FNSドキュメンタリー大賞
“晴れたら畑仕事をし、雨が降ったら休む…”
ある過疎の山里に住みながら自然任せの生活を送る1組のお年寄り夫婦に密着!
彼らの日々是好日的な生き方を通して、高齢化社会への進むべき道を模索する渾身のドキュメンタリー

第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『日々是好日 〜天国にいちばん近い里〜』 (制作 テレビ宮崎)

<10月25日(水)深夜26:25〜27:20放送>

 戦後、驚異的な高度成長を遂げ先進国の仲間入りを果たした日本。だが、その繁栄の陰で山村は過疎化、高齢化という問題に悩まされ続けてきた。特に最近ではほとんどの地域が高齢者の福祉問題で悩まされている。
 しかし、宮崎県西都市平八重(だいらがはえ)地区は違った。ここは、12戸26人の典型的な過疎の山里であるが、老人たちは実に生き生きと過ごしているのだ。
 この地区で最高齢の90歳と80歳の老夫婦は、晴れたら畑仕事をし、雨が降ったら作業をやめるという自然任せの生活。ゆっくりとした時間の中で過ごす昔ながらの生活には、都会で暮らす同年代のお年寄りたちが抱える介護問題などは無縁の存在のように見える。自分が死ぬまで満足して暮らせるような場所がなくなりつつある中、2人の生活を見ているとこの場所がまさに天国のように思えてくるは一体なぜなのだろうか?
 10月25日(水)深夜26:25〜27:20放送の第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『日々是好日 〜天国にいちばん近い里〜』(制作 テレビ宮崎)は、ここに住む1組のお年寄り夫婦に密着。2人の日々是好日的な生き方を通して、高齢化社会に向けて我々が進むべき道を模索する。

 宮崎県西都市平八重(だいらがはえ)地区。ここに90歳と80歳の老夫婦がいる。黒木好雄さん、アサエさん夫婦だ。2人はこの地区最高齢の夫婦である。
 2人の住む平八重地区は人口26人の過疎化が進んだ地域。高齢化も深刻だが地区の人々の表情はなぜかとても明るい。こうした人々の中で2人は元気に暮らしているのだ。
 朝5時、家族の一員である犬のチビが吠えると黒木さんの1日は始まる。妻のアサエさんは、チビの散歩からはじまり朝ごはんの支度まで大忙し。また、夫の好雄さんも朝食前に、ご先祖様に挨拶するために仏壇に御供え物をあげるという生活が、結婚して62年間、いつも通り続いている。
 好雄さんのモットーは「自分の田んぼは、自分で耕す」ということ。90歳になった今でも生活の糧である米作りを決してやめようとはしない。アサエさんも、そんな好雄さんを手伝い農作業に精を出す。
 しかし、2人にとっても悩みがないわけではない。それはイノシシだ。昨年は田んぼの近くに小屋を建て、夜通し見張りをしていたにもかかわらず、好雄さんが眠っている間にイノシシが田んぼを荒らし、米をすっかり食べてしまったのだという。自ら作ったシシオドシも本人が眠っていたのでは効果なし…。このように都会では考えられないようなシンプルな暮らしが黒木さんの家には残っている。
 一方、黒木好雄さん夫婦のほかにも平八重から離れられないという1人暮らしのおばあちゃんがいる。黒木ヨシ子さん(75)だ。彼女は、毎日自宅前で畑で野菜作りに精を出す一方、暇を見つけては得意のコンニャク作りを楽しんでいる。ヨシ子さんは現在足が不自由だが、畑仕事を続けることが、ここで生きていることの証なのだと考えているのだという。ここで作業をやめれば、街の人たちと変わらなくなってしまう。息子たちからは「街で一緒に住もう」と誘われている。しかしヨシ子さんは、母から教えてもらった平八重で生きるための術を誰に伝えるわけでもなく、1人クワを握り続けているのだ…。

 平八重には、先祖から教えてもらった術が現代に朽ちることなく残されている。例えば、黒木好雄さんの家は昔からの巨大な2本の梁で家の屋根を支える構造が幸いして、建ててから300年以上が経過しているという。先祖が苦労して建てたそんな家を好雄さんは守り続けてきたのだ。好雄さんはこの家を茅葺きからトタン屋根に変えた際には「自らのこぎりをひいて板を作った」と話す。
 八十八夜が近づくと、平八重も茶摘みの季節になる。ここには天然の茶畑が多く存在しており、今でも手作業で茶摘みが行われているのだ。好雄さん夫婦も62年にわたり作業を続けてきた。
 茶摘みをしているとアサエさんが突然、向こうの山を指し「あの山の奥から嫁いできた…」と我々に話しかけてきた。アサエさんは平八重の出身ではなく、18歳の頃に山を越えた湯の久保という地区から嫁いできていたのだ。結婚後は、里に帰ることもなく、両親の死を確認することもないままアサエさんは好雄さんを支え続けてきたのだ。
 そして、そんな2人を陰で支えてきたのが息子の幹男さんだ。彼は車で30分離れた西都市内で暮らしているが、週1回、何かと話題を見つけては黒木さん夫婦に会いにやって来る。今の2人にとっては、とても頼りになる存在だ。
 好雄さん夫婦の生活は自然任せ。雨が降ったら作業をやめ、雨を楽しむ。そしてゆっくりと晩ごはんの準備に取りかかる…。まるで時の流れが止まったかのような不思議な時間を共有することができるのだ。
 平八重の人たちはご先祖様であるお大師様を大切にする。黒木ヨシ子さんも好雄さん夫婦同様やはり1人で300年間建っている家を守り続けている。息子たちの一緒に住もうという誘いを断ってまでも、家を守ることがヨシ子さんにとってご先祖様に対する報いなのだ。
 同じことが黒木さん夫婦にも当てはまる。2人は定期的に墓の掃除に行く。だが、これから先、墓を守ってくれる人がいないと嘆く。2人にはご先祖様を守る最後の子孫なのだという思いが強く、「死ぬまで墓掃除をやめることはない」と話すのだ。
 そんなある日、2人の心配をかき消すような1つの嬉しい知らせが届く。黒木さん夫婦の息子たちが、木の根に押され傾いていたお大師様のほこらを新しく移そうと提案したのだ。現在祭っている場所は昔の街道沿いで、今では人通りもほとんどなくなってしまった。このままでは人に知れることもなく朽ち果ててしまうと心配した息子たちが、新しく舗装された林道沿いにほこらを造ることを提案し、早速作業に取りかかった。
 1週間後、お大師様は無事移され、里では移されたことを祝うお祭りが始まった。ここに支えてくれる人、自然がある限り、2人は平八重で生き続けるのだ…。

 取材を担当した馬原弘樹ディレクター(テレビ宮崎制作部)は「黒木好雄さんの家にある昔ながらの五右衛門風呂、そして300年以上立ち続けている自宅…見るものすべてが驚きでした。庭には柿の木や茶畑など、年間を通じて生活の糧となる野菜、果物がすくすくと育っています。『これが昔の生活か…』と思わせるような光景でした。昔、里山に多くの人が暮らしていた時代。彼らは自然とともに生活し、自然の恵みに感謝していました。その習慣がここには残っていました。現代、文明は急激なスピードで進化を続け、我々には便利な生活がもたらされましたが、その一方で、『いくら便利な世の中になっても、老後になって我々が一生その土地に住みたいと思うか…』という考え方もあります。黒木さん夫妻が住んでいる場所が一番人間にとって天国(ベストな場所)とは思いません。しかし、なぜ、その生活をうらやましいと思うのか?その疑問を解決する旅が今回の取材だったと思います。自分の老後はどうあるべきか?改めて考えさせられました」と取材を終えての感想を話している。

 10月25日(水)深夜26:25〜27:20放送の第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『日々是好日 〜天国にいちばん近い里〜』(制作 テレビ宮崎)にご期待下さい!!


<番組タイトル> 第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『日々是好日 〜天国にいちばん近い里〜』
<放送日時> 10月25日(水)深夜26:25〜27:20
<スタッフ> プロデューサー : 弥勒 猛
構成・演出 : 馬原弘樹
撮影・編集 : 野村英雄
ナレーション : 丸山詠二
<制 作> テレビ宮崎

2000年10月4日発行「パブペパNo.00-325」 フジテレビ広報部