2012.10.26

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『来たれ白梅の学び舎へ
~熊本県立第一高校の男子獲得作戦~』

(制作:テレビ熊本)

熊本県立第一高校は高等女学校が発祥で、女子教育の名門と評価されてきた伝統校。戦後の学制改革で男女共学となったが、男子生徒は定着せず、昭和53年に最後の男子が卒業して以降、33年間完全な女子校状態が続いている特異な学校だ。そんな第一高校が男女共学復活を目指して活動を始めた。この活動に大きな力を発揮したのが同窓会だった。学校と同窓会、二人三脚の「男子獲得作戦」を追った。

<12月7日(水)27時00分~27時55分>


 熊本城の石垣の上に建つ伝統校、熊本県立第一高等学校。男女共学でありながら、生徒はすべて女子という特異な学校だ。しかし地元では、それが第一高校だと定着していた。前身は高等女学校。校庭の梅は学校のシンボルであり、生徒は「白梅乙女」と呼ばれている。戦後の学制改革後も男女共学が続かなかったのは、そうした女子校のイメージや、熊本市の都心部にあり、運動場が狭いことも要因なのかもしれない。第一高校は昭和53年に3人の男子が卒業して以降、再び完全な女子校状態になっていたが、伝統校として、熊本屈指の進学校として、いわゆる「名門」の評価は得ていた。 しかし、平成22年春、第一高校にやってきた森塚利徳校長は進学状況の厳しさを目の当たりにする。森塚校長は男女共学を復活させ、学校の勢いを取り戻したいと考えた。これを強力に後押ししたのが第一高校同窓会・清香会だった。

 手始めは近隣の中学校へのあいさつ回り。しかし、それは本来男女共学なのに「男女共学です」とPRする風変りな活動だった。男女共学とは誰もが知っていても男子は行かない学校として認識されてきた第一高校の活動の難しさのひとつが垣間見える。目に見えない「イメージ」の壁をどう打ち破るのか。「同窓会が男女共学に反対しているのではないかという世間のうわさがありますが、そんなことは一切ありません」。同窓会・清香会の田中扶慈子さんは森塚校長のあいさつ回りに同行し、相手先の中学校長に直接訴えた。

 清香会は、会員約4万人。同窓会活動が盛んな熊本県の高校同窓会の中でも特に強固な組織力で知られる。清香会の田中さんは言う。「清香会は母校への思いが強い。母校が何か問題を抱えたら全面的に協力する」。清香会は、今回の活動でプロジェクトチームを発足させ、一致団結し、学校とともに歩む。その中で清香会は学校と役割を分担。「公立高校にはできない活動」を一手に引き受けた。その最たるものが「志願者数調査」だった。圧倒的多数の女子の中に入っていかなければならない男子生徒の不安感を取り除きたいと考えた清香会は、約60の塾を回って協力を依頼し、第一高校を志願する男子受験生の数を事前に調査したのだ。9月の調査で出た数は52人。清香会はこの結果を再び塾側へ還元し、受験生への情報提供につなげた。さらに受験生が志望校を決める11月から12月にかけて2度目の調査を実施し55人という数を手にする。男子の受験が現実味を帯びる。こうした活動を経て迎えた入学試験。果たして何人の男子が第一高校を受験し、合格を果たすのか。同窓会・清香会のメンバーにとっての「母校」とは、単なる出身校という枠を超え、人生の寄りどころともなっていた。伝統校の「男子獲得作戦」を追った。

ディレクター・尾谷いずみ(テレビ熊本報道制作部)コメント

「私自身、“第一高校は共学ながらも男子は行かない事実上の女子校”という認識を持つ熊本県民の1人でした。しかし今回学校と同窓会が展開した“男子獲得作戦”には目を見張るものがありました。熊本には、もともと出身高校への愛着が強い風土があります。中でも第一高校同窓会・清香会は圧倒的な結束力を持っていたことが取材を進める中で分かりました。そして、男女共学に反対していたと世間に思われてきた清香会こそ、実は母校の男女共学の復活を強く願っていたことも。“母校の発展のためには全力で協力する”という清香会の姿勢は一貫していました。そうした思いの強さは、時に意表を突く発想を生みました。野球場に出向き男子中学生へ直接訴えたPR作戦、“受験仲間はこれだけ存在します”とばかりに明らかにした男子志願者数調査作戦。結末がどうなるのかを知りたくて取材を続けた日々でした。学校を変えたいと奔走する大人たちの熱い思いを番組を通して感じていただけたらと思っています」


<番組概要>

◆番組タイトル

『来たれ白梅の学び舎へ
~熊本県立第一高校の男子獲得作戦~』
(制作:テレビ熊本)

◆放送日時

12月7日(水)27時00分~27時55分

◆スタッフ

ナレーション
尾谷いずみ(テレビ熊本)
構成
香月隆
撮影・編集
倉岡英二(テレビ熊本)
MA
森仁(ユーツー)
ディレクター
尾谷いずみ(テレビ熊本)
プロデューサー
本田裕茂(テレビ熊本)

2012年10月26日発行「パブペパNo.12-381」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。