2014.11.17
<12月16日(火)26時19分~27時14分>
特定失踪者とされる人々の、その失踪に関連する情報は、驚くほど少ない。そうであるからこそ、残された家族は貪欲に活動し、突然失踪した人々への思いを強く巡らす。
両親が特定失踪者の前山利恵子さん。母・園田トシ子さんが大切にしていたスーツを見せてくれた。「再会がかなう時には、これを持って、“お母さん、覚えている?”と言いたい」と話す。所々がほつれたお守りは、父が「効き目があるからおまえが持っておけ」と、くれたもの。「このお守りをお父さんたちが持っていたら、あんな事件にも巻き込まれなかったかもしれないのに……」。父の優しさを感じさせてくれるお守りをいとおしそうになでながら、前山さんはそうつぶやいた。
政府認定の被害者17人の他に、北朝鮮に拉致された人は、本当にいるのか。それは、「特定失踪者」というカテゴリーの重みを考える上で、重要な問いだ。そして鹿児島では近年、新たな証言が相次いでいる。
78歳男性は、鹿児島の市川修一さんと増元るみ子さんが拉致される前日、現場近くの川べりにいた。車に乗り込んだ直後、突然茂みから6、7人の集団が現れ、男性の車を取り囲んだ。とっさに車を急発進させ、集団を振り切ったという男性は、憤りとともに語る、「間違いなく、拉致だと思う」。
三島ヤス子さんは、突然現れた集団に車を取り囲まれ、フロントガラスを割られながらも、かろうじて逃げ切った経験を持つ。事件以来、43年ぶりに現場を訪れた三島さんは、当時の恐怖がよみがえり、なかなか車から降りることができなかった。状況を説明する三島さんの声は、震えていた。
特定失踪者は、政府から「北朝鮮に拉致された」と認定されているわけではない。失踪に関連する情報も、報道される機会も少なく、その苦しみはおろか存在すら、多くの人々に知ってもらえる状況にない。そんな中で、互いに支え合い励まし合いながら、問題解決を目指して活動を続けている特定失踪者家族たちの“今”を見つめる。
「ドキュメンタリーを作る初めてのチャンスを与えられ、ニュース取材で引っかかっていた“特定失踪者”をテーマに選びました。あくまでも拉致の可能性を“否定できない”という特定失踪者の位置づけは、残された家族の立場や心情を著しく不安定にさせています。しかし、北朝鮮の活発な工作活動を伺わせる新たな証言は、拉致認定された人々以外にも被害者が存在しうることを示しています。さらに、ローカルでの放送前日の5月29日、安倍首相は“北朝鮮が、拉致被害者や特定失踪者に関する全面的な再調査の実施を約束した”と発表しました。これまで“拉致問題は解決済み”としてきた北朝鮮が、特定失踪者も含む再調査の意向を示したのは、間違いなく大きな変化です。この番組を通じて、一人でも多くの視聴者が特定失踪者問題に関心を持ち、その先に“特定失踪者問題の解決”という未来が実現することを願わずにいられません」
第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『同じ苦しみ 同じ願い』
(制作:鹿児島テレビ)
12月16日(火)26時19分~27時14分
2014年11月17日発行「パブペパNo.14-461」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。