FNSドキュメンタリー大賞
過疎と高齢化が進む信越県境の静かな山村
そこで自然と語り合いながら、つつましく生きる人々…
山村の伝統的なライフスタイルの中にこそ、21世紀を生きるためのヒントが潜む!

第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『豪雪の里に生きる 〜2000年・長野県栄村〜』 (制作 長野放送)

<9月6日(水)深夜26時25分放送>

 信越国境の山々に囲まれた長野県下水内郡栄村(しもみのちぐん・さかえむら)は全国有数の豪雪地帯。積雪が2メートル以上にも達する厳しい気候風土の中で、人々は田畑を耕し伝統文化を育んできた。過疎と高齢化が進んでいるが、人々は自然の豊かなこの村に深い愛着を持つ。
 村の人口は現在3000人足らず。特に豪雪の冬場は就労の場が少ないことから、若者の流出、一家挙げての離農離村が相次ぎ、人口はこの30年間で半減した。工場誘致などの過疎対策にも取り組んだが、時代の大きな流れを食い止めることはできなかった。
 先祖伝来の田畑を守り、農林業を軸にした暮らしをなんとか維持したい──というのが高橋彦芳村長をはじめ村人の願いだ。
 9月6日(水)放送の第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『豪雪の里に生きる 〜2000年・長野県栄村〜』(制作 長野放送)は、そんな山間の静かな村を舞台に、晩秋から今年2000年の春まで村人の暮らしを追い、自然と語り合いながら、つつましく生きる人々の姿を描いた。

 村で数少ない若手の専業農家、阿部伸治さん(36)は、高校卒業後、いったん東京へ働きに出たが、12年前、村に戻り、エノキダケ栽培で生計を立てている。家族は7人。小学生の子供3人は、大自然の中でのびのびと育つ。阿部さんの住む大久保地区では、田植えや稲刈りなど農作業の共同化を進めることによって、農業を守ろうとしている。
 村の高齢化比率は40%。村人5人に2人が65歳以上という“超高齢村”。とかく暗いイメージが先行しがちだが、村には健康なお年寄りの姿が目立つ。70代、80代はまだまだ現役。せっせと仕事をしながら元気に暮らしている。
 村には独り暮らしの老人が119人いる。今年94歳の桑原千代三郎さんもひとり暮らしだ。8人の子供たちは、それぞれ東京などへ出て行った。手先が器用で、机や灰皿などの木工品をこつこつ作り続けている。

 今年4月からの介護保険スタートに合わせて、村の主婦ら70人あまりが3級ホームヘルパーの資格をとった。名付けて“下駄ばきヘルパー”。村独自に編み出した介護システムだ。各集落に大勢のヘルパーがいれば、きめ細かにお年寄りの世話ができる。地域社会の密接なつながりが残っている村ならではのシステムだ。
 古くから伝えられてきたものを次世代に伝えようとする動きも盛んだ。かつてこの地方で盛んだった産業に和紙づくりがある。コウゾを原料とする紙すきの技法を今も受け継ぐのは2人だけになった。そのひとり、広瀬 進さん(62)は、なんとか伝統を残したいという熱い思いで、地元の小学生に和紙の作り方を教える。子供たちがすいた和紙は、卒業証書の用紙として使われた。
 小正月に横倉地区で行われるどんど焼きでは、誰彼かまわず顔に炭を塗りたくる。雪に降り込まれた厳しい冬を楽しく過ごそうという人々の思いがこうしたユーモラスな行事を生んだ。

 制作に当たった長野放送の宮尾哲雄ディレクター「豪雪地の厳しい自然風土に寄り添って人々は何百年も暮らしを立ててきた。多量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される現代産業社会が行き詰まりつつある今、山村の伝統的なライフスタイルの中にこそ、21世紀の新たな時代を生きるためのヒントが潜んでいるように感じました」と話す。
 日本の高度成長期に若者を都会に吸い取られながらも、古くからの村の暮らしや伝統文化を誇りにし、自然とともに生きる人たちの姿と、2000年という時代の節目にあって、山村が直面している現実を見つめる中から、これからの時代に大切なものは何かを問いかける。


<番組タイトル> 第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『豪雪の里に生きる 〜2000年・長野県栄村〜』
<放送日時> 8月16日(水)深夜26:25〜27:20
<スタッフ> ナレーター : 中原果南(女優)
構 成 : 須藤 實
撮 影 : 岩田光至
編 集  : 梨子田 真(ビデオ企画)
音響効果 : 福島雄一郎(プロジェクト80)
ディレクター : 宮尾哲雄(長野放送)
プロデューサー : 小林新一(長野放送)
<制 作> 長野放送

2000年8月16日発行「パブペパNo.00-251」 フジテレビ広報部