FNSドキュメンタリー大賞
秋田と青森の県境にある世界遺産・白神山地との共生を目指す地域の人たちの活動を紹介するドキュメンタリー

第13回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『いつでも帰っておいで 〜ブナとババの唄〜』


<2005年1月4日(火)3時30分〜4時25分>
【2005年1月3日(月)27時30分〜28時25分】



 秋田の最北の町、八森町(はちもりまち)は、海と山がある自然豊かな町。この町に、東京から福祉系大学の教授が、研究のため移り住んできた。この教授は、目や体が不自由な学生を自然体験させる活動を、大学で続けていた。
 そんな教授が、八森の人たちと触れ合う中で、白神山地の周辺の自然を活用し体が不自由な人たちに、自然体験をさせるNPO法人の立ち上げを目指すことになる。
 そして、今年5月。全く目の不自由な女子大生が、八森町を訪れた。この女子大生は、地元のババと呼ばれるおばちゃんと白神山地のふもとの山を歩いた。そして、音やにおい、そして触覚で、豊かな自然を感じていった。さらに、この女子大生のほかに、今年社会人1年生となり、社会の矛盾に悩む卒業生も自然の中で癒されていく。こうした、ふれあいを通して、八森のババは、何を感じるのか…。
 
2005年1月3日(月)放送の第13回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『いつでも帰っておいで 〜ブナとババの唄〜』(秋田テレビ制作)<27時30分〜28時25分>では、秋田と青森の県境にある世界遺産・白神山地との共生を目指す地域の人たちの活動を紹介するドキュメンタリーをお届けする。

(内容)
 秋田県の最北の町、八森町は海と山がある自然豊かな町。そして、自然遺産に指定された、白神山地への入り口の町でもある。
 この小さな町に東京から福祉系の大学の教授、
藤井英一さんがやってきた。藤井さんの専門は、深海魚を中心とした海の生物学だ。藤井さんは海を守るには、海に流れ込む川の水を汚してはならない、そのためにも山の自然を保護しなければならない、と考えていた。藤井さんは、白神山地の魅力に引かれ、去年、八森町を訪れ移り住み、研究を行うことにした。
 藤井さんは、八森町での生活の中で、地元の人たちと交流を図り、白神山地と人との共生を図る活動ができないか、そんな思いを強めていく。そして、自然を守りながら健康な人も体の不自由な人も山に入り、その素晴らしさを体験できる、環境作りを目指すNPO法人設立の提案を行った。
 この提案を、わくわくしながら聞いていた一人の女性がいた。自らを「ババ」と呼ぶ元気なおばちゃん、
松橋ユミ子さんだ。藤井さんの自宅の隣に住む「ババ」は、以前から体の不自由な人たちにも、白神山地の自然の素晴らしさを知ってほしい、そんな思いを持っていた。
 ババや八森町の住人たちは、NPO法人の設立に向け、活動を始めた。そしてある日、この藤井教授の教え子で、目の全く見えない女子大生、佐々木奈央さんがやってきた。
 
佐々木奈央さんは小学校5年生の時、突然、難病にかかり、生死をさまよった。幸い命だけは助かったものの、全く目が見えない状態になった。
 そんな佐々木さんは、藤井先生が話す白神山地に興味を持ち始める。
「白神山地に登ってみたい」
 そんな思いにかられ、秋田にやってきた佐々木さんは、ババや地元の人たちの助けを借りて、世界遺産 白神山地のふもとの山に入り、1時間ほどの散策を楽しんだ。風や雪の重さに耐えながら、400年の歴史を重ねるブナの巨木、そしてこのブナに登ったクマの爪あとを初めて見た。
 そして、白神山地から流れてきたおいしい水も飲んでみた。佐々木さんは、音やにおい、そして触れることで、自然の素晴らしさを感じていった。この佐々木さんを見つめていた「ババ」はその強さに感激する。そして、佐々木さんのような、体の不自由な人に、一人でも多く、この大自然を感じてもらいたいと。目指すNPO法人の重要性、必要性を再認識する。
 そんな「ババ」はもう一人、佐々木さんと一緒に山に入った、藤井先生の教え子、
島田舞子さんのことが気になっていた。
 何か悩みを抱える島田さん。「ババ」は、森の中で、島田さんのそばを離れることなく、励ましつづける。
 島田さんの心の中の痛みも、白神山地の豊かな自然とババの温かな心が癒していった。
島田さんは、この春、念願だった福祉関係の教職の仕事についた。しかし、島田さんの持つ福祉に対する高い理念と、実際の教育現場には大きなギャップがあった。子供たちとどう接していけば良いのか。そんな悩みを抱えた中で、八森町にやってきた。
 千葉県の自宅に帰った島田さんは、八森町での思い出を、一冊の絵本にまとめた。そして、子供たちに伝え、再び強く生きていくことを誓う。
 みんなが帰った後、藤井先生は、白神山地を見渡すことができる標高1086メートルの二つ森山頂を目指した。5時間の苦しい冬山登山をしながら、大自然の素晴らしさに触れた藤井先生は、いつかこの山に、体の不自由な佐々木さんや子供たちを連れて来たい、そんな思いを新たにする。
 藤井先生やババ達は、NPO法人の申請をまもなく行う。そして来年には、大自然を背景に、自然との共生を目指す活動を開始する。


★制作担当者のコメント
   秋田テレビ 報道部記者 辻正憲


 「癒し」がブームとなっていますが、癒しとは大自然の恵みもそうなのでしょうが、それ以上に、人と人との関係も大きな要素なのではないか、そんな思いを持ちながら、取材を続けました。
 「ババ」こと、松橋ユミ子さんがいることで、心が癒されていく。そして、番組に登場する人たち以外に、取材を続ける私たち自身も癒されていく。
 この温かな人と人とのつながりを、少しでも表現できれば。そしてその関係を作ってきた大自然のすばらしさを広く知ってもらえれば、そんな思いで作りました。



<スタッフ>
 撮影 清水 聡
五十嵐誠紀
斎藤賢一
青山貴之
 音声 今野 智
 ナレーション 小倉久寛
 効果MA 加藤彦次郎
山崎茂之
 ライン編集 本間和久
 音楽 アルマンド山平
高久美貴子
ベル・ヴィエントス
 美術 武藤 優
 ディレクター 辻 正憲
 プロデューサー 佐藤 康
堀江浩之
 制作 秋田テレビ

2004年12月27日発行「パブペパNo.04-457」 フジテレビ広報部