2013.9.30

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『人生はリングの上に ~夢を追うオヤジボクサー58歳~』
(制作:テレビ長崎)

長崎県佐世保市の早岐警察署に勤める松永悟さん、58歳。松永さんは現役のアマチュアボクサーだ。定年が迫った今も日本チャンピオンの夢を追い続けている。その姿を通して、年齢に関係なく夢や目標を持つ素晴らしさを大勢の人に伝えたいと話す。しかし、58歳という年齢に悩まされることは多い。仕事、体力、ケガ、家族の問題。それでも自分の姿勢は崩さない。年齢の壁を越え、ひたむきに自分の信じる道を進む、その生き様を追った。

<10月8日(火) 26時50分~27時45分>


 松永悟さん、58歳。佐世保市の早岐警察署に警務課相談係として勤務する現役の警察官。定年まであと2年の松永さんには、警察官のほかにもう一つの顔がある。それは現役のアマチュアボクサー。47歳以上のフェザー級チャンピオンを獲ったこともある。「あしたのジョー」への憧れからボクシングに興味を持ち警察学校に入校と同時に、練習に明け暮れる日々が始まった。モントリオールオリンピックの代表選考会に出場するなど、その後の活躍も期待されるなか、ボクシングから引退。
 25歳で刑事課に配属になったことが理由だった。本業が一番大事、松永さんはそういう誠実な男だ。刑事として仕事に打ち込む日々にやりがいを感じながらも、身体的、精神的にギリギリな生活。ストレスを抱え、疲れて家に帰れば無口になりがちで、家庭のことは妻・真由美さんにまかせる時間が増えた。家では無意識的に厳しい父親になっていて、それに息子が反発することもあったという。
 仕事命、そういう自分の人生を見つめ直す転機が訪れたのは48歳の時。自分の病だった。頸部リンパ節がん、医者から余命半年ほどかもしれないと伝えられた。しかし、死が目の前に迫るなか、思い浮かんだことは、大好きだったボクシングをもう一度始めることだった。

 治療の励みになるし、元気な姿を家族に見せることで希望を与えられるんじゃないか、そんな無茶なことを信じて復帰。しかし、この無茶が功を奏したのか、がんは本当に治ってしまった。松永さんは病気が治ったことよりも、再びボクシングを始められたことへの喜びで一杯になっていた。 家族も夫・父親の元気になった姿に喜んだ。松永さん自身もそのことをうれしく思ったが、思いのほか、周りの人が応援してくれた上に、自分が闘う姿に感動してくれたことに驚いた。自分でもこんなことができるのか、と。そしていつの間にか、人を喜ばせるため、感動させるために闘いたい、そう思うようになった。
 年齢に関係なく夢を追うことができる、生きる楽しさ、何かに挑戦する喜びは身近にあるものだと、身を持って伝えること、それがライフワークになった。
 そうは言っても、50代のオヤジ。周囲の人たちからは、応援しながらも、身体を心配する声が多く聞かれるようになり、一度引退した。それが去年、またしても現役アマチュアボクサーに復帰を決意。きっかけは、医者にがんの完治を言い渡されたこと、そして妻・真由美さんが体調を崩し入退院を繰り返すことになったからだった。

 松永さんの中では、もう一回ボクシングに挑戦できる、ボクシングで妻を感動させて元気にしたい、その選択肢しかなかった。復帰を決めてからは身近な人や同窓生など、松永さんがもう一度チャンピオンになるという夢を果たすことを楽しみにしている。いわば中年のヒーローだ。
 しかし、年齢の壁も感じずにはいられない。体力も落ちてきた。でもみんなが期待してくれている。それを励みに頑張るしかない状況だ。一方で、家族、特に二人の娘が自分のことを心配して、無理はしないでほしいと思っていることも知った。仕事一筋だったころには、あまりコミュニケーションが取れなかった娘たちの気持ち。それを知ったことでこれからも現役を続けるべきなのか、少し気持ちも揺らぐ。中年のヒーローは、周りの期待というプレッシャーや娘の気持ちを知ったことで生まれた葛藤を背負いながら、復帰戦を戦い、チャンピオンを目指す。
 取材は4年前、初めてチャンピオンになった時にニュースで特集を組んだことで始まった。再び復帰を決めたことから1年前に30分番組としてドキュメント九州で放送。そして今年5月に1時間のドキュメンタリー大賞出品作として放送。
 58歳という年齢で、仕事、家庭、子どもたちの指導、そして自分の夢と、忙しく暮らすおやじ、松永悟さんの姿を通して、同じ定年間際の世代から若い世代にまで、力強い「生きる力」を感じてもらえるのでないかと思う。

ディレクター・平野雄宇(テレビ長崎)コメント

「松永さんの取材を続けるなかで、理解に難しい部分が多くありました。一番不思議だったのは、なぜそこまで頑張ることができるのか。その疑問を解きたいという思いで取材を続けてきました。応援してくれる人たちがいる、励ましたい人がいる、松永さんには闘う理由がさまざまにありました。でもそれらはプレッシャーでもありました。その様子を追いかけるなかで、最後は自分の思いで闘うその姿に、本当の強さを感じさせられました。誰にでも、毎日の生活にはいろいろな問題や壁があると思います。しかし、それを理由にして、惰性で生きているなと思うことはないでしょうか。悩みがあっても辛いことがあっても毎日練習を続け、リングで闘う松永さんの姿は、その姿そのものがメッセージで、今を精一杯生きているか、そう問いかけてきます」


<番組概要>

◆番組タイトル

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『人生はリングの上に
 ~夢を追うオヤジボクサー58歳~』
(制作:テレビ長崎)

◆放送日時

10月8日(火) 26時50分~27時45分

◆スタッフ

プロデューサー・構成
大浦勝
ディレクター
平野雄宇
ナレーター
赤井英和
撮影・編集
増山裕介

2013年9月30日発行「パブペパNo.13-389」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。