2015.11.16

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『まちかんてぃ~明美ばあちゃん 涙と笑いの学園奮闘記~』
(制作:沖縄テレビ)

平均年齢76歳のオジィちゃん・オバァちゃんが通う夜間中学。
なぜ、彼らは学校へ通えなかったのか…。
そこには、あの戦争が暗い影を落としていた。

<11月25日(水)27時~27時55分>


 沖縄には、オジィちゃん・オバァちゃんが通う夜間中学がある。平均年齢76歳。70年待ち続けた学校へ通う夢をかなえた人々の学園生活は涙と笑いにあふれている。みんな、ずっと「まちかんてぃ(待ち続けていた)」学校の物語。なぜ、彼らは子どもの頃、学校へ通えなかったのか…。そこには、あの戦争が暗い影を落としていた。

「ありったけの地獄を集めた」とたとえられるほど、激しい地上戦が繰り広げられた沖縄。幼き子ども達の目に戦場はどう映り、その後の人生にどんな影響を与えたのか…。戦後70年の今年、その一端を知ることができる本が出版されると聞いて、取材に向かった。向かった先は、2004年に開校した那覇市にある民間運営の「珊瑚舎スコーレ夜間中学」。出版される予定の本には、学びたくても学べなかった約120人あまりの生徒たちの半生を10年にわたって聞き取りした内容がつづられるという。

 本のタイトルは「待ち続けていたよ」を意味する「まちかんてぃ」。開校時に「60年間、通える学校ができるのを待っていた!」と喜びを語った女性の言葉だという。
 夜間中学に通うまで字の読み書きや計算が出来なかった人が多くいる。学校に通えなかったことで受けた心の傷の深さは計り知れない。さらに、読み書きがままならなかった彼らは給料の良い仕事には就けず、今なお、経済的に苦しい生活を強いられている現状もある。今回出版される本につづられる、こうした一人ひとりの物語から戦争が生み出したものを見つめなおすことができるはずだと思い取材を始めた。

 当初、「戦争に子どもを奪われた人達の今」というテーマで取材を始めたが、実際に夜間中学に通ってみると、そこには明るく、たくましく生きてきた沖縄のオジィちゃん・オバァちゃんたちとの出会いがあった。平均年齢76歳のお年寄りたちが目をキラキラ輝かせて授業を受けているのだ。

 月曜から金曜の午後6時から9時まで、主要5教科に加え、体育に音楽、美術の授業まであって、そこはまさに中学校。生徒たちは、“学ぶ”ことを心から楽しんでいる。中でも嘉手苅明美さん(81)は、11歳で戦場を逃げ惑って重傷を負い、おぶっていた弟を亡くすという壮絶な戦争体験をしたにもかかわらず、戦後も前だけを向いて生きてきた。70年待ち続けた学校へ通う夢をかなえた、その笑顔は好奇心にあふれていた。嘉手苅さんは言う「学ぶことは宝物を詰め込むこと!」と。81歳になる今も午前中は清掃の仕事を続け、障がいがある妹の介助をして、夜は学校に通ってくるのだ。

 こうした人々の学びを支えるのが、珊瑚舎スコーレの星野人史校長だ。2001年に若者のためのフリースクールを沖縄に開校した彼が知ったのは、沖縄には公立の夜間中学がなく、戦争の混乱で学校へ通えなかった人々が学ぶ場がないということ。手遅れになる前にと、2004年に全国でも珍しい民間の夜間中学を開設した。しかし、その資金はほとんどが「自腹」。ようやく始まった行政の支援もあと1年で打ち切られる事になる…。自己資金を切り崩してまで学校運営にかける星野校長の情熱に支えられ、お年寄りたちは夜間中学で青春を取り戻す。

 学校がある、クラスメートがいる、勉強ができる。70年待ち続け、夢をかなえたオジィちゃん・オバァちゃんたちの学園生活は笑いと涙にあふれている。戦後70年―、その姿から、私達は平和のありがたさ、学べることの尊さに気づかされる。

ディレクター・平良いずみ(沖縄テレビ報道部)コメント

「あの戦争に子ども時代を奪われた人々がどう生きてきたのかを知りたくて取材を始めました。舞台は、平均年齢76歳のお年寄りたちが通う夜間中学。肩肘張って取材に向かった私を迎えてくれたのは、目を輝かせて学ぶ生徒たち。その姿にすっかり魅せられ、気づけば今日はどんな授業だろうとワクワクしながら取材に通っていました。70年待ち続けた学校に通う夢をかなえたお年寄りたちの口から語られるのは“学校が楽しくて仕方ない”、“教室が大好き”という純真な思い。その“学べる喜び”を見ている人にも一緒に体感してほしいと思い、授業のシーンを幾つもいくつも重ねました。そしてでき上がったのが涙と笑いの学園奮闘記です。視聴者の皆さんに一緒に泣いて笑って、そして戦争の残す傷の深さに思いをはせていただけたらと願っています」


番組概要

◆番組タイトル

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『まちかんてぃ~明美ばあちゃん 涙と笑いの学園奮闘記~』
(制作:沖縄テレビ)

◆放送日時

11月25日(水)27時~27時55分

◆スタッフ

プロデューサー
大濱直樹
神山敬三
ディレクター
島袋綾菜
平良いずみ
構成
山里孫存
渡邊修一
撮影
山田耕平
編集
古謝有智
制作
沖縄テレビ
ナレーション
福田加奈子
平良いずみ

2015年11月13日発行「パブペパNo.15-422」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。