FNSドキュメンタリー大賞
沖縄の女性二人が展示されていた、大阪の「人類館事件」を題材にした演劇「人類館」が、関西沖縄文庫の金城馨さんの尽力により、事件から一世紀を機に復活!

関西沖縄文庫の金城馨さん、そして、「人類館」の作者・知念正真さん。番組では二人の軌跡と「人類館」事件を追うことで、沖縄の近現代史をたどっていく。

第13回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『よみがえる人類館』
沖縄テレビ制作


<8月4日(水)3時13分〜4時08分放送>
【8月3日(火)27時13分〜28時08分】



 1903年、大阪市で内国勧業博覧会という名の展覧会が開催されていた。その場外で営業していたパビリオン「学術人類館」には、台湾先住民、ジャワ人、アイヌ民族のほかに、沖縄の女性二人も展示されていた。生身の人間を展示した「人類館事件」は、大阪そして遠く離れた沖縄で波紋を広げることになる。
 一世紀が経過し、人々の記憶から人類館事件はすっかり忘れ去られたかのように見えたが、関西の沖縄人(ウチナーンチュ)が事件に光を当てることで、新たな一面が分ってきた。8月4日(水)放送の第13回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品「よみがえる人類館」(沖縄テレビ制作)<3時13分〜4時08分>では、「人類館事件」を追いかけることで、歴史の闇からよみがえってきたのは一体なんだったのかを考える。

【あらすじ】
 人類館事件を題材にした劇がある。沖縄のアマチュア劇団「演劇集団創造」による演劇「人類館」は1978年に沖縄の新劇としては初めて、岸田戯曲賞を受賞した。しかし、80年代後半以降、上演されていない。作者の知念正真さんは当初、沖縄近現代史を扱ったテーマが今の時代に合わないと考えていた。しかし、大阪にある関西沖縄文庫に集まる沖縄人の熱意に押され、再演を決意した。
 大阪市大正区は住民七万五千人のうちおよそ4分の1が沖縄から移り住んできた人や2世、3世といわれている。大正区で関西沖縄文庫を主宰している金城馨さん。金城さんをはじめとする関西沖縄文庫のメンバーは大阪で起きた「人類館事件」を2年程前から調べていた。大阪公演が行われた2003年は、「人類館事件」からちょうど百年の節目の年に当たった。沖縄のメディアが全く事件に見向きもしなかった中で、「実現させる会」は「学術人類館」のあった場所のフィールドワークや、シンポジウムを行うなど精力的に取り組んできていた。
 一方、演劇「人類館」の大阪公演の成功と、関西沖縄文庫の取り組みに触発されるように、番組スタッフも「人類館事件」の全容を探ろうと調査を始める。
 関西沖縄文庫の金城馨さん、そして、「人類館」の作者・知念正真さん。番組では二人の軌跡と「人類館」事件を追うことで、沖縄の近現代史をたどっていく。そこから浮かび上がったのものとは…

【制作者の思い】
 5月15日は32年前に沖縄が本土に復帰した日。地元新聞社のアンケートでは「復帰して良かった」と答える人は8割以上にのぼる。しかし広大な米軍基地は復帰後も居座り続け、全国の75%が集中する。失業率は全国平均の2倍、なお問題は残されたままだ。ディレクターの宮城歓は復帰の前年1971年生まれ、最後の「復帰前世代」。
 「人類館事件」を追いかけることで沖縄の近現代史をひもとき、あらためて復帰の意味を問い直したいと考えた。

【取材のきっかけ】
 取材のきっかけは演劇「人類館」との出会いだったと取材した宮城歓は振り返る。「数年ほど前、調べ物をしていた図書館で偶然手にとった沖縄文学全集、その中に納められていた戯曲『人類館』は、あまりにも衝撃的な内容だった。沖縄に対する差別を描きながらも、自らの矛盾も笑い飛ばしていく。そして最後のどんでん返し。沖縄にもこんな演劇があったのだという驚き、そして作者の知念正真さんがなぜこのような作品を生み出したのかを知りたいという欲求。人間が人間を見世物にするという『人類館事件』そのものよりも、演劇『人類館』への興味のほうが先だった。
 いつかは芝居を見てみたいと思っていた去年暮れ、『人類館』が大阪で再演されるとの噂を聞きつけた。これを逃したら一生後悔すると、上司を口説き落とし、大阪取材が実現した。こうして『よみがえる人類館』の取材はスタートした。」




【番組スタッフ】
 ナレーション 中安章雄
阿佐慶涼子
 撮影・編集 真壁 進(沖縄テレビ放送)
 取材・構成 宮城 歓(沖縄テレビ放送)
 プロデューサー 山川文樹(沖縄テレビ放送)

2004年06月28日発行「パブペパNo.04-171」 フジテレビ広報部