FNSドキュメンタリー大賞
静かな田園地帯に突如押し寄せた国際化という時代のうねり。
中古車輸出日本一という富山の国際化を見つめ直す!

第12回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『摩擦〜中古車輸出日本一の街で』 (富山テレビ)

<9月26日(金)3時30分〜4時25分放送>
 北洋材の輸入量日本一を誇る伏木富山港は、ロシア向けの中古車輸出日本一というもう一つの顔も持っている。ロシア人相手に中古車販売を営むのはほとんどがパキスタン人。国道8号線沿いには150ほどの店が並ぶ。その光景はここが日本かと見間違うほどだ。静かな田園地帯に突如押し寄せた国際化という時代のうねり、ロシア人とパキスタン人、そして地元住民との“摩擦”。

 9月26日(金)3時30分〜4時25分放送の第12回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品「摩擦〜中古車輸出日本一の街で」(富山テレビ)では、これまで国際問題は無縁と遠ざけてきた地方の国際化について見つめ直す。


<あらすじ>
 富山県を東西に走る国道8号線。10年ほど前から、道路沿いを自転車で移動するロシア人が見かけられた。富山は、北洋材の輸入量日本一。北洋材を運んできたロシア船の船員が、中古車を探しているのだった。

 2001年5月。イスラム教の聖典コーランを破られたとして、在日パキスタン人のイスラム教徒が、犯人逮捕と厳正な処罰を求めるデモを富山県警察本部前で起こした。集まった300人のすべては、パキスタン人中古車業者のイスラム教徒。彼らの人数の多さと、怒りの激しさ、そして日本語をすらすら話すことに関係者は驚きを隠せなかった。

 国道8号線周辺では、150以上の中古車販売店が軒を連ねている。パキスタン人が120店、日本人が経営するのは30店、ただ、そのほとんどは商売が成り立っていないという。中古車ビジネスの勢力図は、パキスタン人が日本人を圧倒していた。パキスタン人によると、日本で廃車になった日本車の輸出に初めて目をつけたのはパキスタン人とのこと。20数年前、1人のパキスタン人が、関東に住み着き、中近東に廃車同然の中古車を輸出したのが始まりだった。

 そして、富山でロシア向けの中古車輸出が始まった14年前、早速1人のパキスタン人が富山に移住して商売の基盤を固め、同胞を呼んだという。車の売買は、すべてドルの現金。中古車販売店の事務所に入ると、分厚い100ドルの札束が、無造作に置かれている。事務所の中は、まるで、外国だ。彼らが見ているテレビ番組は、パキスタンの衛星放送。店を訪れるのは、客のロシア人と同胞のパキスタン人がほとんど。店内は、「ウルドゥー語(パキスタン語)」と「ロシア語」のみが使われている。中古車業者は、店に置いてある中古車や中古車の部品(ヘッドライト、カーステレオなど)が盗まれる被害に悩んでいる…。

 また、中古車業者は、ロシア船に積まれた車の中に自分の店で盗まれた中古車を見つけて抗議しても、税関は取り合ってくれないと税関への不信感もあらわにしていた。

 住民のパキスタン人への印象は良くなかった。付近住民のほとんどは、中古車販売店周辺で稲作や畑作を行っている。農作業のために、地元住民が土地を出し合って作った農道に、パキスタン人は売り物の中古車を止めるため、トラクターなどが通れなくなり農民は大きな迷惑を被っていた。しかも、車の所有者が誰か分らない。もし所有者が分って注意しても、数日後には、また同じ状態に戻ってしまう。水田の横にある中古車販売店では、エンジンオイルが漏れている車や、バッテリーが数多く放置されているのも心配の種だ。住民たちは、どこにもぶつけようがない不安と怒りを抱きつづけて…。

 去年、ロシアの中古車輸入関税が上がるといううわさが流れ、駆け込みで中古車の輸出台数が飛躍的に伸びた。今まで、目立たなかった中古車や部品盗難の件数も増加した。

 7月、中古車業者にとって、決定的なチャンスがやってきた。中古車業者が、ロシア船から盗難車を見つけたのである。船員がこれを認めたため、車を下ろすことになった。
中古車業者が何度となく訴えてきたことが、ようやく実を結んだのである。

 税関と警察の捜査の結果、盗難車7台を含む33台の未通関車が積まれていたことが分った。今まで、何度となく、ささやかれてきた密輸出のうわさが、初めて、現実であることが明らかになった瞬間だった…。

<制作者コメント:プロデューサー 中西 修>
 旧ソ連の経済開放政策、いわゆるペレストロイカをきっかけに、ロシア船員によって廃車同然の日本車がロシアへ渡ったのは14年前、その後、富山県内の国道8号線沿いにロシア語の看板を掲げた中古車販売店が雨後のタケノコのように並んだ。経営者のほとんどはパキスタン人。そして、コーラン事件が起きた。その後、外国人と地域住民との摩擦、交通事故、強盗・傷害などの犯罪が相次ぐ。一方、全国規模で問題になっている盗難車の密輸出。富山が密輸出の基点になっているのでは…。その実態を探るため、取材はロシアに及んだ。
 地方の国際化が進み、富山からも毎日のように国際線旅客機が飛ぶ。しかし、地域住民の心はなにも変わっていない。外国人に対応する行政の動きも鈍い。この番組を通して「地方の真の国際化」とはなにかを問いたい。

<プロデューサー> 中西 修(富山テレビ報道グループ)
<ディレクター> 村上恵一(富山テレビ報道グループ)
<カメラ> 小島崇義
大江穣介
<ナレーター> 中江真司
<音響効果> 谷川正孝(プロジェクト80)
<MA> 蛯原浩彦(共同テレビジョン)
<美術> 川井陽子
<制作> 富山テレビ

2003年9月22日発行「パブペパNo.03-274」 フジテレビ広報部