2014.11.14

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『刹那を生きる女たち
最後のセーフティーネット』

(制作:フジテレビ)

近年、働く単身女性の3人に1人が貧困状態にあるとの調査結果が報告され、彼女たちの実情が徐々に明らかになる一方、その中に顕在化しない見えづらい貧困を抱えた女性たちが存在する。生活保護や障害年金など、国の社会保障制度を頼らず、風俗店、女性支援のNPO、シェアハウスをよりどころとしながら、刹那を生きる女性たちだ。
番組では、彼女たちの日常と、取材で見えてきた日本のセーフティーネットの現状に迫る。

<11月29日(土)27時10分~28時5分>


 女性であるがゆえの「貧困」は長らく日本の課題とされ、特に今年は「女性の貧困」に対する議論も活発に行われている。しかし取材を進めると、そうした議論にすら上がらない、可視化されない貧困層がいることがわかった。不運な境遇で育ち、家族を頼れず、貧困を隠しながら生き延びる3人の女性たちの生活。そして、彼女たちの周りにはそっと支える第三者の存在があった…。

清掃と激安風俗店の仕事を掛け持ちするアボット(仮名)
 2013年12月、アボットは東京でホームレスになった。アパートの家賃を払うことができず夜逃げし、カバン一つで上京。「何が何でも生き延びたい…」ようやく見つけた仕事が、早朝の清掃、そして、激安の派遣型風俗だった。そこは、「身分証さえあれば誰でも即採用」をうたう、池袋の風俗店。100分の仕事で、彼女の取り分は5000円。しかし、指名はなかなか来ない。「女性なら、最後は風俗で稼げる」は、もはや幻想だった。

 家族と絶縁し、転々としながらその日暮らしを続けてきたアボットにとって、いま唯一のよりどころは、店の同僚たち。指名待ちのための待機所やネットカフェで寝泊まりするアボットの姿を見かねて、ついには、店のオーナーも自立のための手助けをすることに…。しかしそんな矢先、アボットは忽然と姿を消した…。

風俗店で出稼ぎをするシングルマザー・里美(仮名)
 シングルマザーとして娘と二人暮らしをしている里美。20歳の時、家出中につきあっていた男性との子供を出産。しかしその後、男性のDVがはじまったことで、一人で子育てをすることを決意。現在は、彼氏が経営する地方都市の風俗店で“出稼ぎ”をしている。実家との折り合いも悪く、家族や、地域の支援も受けられない里美の子育ては、社会から孤立した「孤育て」。

 唯一頼りにしているのが、NPO法人「ボンドプロジェクト」の橘ジュンさんだ。生きづらさを抱える10代20代の女性たちを支援してきたジュンさんは、里美の出産に立ち会ったことをきっかけに、その後も里美の精神状態が不安定な時は、娘を預かるようにしている。

 ある日、ジュンさんのもとに里美からSOSのメールが届く。電車に乗り、地方都市から東京まで娘を預けにやってきた里美。彼女を追いつめたものは何だったのか…。

男性だらけのシェアハウスに住むポチ(仮名)
 築40年の一軒家で、年上の男性3人とルームシェア生活をするポチ。小学校2年生の時に両親が離婚。同居していた母親とも幾度となく衝突し家出。20歳までの2年間、知人男性の自宅に泊まり歩くなどホームレス生活を送っていた。現在は無職。これまで様々なバイトを経験してきたものの、3カ月以上続いたことがない。

 その原因の一つが、ある病だった…。解離性同一性障害。昔は、多重人格と呼ばれた病とともに生きる彼女の手帳には、記憶のない時間…つまり別の人格が現れた時間が、書き留めてある。自分でも、自分のことを把握することができない日々。

 なぜ、彼女は家族との同居を拒み、現在の生活を選んだのか。その本当の理由を、取材中私たちは垣間見ることになった。

ディレクター・田部井一真(フジテレビ情報制作センター)コメント

「多くの人にとって、彼女たちの生活は不可解なものに映るかもしれません。取材を開始した当初、私自身がまさにそうでした。ただ一人一人に話を聞かせていただくと、家族は頼れず、行政の支援も利用しづらい事情を抱えているため、現在の生活は生き延びるために選択せざるをえなかった結果であることがわかりました。だからこそ、彼女たちの選択を一般的な価値観のもとに否定するのではなく、頼ることができる選択肢、セーフティーネットを、一つでも二つでも増やすことのほうが大切なのではないかと感じました。彼女たちの控えめな声に、一人でも多くの方に耳を傾けていただきたいと思っております」


<番組概要>

◆タイトル

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『刹那を生きる女たち
最後のセーフティーネット』
(制作:フジテレビ)

◆放送日時

11月29日(土)27時10分~28時5分

◆制作スタッフ

ナレーター
鈴木弘子
構成
石井成和
撮影
望月あずさ
編集
芦垣均
プロデューサー
宮下佐紀子 加藤正臣
ディレクター
田部井一真

2014年11月14日発行「パブペパNo.14-459」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。