2013.8.23

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『39年間の空白~拉致事件 認定・未認定の狭間で~』
(制作:新潟総合テレビ)

拉致被害者5人の帰国後、進展をみせない拉致問題。政府が認定した拉致被害者の他、拉致された疑いのある特定失踪者は、全国に約470人。そのうちの1人、大澤孝司さんは39年前、新潟県佐渡市で突然姿を消した。兄・昭一さんは、弟との再会を願い、署名活動を続けている。拉致問題に翻弄される家族たち。拉致事件を引き起こした背景とは…。核やミサイル問題など、北朝鮮情勢が複雑化するなか、過去の歴史をひもとき、拉致問題解決への道筋を模索する。

<9月11日(水)26時10分~27時5分>


 拉致被害者5人の帰国によって、世間の注目を浴びた拉致問題。しかし、それから10年を経過しても、新たな拉致被害者の救出など拉致問題は進展をみせていない。政府認定の拉致被害者は17人。その一方で、北朝鮮に拉致された疑いのある特定失踪者は全国に約470人いる。この人たちもまた長きにわたり拉致問題の解決、そして家族との再会を願い、活動を続けている。

 新潟市西蒲区に住む大澤昭一さん(77)の弟・孝司さんは特定失踪者の1人。県職員だった孝司さん(当時27)は、1974年2月24日、新潟県佐渡市でこつぜんと姿を消した。当時、警察や地元住民によって行われた大がかりな捜索。しかし、孝司さんの足取りをつかむことはできなかった。身近で生活していた同僚、そして家族も、孝司さんの失踪理由を見出すことはできなかった。「息子が突然いなくなり、職場に迷惑をかけてしまった」母・房さんは、やりきれない思いを抱えながら、孝司さんの失踪から12年後にこの世を去った。

 日本海側を中心に多くの人が姿を消した1970年代。拉致事件は、公安関係者など一部の人たちにとっては関心事だった。当時、外務省に勤務していた町田貢さん(78)は、日本海側で起きている不可解な失踪事件についての情報を耳にする。
 しかし、証拠や痕跡の少ない拉致事件が大きく取り上げられ、社会問題となることはなかった。1988年、政府が北朝鮮による拉致事件について言及した国会答弁も、拉致問題について世論の関心を引きだす契機とはならなかった。

 2002年10月、拉致被害者5人の帰国を伝えるニュースが、昭一さんの目に飛び込んできた。そこには、佐渡市で拉致された曽我ひとみさんの姿があった。「弟も北朝鮮に拉致されたのかもしれない」昭一さんはその時初めて、北朝鮮による拉致について考えるようになった。それから約10年に渡り、昭一さんと家族は、被害者救出と孝司さんの拉致認定を求める活動を続けている。家族は、特定失踪者の問題が、時間の経過とともに、置き去りにされることを心配している。

 拉致被害者の蓮池薫さんは、いまも北朝鮮に残されている拉致被害者の身を案じている。核やミサイル問題など北朝鮮情勢が複雑化するなか、蓮池さんは少しずつ拉致問題の実態について語り始めている。「拉致問題を動かすには世論の力が必要」と話す蓮池さん。政府は北朝鮮との間で、交渉に向けた糸口をつかみ拉致問題を解決に導くことができるのか。そのほか、関係者からのインタビューをもとに、問題の解決策について考える。

ディレクター・村山裕太(新潟総合テレビ放送推進本部報道部)コメント

「新たな拉致被害者の救出、さらには拉致事件の全体像についても、この10年明らかになることはありませんでした。新潟県では毎年、問題解決を求める集会が開かれています。高齢化する被害者家族たちは、1日も早い家族との再会を願っています。特定失踪者家族にとっても、その思いは変わりません。今回取材させていただいた大澤昭一さんは、“長い間、拉致ということを考えなくて申し訳なかった”弟に対する気持ちをこう話していました。家族それぞれが、拉致問題に対してさまざまな思いを持っています。日々の取材をするなかで、拉致問題に翻弄される家族の姿、そしてその思いを伝えることも、問題の全体像を考えるうえで重要なことだと考えました。家族にとって節目の年はありません。拉致被害者の帰国から11年目という年にこそ、拉致問題の本質について真剣に考えてもらうことができる番組を制作できればと思いました」


<番組概要>

◆番組タイトル

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『39年間の空白~拉致事件 認定・未認定の狭間で~』
(制作:新潟総合テレビ)

◆放送日時

9月11日(水)26時10分~27時5分

◆スタッフ

プロデューサー
酒井昌彦
ディレクター
村山裕太
構成
石井彰
撮影・編集
韮澤由紀夫
CG
白澤彩
MA
佐藤誠二
ナレーター
横内美紗

2013年8月23日発行「パブペパNo.13-334」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。