2016.10.7

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『働きたい-障がい者雇用の壁-』
(制作:新潟総合テレビ)

働きたくても働けない 障がい者の声を聞け

<10月18日(火)26時55分~27時50分>


 もし障がいがあったら…。それだけで就職が厳しい現状がある。新潟県の障害者雇用率は全国平均を下回り、過去には全国46位の年もあった。障がいのある二人の男性と就業を支援する女性との就職活動に密着。そこには、働きたくても働けないもどかしさと将来を心配する家族の姿があった。一方で企業側はなぜ障がい者を雇用しないのか…。障がい者雇用を広めるためには何が必要なのかその壁に迫った。

 もし右肩が上がらなかったら…、もし交通事故にあって障がいが残ったら…、そして、もし自分の子どもに、自分の家族に障がいがあったら…。
私の従兄弟には全介護を必要とする重い障がいがある。小さい頃からそれが普通だったので、深く考えたことはなかった。しかし、ある日突然祖母に「親が死んだら従兄弟をお願いね」と声をかけられた。そのとき初めて、従兄弟の将来はどうなるのか真剣に考えた。恐らく彼は働くことはできない。それでも障がいのある人の中には働けるのに働けない人がいるのではないか。環境が整えば自立できるのに、環境がないことによって自立できない人たちがいるのではないか。そういった人の親や家族はどう思っているのだろう。それがこの障がい者雇用をテーマにしようと思ったきっかけだった。
新潟県の障害者雇用率「1.85%」。これは全国平均には届かない数字だ。2010年から5年間の雇用率も全国平均を下回り、全国46位の年もあった。一方で、今年4月には障害者雇用促進法が改正され、2年後には精神障がい者が障害者雇用率に算定される。企業側は障がい者を積極的に雇用しなければいけない社会が来ているのだ。しかし、新潟県にのみならず全国の障害者雇用率の平均は法定雇用率に満たしていない。一体なぜ障がい者雇用は進まないのか…。

 先天的に身体障がいのある星島健太さん(25)は就労移行の支援を受けながら就職を目指す。しかし、支援を受けることができるのはわずか2年。期限が迫るなかでも、自分の見つけたい仕事が見つからず、働く理由も見つけられなかった。そんななか、星島さんの就業を支援する就業支援員の樋口督水さん(37)は厳しい言葉を突きつけた。「本当に働きたいのか?」この言葉で心を動かされた星島さんは徐々に働きたいという思いに変化が出る。仕事へのイメージが持てないことでの不安や心配な思いが先立ち、なかなか一歩を踏み出せなかったが、支援員と家族が背中を押し、一歩を踏み出そうとする。そこには障がい者側にも踏み出さなければならない一歩、変わらなければいけない一面があった。と同時に、一つのきっかけで大きく成長する姿があった。

 15歳の時に交通事故に遭い重度の身体障がい者となった千原哲也さん(44)。企業で働くことが困難な人の通う福祉施設で作業訓練をしている。健常者から障がい者に変わった人生。母親は「息子を残しては死ねない」と話す。グループホームに暮らすなど自立に向けて歩んでいるものの、障がいがあることでの家族の不安は尽きない。そんななか、千原さんは「社会に出て少しでも障がいのことについて理解してもらいたい」と樋口さんに思いを伝える。千原さんが働ける企業はどこか…。全国では障がい者に配慮した特例子会社が数多くある。山梨県には重度の知的障がいのある人たちが働く特例子会社があり、どのようにして障がいの特性を生かしているのかを示していた。しかし、新潟市には全国の政令指定都市では唯一特例子会社の本社がない。千原さんのような重度の身体障がい者の働ける環境が少ないのだ。そうした環境の中でも就職活動を始めた千原さんと樋口さん。どんな仕事ができるのか、企業の実習を受けた千原さんだったが、そこで見えたのは厳しい現実だった。

法律により障がい者の雇用が義務づけられている企業。雇用しなければならない思いとは裏腹に、障がい者が働ける職種がない、などの意見も聞かれた。一方で雇用している企業からは障がい者雇用をやって良かったとの言葉が多く上がる。取材した20人を超える働いている障がい者はみな働ける喜び、幸せをかみしめて働いていた。より多くの障がい者が健常者とともに当たり前のように働ける社会の実現には何が必要なのだろうか。

ディレクター・若井俊吾(新潟総合テレビ報道制作部)コメント

「“親がいなくなったら従兄弟をお願いね”。祖母に言われたひと言がこの番組を作るきっかけになりました。働きたい意欲があるのに働ける環境がない。それによって家族が抱く将来に対する不安というのは計り知れません。また、取材を進める中で障がいのある人への偏見の根深さなども同時に感じました。この番組ではモザイクを一切かけていません。テレビに出たくないという方はおられました。家族が出したくないという方もおられました。それでも、勇気を出して取材に答えていただいた方はたくさんおられました。それはこの現状を何とかしてほしいという彼らの強いメッセージなんだと思います。
障がいのある人お一人お一人に個性があります。この番組を通して障がいのある人への見方、接し方が変わり、一人でも多くの障がいのある人が働けたらと思います。そして、より多くの障がいのある人が自立でき、家族が安心できるような社会になればと思います」


番組概要

◆番組タイトル

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『働きたい-障がい者雇用の壁-』
(制作:新潟総合テレビ)

◆放送日時

10月18日(火)26時55分~27時50分

◆スタッフ

プロデューサー
鷲津史彦
ディレクター
若井俊吾
撮影
韮澤由起夫 他

2016年10月7日発行「パブペパNo.16-408」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。