FNSドキュメンタリー大賞
日本人の「古里」はどこへ行こうとしているのか…。

第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『耕せど古里は 棚田に迫る危機』
(制作:岡山放送)


<10月15日(金) 2:40〜3:35>
【10月14日(木) 26:40〜27:35放送】


日本の原風景と讃えられている「棚田」。
番組では1年を通じて、懸命に米作りを続ける人々の姿を追いながら、
棚田の持つ価値と米作りをする人々の美しさを見つめます。



「日本の原風景・棚田」
 その価値は、米作りという生産の場としてだけはなく、景観や国土の保全機能として役割も認められています。平成11年、国はこの棚田に対して「棚田百選」を設けて称讃しました。しかし今、国は市場競争原理を取り入れた政策の大転換を図ろうとしています。

 岡山放送制作、第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品『耕せど古里は 棚田に迫る危機』<10月14日(木)深夜26時40分〜27時35分放送>では、1年を通じて懸命に米作りを続ける人々の姿を追いながら、棚田の持つ価値と米作りをする人々の美しさを見つめます。そして、米政策の大転換期を迎える中、日本人の古里はどこへ行こうとしているのか考えます。


《企画意図》
 日本の原風景とたたえられている「棚田」。
しかし、生産の場としての棚田は、急斜面での労働効率の悪さ、生産性が低いことが際立ちます。小さい複数の田んぼをひとまとめにする「ほ場整備」を進め生産性の向上を図ってはいますがそれも限界があり、その上、畦が高くなり景観を損ねてしまいます。

 私たちが守っていかなければいけない原風景である棚田は、生産性で考えれば、いわばハンディキャップを背負った地域。生産者米価の下落傾向が続く中、棚田の米作りをしようという農業後継者はいません
 こうした中、国は平成16年度、「米政策改革」をスタートさせました。この新政策は「売れる米作り」を掲げて消費者重視、市場競争原理を取り入れた大転換です。全国一斉に始まる競争の波に、棚田のある中山間地域もさらされますが、年老いた棚田農家はついて行けるでしょうか

 また、これまで5年間続けてきた棚田農家への支援策、中山間地域直接支払い制度も見直しの時期を迎えました。わずかな支援も廃止が囁かれ、棚田保全の道は険しさを増すばかりです。競争の原理、生産性の追求が進むと一体何が起きるのでしょうか。

 番組では1年を通じて懸命に米作りを続ける人々の姿を追いながら、棚田の持つ価値と米作りをする人々の美しさを見つめます。そして米政策の大転換期を迎える中、日本人の古里がどこへ行こうとしているのか考えます。

《取材内容》
 土居太久志さんは77歳。妻の篤明さんと米作りをしていますが、息子も娘も町外に出ており、農業後継者はいません。太久志さんは高齢に加え肺を患いながらも、先祖から受け継いだ棚田を懸命に守ろうとしています。
 太久志さんが暮らす岡山県中央町大垪和西は平成11年に「棚田百選」に選ばれました。高齢化が進み、2人に1人が高齢者です。
 佐藤用子さんは91歳の姑・智枝子さんと2人暮らし、息子たちはやはり町外で生活しています。春の田植え、秋の稲刈り、農繁期は町外に暮らす息子たちが帰ってきて農作業を手伝い、にぎわいを取り戻します。
 地域で唯一の3代目の農業後継者がいる宮尾家。しかし、米作りでは無く生計を立てているのは葉タバコ栽培

棚田百選にまで選ばれた地域の現状…

 生産性を高めるために太久志さんの田んぼも「ほ場整備」をしています。広げた田んぼに農業機械を入れることが出来る為、幾分便利にはなったとはいえ、畦は高くなりました。この為、夏の畦草刈り、肥料散布は高齢で病気を抱える太久志さんにとって以前にも増してきつい作業になってしまいました。
 収穫を目前にした時、その太久志さんに異変が起きました。脳梗塞で右手が麻痺してしまったのです。懸命にリハビリをしながら稲刈りの準備を進める太久志さんの姿がありました。何とか収穫を終えた太久志さんは「もう1年、来年もがんばる」と、米作りを続ける決意を固めます。

 国は米政策の大転換となる新政策を進めていました。市場競争原理が取り入れられますが、生産効率の悪い棚田は競争に不利です。さらに中山間地域に対する交付金制度の廃止もささやかれています。
 4月…今年も太久志さんは今まで通り田植えの準備を進めていました。先祖から受け継いだ棚田を今も守り続けているのです

《制作者の思い:岡山放送ディレクター 田中 誠》
 日本の原風景「棚田」の美しい風景とそこで働く人々の営みを映像化したいと常々思っていました。日本人の原点を見つめることができると思ったからです。
 去年4月、ロケハンをしていたところ偶然出会ったのが土居太久志さんと篤明さん夫婦でした。せっせと田んぼを耕す夫婦の姿はとても印象的で、田植えの取材協力をお願いして帰りました。その時は太久志さんの病にさえ気付いていませんでした。そして、取材を進めるうちに、高齢化、担い手不足、国の政策の大転換と、棚田に迫る危機を知ることになり、ドキュメンタリーとしての番組づくりを具体化させることになったのです。
 保全すべき価値ある棚田とそれを取り巻く厳しい農政の現実を知った上で、米作りを続ける太久志さんたちの姿を見てください。


<番組タイトル> 第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『耕せど古里は 棚田に迫る危機』
<放送日時> <10月15日(金) 午前2:40〜3:35>
【10月14日(木) 深夜26時40分〜27時35分】
<プロデューサー> 三村公人
<ディレクター> 田中 誠
<構成> 高橋 修
<ナレーション> 北浜晴子
<撮影> 鴨井 勝
<編集> 小松原健司
<制作著作> 岡山放送

2004年10月7日発行「パブペパNo.04-316」 フジテレビ広報部