2016.10.26

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『もし、あなたの家族が…
 ~日本の移植医療に未来はあるのか~』

(制作:テレビ新広島)

わが子を救いたい…日本の移植医療の高い壁

<11月2日(水)26時50分~27時45分>


 もし、あなたの家族が臓器移植でしか助からない病気になったら…。2010年、改正臓器移植法が施行され、日本でも子どもからの臓器提供が可能になった。しかし、その数は伸び悩み、特に6歳未満の小児からの提供は6例にとどまっている。国内での臓器移植は困難、これが日本の現実だ。臓器移植を必要とする子どもの家族の切実な思い。日本から多くの患者が手術のために渡るアメリカの移植医療の実態を通し、日本の課題を考える。

「娘の命を、助けてください」。4年前、広島県廿日市(はつかいち)市に住む夫婦が悲痛な声をあげた。娘の菊地咲帆(きくち・さほ)ちゃん(当時2歳)が、50万人に一人の割合で発症するという“拘束型心筋症”という重い心臓病を患った。アメリカで心臓移植手術を受けるしか助かる道はないと医師から告げられたのだ。「何としてもわが子を救いたい」。移植手術に必要な費用は1億4400万円。両親は必死の思いで募金活動を始め、街行く人々に協力を呼びかけた。
 2010年7月に改正臓器移植法が施行され、家族の同意があれば脳死下での臓器提供が可能になり、さらに15歳未満の子どもからも臓器提供ができるようになった。しかし、提供数は伸び悩み、改正法施行後の6年間で15歳未満の子どもからのケースは12例。6歳未満にいたっては、わずか6例(2016年6月7日現在)に留まっていて、必要な数には遠く及ばない。移植でしか助からない子どもたちを、救うことができないという現実。
 それに先立ち2008年、国際移植学会は「自国の子は自国で救うべき」と呼びかけ、多くの国々は海外からの移植患者の受け入れを中止した。現在でも、海外からの移植患者を受け入れているアメリカでは、去年1年間で10歳未満の脳死下での臓器提供数は520例。臓器移植に関する人々の理解と社会的なシステムが、アメリカでの命のリレーを可能にしている。

 鹿児島県霧島市。ここにもアメリカでの移植手術を目指す親子がいた。重い心臓病を患う、水流添日向(つるぞえ・ひなた)くん(当時6歳)と母親の二三代(ふみよ)さん。「息子が心臓移植でしか助からないと言われたんです」。涙を流す二三代さんと、かたわらでニコニコ笑う日向くん。必要な費用は、1億4500万円。膨大な金額が、4人の兄弟を育てるシングルマザーの二三代さんに重くのしかかった。末っ子の日向くんを救うため、家族は苦難の道を歩むことになる。
 一方、“臓器移植”に違う形で向き合う人もいた。広島県内でただひとりの移植コーディネーター、山本京子さん。人が脳死状態になる場合、そのほとんどは突然のことだ。家族は、戸惑い、うろたえる。その家族に寄り添い、移植を無理に勧めるのではなく、あくまで中立の立場で、家族に後悔のない決断をしてもらうのがコーディネーターの役割だ。普段から家族のあいだで臓器提供について話し合うことが大事だと訴える山本さん。その背景には、山本さん自身の重い経験があった。地道に移植医療に関する啓発活動を続ける山本さんだが、人々の理解が進まないことに限界を感じ始めていた…。
 鹿児島の日向くんは、渡米から9カ月後、無事手術が成功し帰国。家族にやっと平穏な毎日が戻ってきた。そんな中、母親の二三代さんは日向くんに心臓を提供したドナーについて思いをはせる日々が続いた。ドナーが現れたということ、それはどこかで日向くんと同じくらいの年齢の子どもが命を失ったということなのだ。日向くんのドナー家族は、日本から約6500キロ離れたアメリカ・アラスカ州にいた。家族は「日本人の移植医療に対する理解が進むのなら」と、今の気持ちを語り始めた。
「命」という重いテーマに向き合ったそれぞれの家族。移植を受ける子どもたちの家族と、臓器を提供するドナー家族の複雑な思い。アメリカの移植医療の現状を通して、日本の移植医療の未来を見つめ直す。

ディレクター・三上絵里(テレビ新広島報道部)コメント

「4年前、私たちはある女の子に出会いました。心臓移植手術を受けなければ助からないと医師から宣告された菊地咲帆ちゃんです。国内で15歳未満の子どもからの臓器移植が可能になって6年が経ちますが、その提供数はまだまだ少なく、移植手術のために海外へ渡らなければならない子どもは今も後を絶ちません。取材を続けるなかで、移植医療に対する一般の人々の関心の低さを強く感じました。しかし、いつ、誰が臓器を提供する側、される側の立場になるかは分かりません。突然そういった状況になった時に、正しい知識があれば家族にとって後悔のない選択につながるのではないでしょうか。この番組が、まだ多くの人にとって身近ではない移植医療について家族で話し合うきっかけになればと思います」


番組概要

◆番組タイトル

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『もし、あなたの家族が…
 ~日本の移植医療に未来はあるのか~』
(制作:テレビ新広島)

◆放送日時

11月2日(水)26時50分~27時45分

◆スタッフ

プロデューサー
大藤潔
ディレクター
三上絵里
構成
上海五郎
ナレーター
工藤夕貴
撮影
中渡瀬太一
編集
山本龍

2016年10月26日発行「パブペパNo.16-433」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。