにあらわれた心境、表情の変化を丹念に追いました。小児病棟のリストラが進み、母親の訴えに耳を貸さない医師も多くなりつつある今、この番組を通じて小児医療に関する議論が少しでも活発化すれば、そして子を持つ母にもっともっと声をあげてもらえればと思います。子供のことを誰よりも分かっている『母だからこそ』」と話している。

 12月13日(水)深夜26:25〜27:30放送の 第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『母だからこそ…リストラされる小児病棟』(制作 テレビ西日本)にご期待下さい!!


<番組タイトル> 第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『母だからこそ…リストラされる小児病棟』
<放送日時> 12月6日(水)深夜26:25〜27:20
<スタッフ> プロデューサー : 久保 浩(テレビ西日本報道部)
取 材 ・ 構 成 : 小寺 敦(テレビ西日本報道部)
撮    影 : 古城信義(テレビ西日本映像取材部)、入江真樹、安波嘉寛
編    集 : 古城信義(テレビ西日本映像取材部)
タ イ ト ル : 田代義典(テレビ西日本制作部)
効    果 : 安楽雄三(テレビ西日本制作技術部)
ナレーション : 田久保尚英(テレビ西日本解説委員室)、室屋典子
<制 作> テレビ西日本

2000年11月1日発行「パブペパNo.00-358」 フジテレビ広報部