FNSドキュメンタリー大賞
山形のある児童養護施設では「肉親からの虐待」を受けて保護されるケースが最近目立ち始めた。
悲惨な事件が続く中、被害者の子と加害者の親に対するケア体制は整っていない。
施設で繰り広げられる子どもたちと職員の日々の生活を通して、「児童虐待」の現状と問題点について探る。


第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『揺れる心を受けとめて〜傷ついた子どもと向き合う先生たち〜』
(制作:さくらんぼテレビジョン放送)


<1月14日(金)2時50分〜3時45分放送>
【1月13日(木)26時50分〜27時45分放送】



 さくらんぼテレビジョン制作、第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品『揺れる心を受けとめて〜傷ついた子どもと向き合う先生たち〜』<2005年1月14日(金)2時50分〜3時45分【2005年1月13日(木)26時50分〜27時45分】放送>では、山形のある児童養護施設で、傷ついた子どもたちと必死に向き合おうとする18人の施設職員や心理療法士たちの日々の生活を通して、「児童虐待」の現状と問題点について探る。

<あらすじ>
 主に、親が我が子に暴力などを振るう「児童虐待」。この言葉が珍しくないほど、最近全国的に児童虐待事件が多発している。この現状は山形県内でも例外ではなかった。平成15年、当時5才だった男の子を山形県村山市の山中に遺棄した事件や、山形市で同居女性の子どもが暴力を振るわれ意識不明に追い込まれる事件が発生した。この2つの事件は山形県内を大きく震撼(しんかん)させた。
 SAYでは、毎週月曜日から金曜日の夕方に放送している『SAYスーパーニュース』で「児童虐待」をテーマに特集を10回放送し、傷ついた子どもの心を大人がどのように関わって癒やしていくかをクローズアップしてきた。このドキュメンタリーは、その取材対象だった山形市の児童養護施設「山形学園」で繰り広げられる日々の生活を追ったものだ。自身も「父親」の立場である
杉卓弥SAYアナウンサーが「児童虐待」の現状と問題点を探った。


<制作者の思い:さくらんぼテレビディレクター 杉卓弥>
 私自身、平成14年12月に「父」という立場になって以来、児童虐待事件の見方が変わった。親にとって子育ては何者にも替え難い喜びであるが悩みも大きい。虐待する親の気持ちを微塵(みじん)も感じないとは言わないが、子どもへの暴力が許される道理はない。しかし児童虐待事件へと発展するまでにはさまざまな背景が存在するのも事実である。その根底にあるきっかけを探ろうと、『SAYスーパーニュース』の特集のシリーズ企画として「児童虐待」をテーマに放送した。その取材対象のひとつだったのが、山形市にある児童養護施設「山形学園」だった。
 「山形学園」は、山形市の郊外、蔵王連峰を抱く自然豊かなところに位置している。平成16年4月現在で、31人の子どもが18人の職員とともに生活をしている。学園といっても勉強する学校ではなく、さまざまな事情により家庭で生活できなくなった子どもが職員と共に共同生活する場である。以前は、戦災孤児や経済的な理由により入所する子どもがほとんどを占めていたが、最近では虐待を受けた子どもが入所するケースが多いという。山形県内には児童養護施設は5つあるが、そこで生活している半数は、児童相談所に「虐待」と認定されて入所した傷ついた子どもたちである。
 児童虐待事件が発生するたびにクローズアップされるのは、虐待を犯した親自身の生い立ちや法制度の不備、さらには児童相談所の対応ばかりである。表に出ない表情…虐待を受けた子どもの将来、虐待を犯した親への対応やフォローはどうなっているのだろうか。私は映像媒体では伝えられることが少なかったその部分を今回のドキュメンタリー番組で掘り下げることにした。
 偏見を持っていたわけではないが、学園に足を踏み入れてみると子どもたちの生き生きとした表情が次々と飛び込んできたのには驚いた。学園の中は、見渡す限り子どもたちの笑顔で溢れていた。「お兄ちゃん、一緒にあそぼ!」と話しかけてくる子どもたちからは虐待の陰は見当たらない。しかし、次に子どもたちから聞こえる言葉は「ねえ、だっこ」「おんぶして」「僕、肩車!」。小学校高学年からもそんな言葉が聞かれたのには驚いた。学園の園長は、「親からの愛情を十分に受けていない表われ」と話している。
 これまで児童養護施設では、心理的なケアを行なっていなかった。最近、虐待による心のケアの必要性が叫ばれている。虐待被害者全てがそうなるわけではないが、「うつ状態」などの精神疾患を患うこともあるということだ。そのようにならないためにも、早期の専門家による介入が必要になるのだ。山形学園では、早くから心理職員の導入を進めていて、生活面・精神面の両方をケアしている。
 一方、児童虐待のもうひとつの対局、虐待加害者、すなわち親などに対するケアは進んでいない。全国を見ても、加害者ケアは東京都をはじめとする大都市でしか行なわれていない。加害者のケアも進めていかなければ、再び虐待に及んでしまう親などが増えてしまう。今回取材を通して、虐待をしてしまった母親から手紙をいただいた。「申し訳ない」「反省している」「振り返ることはできない」…数々の反省がつづられていた。
 今回の作品はプライバシー保護の観点から、子どもたちの表情にモザイク処理、子どもの名前を仮名としている。子どもたちの表情をお見せすることは出来ないが、そのしぐさと声から子どもがひそかに発している心のサインを感じ取っていただければと思う。




<番組タイトル> 第13回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『揺れる心を受けとめて〜傷ついた子どもと向き合う先生たち〜』
<プロデューサー> 冨澤弘行
<ディレクター> 杉 卓弥
<構成> 高橋 修
<ナレーション> 杉 卓弥
<撮影> 大友信之
<編集> 和田幸一
<制作著作> さくらんぼテレビジョン

2004年12月21日発行「パブペパNo.04-446」 フジテレビ広報部