2013.6.6

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『幻の戦車』
(制作:テレビ静岡)

太平洋戦争末期、旧日本陸軍が最後の決戦に備えて試作した、最強の戦車「四式中戦車・チト」。わずか2両しか完成しなかったとされる。戦後、1両はアメリカ軍が回収。もう1両は、アメリカ軍に奪われないよう、静岡県浜松市北区三ヶ日町の湖に沈められたという。幻の戦車チトはどんな戦車だったのだろうか?本当に湖に沈められたのだろうか?戦車を探す調査に密着するとともに、チトの真相を追う。

<2013年6月19日(水)26時35分~27時30分>


「奥浜名湖に沈んでいる戦車を三ヶ日の人たちが引き揚げようとしているらしい」浜松支局に赴任して2ヵ月がたったころ、こんな話を聞いた。「これは面白い!」早速、戦車探しをするという三ヶ日町観光協会に、取材を試みた。ところが、最初の取材で出てきた会話は、「これまでも何度か挑戦したチームがいるがいずれも失敗している」「莫大なお金がかかる」「調査のめどは立っていない」「戦車が発見されたとしても、引き揚げられるのは早くて1年後」。厳しい状況を前に、取材を始めるかどうか、しばらく迷っていた。しかしその後、浜松市が、この戦車探しプロジェクトを地域活性化事業に認定し、100万円の助成金を交付した。この動きが取材開始の後押しとなった。

 奥浜名湖に沈んでいるという戦車は「四式中戦車チト」。終戦直前、1944年と1945年に2両の試作車が完成したところで、終戦。旧日本陸軍、最後で最強の戦車。その姿を見た者はわずか。「幻の戦車」だ。1両は千葉県の戦車学校で終戦を迎え、アメリカ軍に回収された。その後の行方は分かっていない。そして、もう1両のチトは、アメリカ軍に回収されないよう、浜松市北区三ヶ日町の湖に沈められたという。町の人たちによると、軍の命令でチトを沈めたという少尉は、その後も三ヶ日町に住み続け「チトを守り続けていた」と言う。

 戦車を探す調査は2012年11月に開始。2013年の1月から3月にかけて、本格的に実施された。音波探査・潜水調査・水中ロボット・高精度地層探査装置、調査は18回に及び、協力者は200人を超えた。企業や個人、すべて無償のボランティアによる協力だった。番組では、戦車探しの様子に密着するとともに、「幻の戦車はどんな戦車だったのか?」「本当に湖に沈んでいるのか?」という検証に重点を置いた。防衛研究所の戦史研究センターを訪れると、チトに関する資料が2つだけ残されていた。資料には、「極秘」「秘密兵器」「軍事秘密」といった文字が並ぶ。その中に、「四式中戦車(チト)」の文字。チトは旧日本陸軍が極秘に開発した秘密兵器だったことが分かった。その後、取材を進め、さまざまな証言を集めた。チトが沈められるところを見ていた目撃者の証言。そして「自分が沈めた」と証言した技術少尉の証言映像を入手。少尉の家族も初めてメディアの取材に応じた。戦車の開発競争で世界から後れを取り、戦車戦で負け続けた旧日本陸軍の戦車兵たちにとって、チトが最後の救世主のような存在だったこと、チトの技術が現在のさまざまな技術に応用されていることなどもわかった。見どころは、取材とともに徐々に明らかになっていく、幻の戦車・チトに関する情報。

 終戦から68年。旧日本陸軍が起死回生の切り札として、国内の技術を結集し、最後のあがきで、開発した「幻の戦車」。果たしてその姿を現すのか?今の私たちに何を伝えるのか?

ディレクター・小畑明子(テレビ静岡)コメント

「プラモデルひとつ作ったこともなく、戦車の基礎知識もゼロ。取材にあたり、戦車に関する文献や資料を片っ端から集め、その量は、3カ月でダンボール2箱分になりました。今回の番組は、記者の私を含め、カメラマン、音声、編集マン、全員が、20代~30代という、戦争を知らない世代のスタッフが制作にあたりました。最後のあがきで必死にチトを開発した、技術者たちの姿。戦車戦で劣勢に立たされながら、チトの配備を心待ちにしていた戦車兵たちの姿。軍の命令を実直に守った、チトを沈めた技術少尉の姿。“実際にその姿を目にすることはできないけれど、想像すると、胸に熱いものが込み上げてくる”スタッフ全員が番組を作りながら感じたことでした。終戦から68年。“幻の戦車”を通して、当時の日本、そして戦争の時代を生きた方々に思いをはせる機会になればと思います」


<番組概要>

◆番組タイトル

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『幻の戦車』(制作:テレビ静岡)

◆放送日時

2013年6月19日(水)26時35分~27時30分

◆スタッフ

プロデューサー
榛葉晴彦
アシスタントプロデューサー
武田絢哉
ディレクター・構成
小畑明子
ナレーター
阪脩
撮影
植田孝雄
編集
堀越洋一
音声
阿部賢二
音効
長田渉
デザイン
織田扶美子・白馬寛子

2013年6月6日発行「パブペパNo.13-227」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。