2013.11.13
<11月19日(火)27時9分~28時5分>
2012年4月、熊本県和水町立神尾小学校に一人の小学生が入学した。名前は、陶山優子ちゃん。朝起きて一番にすることは、自分で採血し血糖値を測定すること。彼女は「1型糖尿病」だ。生後6カ月のある朝、極度の脱水症状に見舞われ死んだようにぐったりとなり、心配した母が慌てて大学病院に連れて行きそこで診断されたのだ。落ち込む家族の中で、静かにその現実を受け止めたのは同じ病気を患う優子ちゃんの父だった。「1型糖尿病」の発症率は10万人に1、2人。現在治療を受けている国内の糖尿病患者は270万人と言われているが、内95%以上が成人病である「2型糖尿病」である。しかし2つの糖尿病の違いは広く知られていないのが現実である。
事前に優子ちゃんの両親と小学校では繰り返し打ち合わせを行い、入学の日を迎えた。一つ間違えれば命にかかわることになると不安を持つ先生、自分たちの目の離れた環境で優子ちゃんが無事に日々を送ることができるのかと心配する両親…。その思いをぬぐい去るように、優子ちゃんは元気いっぱいに走り、学校生活を楽しんでいる。
その姿は取材してみれば意外に感じるほど明るく、前向きなもので、他の家族と何ら変わりはない。むしろ自分が思う一般的な家庭よりずっと楽しい家族だ。自分の手でお腹にインスリン注射を打ちながらも元気に毎日を過ごす女の子とそれを見守る家族の姿には取材する側が元気づけられた。
運動会、夏休み、クリスマス、そして1年の月日を大過もなく、無事に迎えることが出来た。その間に、母親は小学校の子どもたちの前で「1型糖尿病」を理解してもらいやすい紙芝居を自分で制作し披露した。また優子ちゃんは、夏休みに同じ「1型糖尿病」を抱えながらも、プロ野球選手となった阪神タイガースの岩田選手の応援ツアーに参加した。
インスリン注射を打たなければ、衰弱して死に陥る「1型糖尿病」。1995年に起こった阪神・淡路大震災ではインスリンの入手に苦労したことから、全国IDDM連絡協議会を患者家族が中心となって立ち上げた。その後、情報提供などを目的に2000年にNPO法人日本IDDMネットワークが設立されたが、現在は「1型糖尿病を治らない病気から治る病気にすること」を最終目的に掲げている。「1型糖尿病を治る病気にする」ための先進研究への助成などメンバーたちは多方面の活動に着実に取り組み、2025年までに目標達成を願う。iPS細胞の研究による再生医療の発展など、様々なアプローチで研究が進められている1型糖尿病の「治る病気」への道は開けるのか。
「2025年」は遠いのか、そうではないのか。番組では陶山優子ちゃんを1年間追いかけた学校生活を中心に、共に生活を送る周りの人々、そしてNPO法人日本IDDMネットワークの活動や同じ「1型糖尿病」を抱えながらもさまざまな場所で活躍する人たちの思いや願いをつづる。
「生後6カ月で1型糖尿病を発症した陶山優子ちゃん。優子ちゃんは人見知りしない、元気いっぱいの女の子で、真新しいランドセルに注射器と血糖測定器が入ったポーチを入れて明日から小学校に通うことを無邪気に教えてくれました。給食の前に注射が必要な優子ちゃんは学校生活を無事に送れるのか、周囲は病気を理解できるのか、取材を続けるうちに1型糖尿病の患者・家族を支えるNPOの存在を知り、「2025年までに1型糖尿病を治る病気に」と目標を掲げていることを知りました。NPOのシンポジウムのの取材で、1型糖尿病を発症して間もないわが子のことを涙ながらに訴える母親の姿が、この番組につながったと気付いたのは番組の編集も終盤に差し掛かったタイミングでした。取材を受けてくれた優子ちゃんとご両親、ご家族にはただただ感謝です」
第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『治らないから治るへ~1型糖尿病2025~』
(制作:テレビ熊本)
11月19日(火)27時9分~28時5分
2013年11月13日発行「パブペパNo.13-454」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。