2015.10.14

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『落合くん(27)の“おたカラ”
~石巻で見つけた福祉のカタチ~』

(制作:仙台放送)

東日本大震災後、支援や介護を必要とする高齢者が増え続けている宮城県。
地元・島根県の役場を辞めて石巻市のデイサービス施設にやってきた若者の姿から、
深刻化する「生活不活発病」、さらに近未来のこの国の福祉のあり方を考える。

<10月14日(水)26時5分~27時>


 宮城県では東日本大震災後、支援や介護を必要とする高齢者が増え続けている。その背景にあると言われるのが、仕事や自宅が奪われ、仮設住宅での暮らしを余儀なくされたストレスや、環境の変化などで体を動かす機会を失った結果、身体機能が低下する「生活不活発病」だ。石巻市のデイサービス施設で働く落合孝行さん(27)は、「生活不活発病」の高齢者と向き合うため、地元・島根県の役場を辞めて石巻にやってきた。彼の姿から、深刻化する「生活不活発病」、さらに近未来のこの国の福祉のあり方を考える。

【企画意図】

 生活する上で誰かの支援や介護を必要とする人=要支援・要介護認定者。厚生労働省の調べでは、宮城県では2010年度まで、要支援・要介護認定者は毎年2000~3000人の増加にとどまっていたが、東日本大震災の発生後、2011年度は6559人、2012年度も5686人と、震災前のほぼ倍のペースで増え続けている。背景にあるとされるのが、「生活不活発病」(別名・廃用症候群)。その名の通り、病気やストレス・環境の変化などがきっかけとなって体を動かす機会を失い、身体機能が低下する病気だ。被災地では震災前、農業や漁業などの生業、また自宅に庭や畑があることで、高齢者でも体を動かす機会はあった。しかし震災で仕事や自宅・地域が奪われ、狭い仮設住宅で3年以上暮らすうちに、高齢者の身体機能が急激に衰え始めている。

 震災で最も多くの死者が出た石巻市に、「生活不活発病」の解消に取り組むデイサービス施設がある。職員4人の小さな施設だが、「生活不活発病」の増加に伴い、10年先、さらに20年先の高齢化ニッポンが顕在化した被災地だからこそ、学べる福祉があると信じ、活動している。彼らの姿を通して、復興が少しずつ進む中で深刻化する「生活不活発病」、さらには近未来のこの国の福祉のあり方を考える。

【作品内容】

 石巻市の北部・河北地区で、デイサービス施設を運営する一般社団法人「りぷらす」。ボランティアとして被災地で活動していた理学療法士の橋本大吾さん(34)が、被災地でまん延する生活不活発病の解消には、ボランティアの範ちゅうでは支援しきれない事に気づき、2年前に立ちあげた。「りぷらす」では食事や入浴のサービスは行わず、身体機能の回復に特化するため、リハビリだけを行う。

 ここで働く落合孝行さんは社会福祉士。去年、島根県奥出雲町役場を辞めて、縁もゆかりもない「りぷらす」に転職した。周りからは親しみをこめて「落合くん」と呼ばれる27歳だ。大のおばあちゃん子だった落合さんだが、祖母が病気をきっかけに外出する気力を失い、そのまま他界した経験を持つ。“おばあちゃんのような人をこれ以上増やしたくない”という思いから、生活不活発病の解消に取り組む「りぷらす」にやってきた。

 震災から5年目。仮設住宅では、生活不活発病を訴えるお年寄りが多い。そのうちの一人、三浦米子さん(81)は、震災を共に生き延びた愛犬が半年前に亡くなり、散歩に出る機会を失ったことで、立ち座りが出来ないほど両ヒザの痛みに悩まされていた。

 こうした状況を打破しようと、「りぷらす」は去年秋から、地域の健康づくりを担うボランティア養成に取り組み始めた。“おたがいカラダづくりサポーター養成講座”だから略して“おたカラサポーター”。この活動の責任者に抜てきされたのが落合さん。行政経験を持ち、社会福祉士として制度や関連法律など知識は豊富…しかし理学療法士や作業療法士などリハビリの現場で指導する専門家ではない。落合さんも、役場職員時代は事務作業ばかりで介護やリハビリの現場を経験したことはなかった。そんな中で、ボランティアを指導する講師として、講座はスタートする…。

西村和史ディレクター(仙台放送編成制作局制作部)コメント

「舞台となる“りぷらす”との最初の出会いは、2分半のミニ番組での取材でした。取材をしてみて思ったのは、“2分半じゃ短い”。震災後の被災地の様子を伝える月1回の番組『ともに』の担当でもあったので、今度は7分ほどの尺で“りぷらす”の取り組みを伝える企画を作りました。でもやっぱり、“7分でも短いな”。
私に残された選択肢は、55分のこの枠を使うことしかありませんでした。
今、“りぷらす”が接しているのは、10~20年先の超高齢化ニッポンの縮図だと思います。被災したことで、日本中のどこよりも早く、高齢社会が抱える問題が顕在化したからです。
“被災地に学ぶ”というフレーズ。なにも防災や減災の観点だけではないことを、知っていただければと思います」


番組概要

◆番組タイトル

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『落合くん(27)の“おたカラ”
~石巻で見つけた福祉のカタチ~』
(制作:仙台放送)

◆放送日時

10月14日(水)26時5分~27時

◆スタッフ

プロデューサー
菊地章博
ディレクター・構成
西村和史
撮影
渡邊勝見(レック)
渡邊隆久(レック)
編集
斉藤剛志(レック)
田中裕介
音効
角千明(ヴァルス)
ミキサー
市原貴広(ヴァルス)
制作
仙台放送
ナレーション
斉藤由貴

2015年8月12日発行「パブペパNo.15-276」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。