2015.10.19

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『よみちにひはくれない
 “若き俳優介護士”の挑戦』

(制作:岡山放送)

「演劇」という手法で、介護に新しい風を吹き込もうとする若き介護福祉士と、
その仲間たちの姿を通じて、これからの介護の在り方を考える。

<10月24日(土)27時45分~28時40分>


「認知症の人と家族の会」が2012年3月に行った会員対象のアンケート。それによると、認知症患者を抱える家族の76%が、コミュニケーションがうまく取れないことや気持ちが通じないことが原因で、介護にストレスや疲労感を感じているという。そうした現状を岡山県和気町の特別養護老人ホームに勤める介護福祉士・菅原直樹さん(31)も感じていた。
 どうすれば介護が楽になるのか、自分に何かできることはないのか―。そうして、たどり着いたのが、自身のライフワークでもある「演技」を介護に取り入れること。相手が自分を誰かと間違えている時、否定したり怒ったりせず、受け入れて、その人になりきる。つまり、別の自分を「演じる」。そうすることで、介護者のイライラが解消されるという。

「認知症のお年寄りに論理・理屈は通じないかもしれないが、感情はしっかりと残っている。僕らと同じように喜怒哀楽がある。だから認知症のお年寄りとの関わりにおいては、論理・理屈にこだわらなくて感情に寄り添った方が良いのではないか」と、菅原さんは話す。
 栃木県宇都宮市出身の菅原さんはかつて、劇作家・演出家の平田オリザさんの劇団「青年団」に所属。介護施設で働きながら、舞台俳優として活動してきた。そんな菅原さんが介護と演劇を掛け持ちする中で、心に膨らんできたのが、介護と演劇の「相性の良さ」だった。

 高校時代に演劇活動で出会った、アニメーション作家の乃日さんと結婚、愛娘の誕生直後に、東日本大震災による福島第一原発の事故が起きた。娘の健康への影響を心配した乃日さんの希望で、住んでいた千葉を離れ、縁もゆかりもなかった岡山県和気町に移り住むことになったことが、菅原さんの人生の転機となる。
 和気町での生活が軌道に乗り出した2014年春、菅原さんは、地元商店街の住民らと、劇団「OiBokkeShi(オイボッケシ)」を結成。「老い」と「ボケ」と「死」からその名が付けられ、テーマは「認知症介護」。「ボケは正さず、演じて受け止める」ことの大切さを知ってもらう活動を始めた。
 今回、「OiBokkeShi」が新たに始めたのが、認知症と介護をテーマにした街頭演劇「よみちにひはくれない(夜道に日は暮れない)」。舞台は実在の和気駅前商店街で、菅原さんのほか、実際に、認知症の妻を介護する岡田忠雄さん(88)も出演する。
 夢と現実が入り混じった前代未聞の認知症徘徊演劇。そこには、1年前に菅原さんの身に降りかかった「悲しい出来事」に対する思いと、岡田さんの妻への深い愛情が込められていた。

ディレクター・白井大輔(岡山放送報道部)コメント

「“認知症のお年寄りは正否の判断がつかないくらい、老い衰えてしまっている。明日は、さらに老い衰えてしまうかもしれない。ならば、今この瞬間を共に楽しまずに、いつ楽しむのかという事を伝えたい”。31歳の若者を突き動かすものは一体、何なのか初めは分かりませんでした。しかし、取材を進めていくうちに、菅原さん自身が自分を見つめ、“悲しい過去”と向き合う事で、もがきながらも前へ進もうとしてるのだと分かってきました。そんな中での岡田さんとの出会いには、運命的なものを感じずにはいられません。認知症介護は今や、深刻な社会問題になっています。しかし、いや、だからこそ、“よみちにひはくれない”という言葉は今の時代に、とても大きな意味を持つのではないかと思っています」


番組概要

◆番組タイトル

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『よみちにひはくれない
“若き俳優介護士”の挑戦』
(制作:岡山放送)

◆放送日時

10月24日(土)27時45分~28時40分

◆スタッフ

プロデューサー
塚下一男
ディレクター
白井大輔
構成
梅沢浩一
撮影・編集
平井大典
制作
岡山放送
ナレーション
萩原聖人

2015年10月19日発行「パブペパNo.15-384」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。