2013.8.19

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『母とともに~避難区域に灯る一つの明かり~』
(制作:福島テレビ)

寝たきりの母(94)の介護をする娘の伊藤巨子さん(64)。自宅は宿泊が認められていない避難区域の福島県楢葉町。母を自宅でみとると約束した巨子さんは再三にわたる避難要請を断り、たった一人自宅で母の介護を続けてきた。その壮絶な闘いを記録した。

<9月4日(水)26時10分~27時5分>


「施設に行くのは嫌だなあ」「じゃあ私がお母さんを自宅の畳の上でみとるから…」そんな会話をきっかけに12年前から寝たきりになった母親を自宅で介護してきた伊藤巨子(なおこ)さん(64)。彼女の自宅は福島第一原発から20キロ圏内の福島県楢葉町にある。巨子さんは約束を守るため、ヘルパーの資格を取り、自宅で寝たきりとなった母の介護を続けていた。

 しかし原発事故により環境は一変する。楢葉町に避難勧告が出され、立ち入りや居住ができない避難区域に設定されたのだ。しかし巨子さんの心は決まっていた。何があってもこの場所を離れない。認知症を患い寝たきりになった母を自宅から動かすことは死を意味する。そしてかつて交わした約束を必ず守りたい。事故直後、巨子さんのもとには自衛隊や警察、町の職員が何度も避難要請に訪れたがすべて断り続けた。しかし自宅は水も出ず食料もない。避難区域外に出ての買い出しすら認められないこともあった。その闘いは壮絶なものだったが、巨子さんは母の前で笑顔を絶やすことはなかった。

 原発事故から2年が過ぎた今、楢葉町は立ち入りは自由になったが居住は認められていない。そうした中、母の寿子さんが、自宅で静かに息を引き取った。94歳だった。母の寿子さんは60年前、町で初めての町議会議員となった。当時反対運動も起きていた原発の建設を母は支持していたと巨子さんは語る。避難区域で母との約束を守るため、たった一人介護を続けた娘の闘いを一年間にわたって追ったドキュメンタリー。

ディレクター・石山美奈子(福島テレビ報道局)コメント

「“警戒区域は人がいないものだと思っていたでしょ”私が伊藤巨子さんにはじめてお会いしたときに言われた言葉です。逃げなければいけないとは思わないのかとの問いに“母の人生を尊く終わらせたい。私の人生は私が決めたいんです”と笑顔で力強く答えてくださいました。警戒区域も、今はほとんどが解除されました。“私たちがあれほどまでに困難を強いられた、あの線引きはなんだったんだろう”と伊藤さんは話します。しかし、ほとんどの人たちはそれを疑いませんでした。あらためて災害という状況下で“自分の意志を貫く”ことの難しさに気づかされました。
 現在、高齢者はその多くが施設や病院で死を迎え、自宅で最期を迎えることは難しいといわれています。震災と原発事故による過酷な状況下で、介護を続けた伊藤さんを支えていたのは“畳の上でみとる”という母との約束でした。誰しもに訪れる可能性のある“介護”において、自分の意志を貫いた伊藤さんの姿に、“もし自分だったら…”そんな思いを巡らせていただければ幸いです」


<番組概要>

◆番組タイトル

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『母とともに~避難区域に灯る一つの明かり~』
(制作:福島テレビ)

◆放送日時

9月4日(水)26時10分~27時5分

◆スタッフ

ナレーター
関口由香里(福島テレビ)
ディレクター
石山美奈子(福島テレビ)
撮影・編集
斎藤俊司(福島映像企画)、武藤貴之(福島テレビ)
プロデューサー・構成
千田淳一(福島テレビ)

2013年8月19日発行「パブペパNo.13-323」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。