2012.8.15

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ちいさな雪だるま
~3.11悲しみを抱えた親たちの日々~』

(制作:岩手めんこいテレビ)

岩手県内だけで5900人を超える死者・行方不明者が出た東日本大震災から一年が経つ。しかし肉親を亡くした人々、特に子どもを失った親たちの時間はなかなか前に進まない。大船渡市の路上の市で手作りの餅菓子を売っている老女は、全てを支えてくれていた長男が津波で行方不明のままだ。また、中学生の次男を津波で失った夫婦は仕事をすることで気を紛らわせている。そして、消防団員だった跡継ぎ息子を亡くした椿油作りの男性の慟哭。大津波で子どもを失った親たちの、癒えぬ悲しみと前へ進もうとする姿を伝える。

<8月28日(火)26時50分~27時45分>


岩手県内だけで5900人を超える死者・行方不明者が出た東日本大震災。時間の経緯とともに被災地の「復興」が伝えられる中、肉親を失った人はその悲しみが癒えることはなく、時間があの日で止まったままだと感じる人が多い。「復興」という言葉の陰に埋もれるそのような人々の姿を伝えなくてはならない、という思いが取材のきっかけだった。そうした中で子どもを亡くした親たちの悲しみに触れる機会が多かった。

 今年でちょうど100年になる大船渡市盛町の路上の市で、手作りの餅菓子を売っている陸前高田市の老女もそんな一人だ。5日ごとに開かれ、売る人も買う人もお互いの生活の隅々まで知っているこの市。人懐っこい彼女の笑顔に誘われるように得意客が訪れる。しかし彼女の長男は津波で行方不明のままで、泣き暮れていることを知る人は少ない。餅菓子作りは夫がきねを握り、夫婦で餅をつく。深い悲しみを抱えながらも日常に心を向かわせる。

 彼女の仲間に豆腐を作っている夫婦がいる。この夫婦は中学生の次男が津波の犠牲になった。米作りで生計を立てていたが、田んぼは津波で全滅してしまった。豆腐は地元集落を中心に一軒一軒配達して回る。採算は厳しいが仕事をすることで気を紛らわせている。しかし息子が打ち込んでいた野球の道具を手にすると涙が止まらない。そんな中、長女が看護短大に進学した。弟の死をきっかけに選んだ道だった。夫婦は、健気な長女の気持ちに申し訳なさを感じながら成長を見守る。

 50年以上にわたり陸前高田市名産の北限の椿油作りに携わってきた男性は、後継者の息子をやはり津波で失った。息子は消防団員として消防車から市民に避難を呼びかける中で津波にのまれた。わが子は人を救うために犠牲になったのだ、と頭ではわかっている。しかし親としての無念さが胸に募る。息子を失い、工場も流されて椿油作りも廃業を決意していた男性だったが、地元の福祉施設から椿油作りの技術の伝承を依頼される。息子の代わりに受け継いでくれる人がいるなら…。男性は技術を伝える決心をした。

 震災から一年が過ぎ、被災地に春が訪れた。しかし津波で子どもを失った親たちの悲しみは癒えることはない。その悲しみに耐えながら生きていく親たちの姿を伝える。

佐藤文吉ディレクターコメント

「子どもを失った親の思いは何歳になっても変わりません。まして東日本大震災では一瞬にして元気なわが子が目の前から消えてしまったのです。その心の中は察するに余りあります。震災から一年たっても、季節が移ろっても子どもを亡くした親たちの時間はあの日から止まったままなのです。そんな遺族の取材中に私たちの目に飛び込んできたのは、お寺の石の上に作られた、小さな親子の雪だるまでした。子どもを失った陸前高田市の年代の異なる3組の親の心情をこの雪だるまに託し、被災地の進まない今を伝えようと考えました」


<番組概要>

◆番組タイトル

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ちいさな雪だるま
~3.11悲しみを抱えた親たちの日々~』
(制作:岩手めんこいテレビ)

◆放送日時

8月28日(火)26時50分~27時45分

◆スタッフ

プロデューサー
君沢温 (岩手めんこいテレビ)
ディレクター・構成
佐藤文吉(岩手めんこいテレビ)
ナレーション
村上弘明(俳優)
撮影
佐藤文吉
今野賢也(岩手めんこいテレビ)
佐々木義巳(ビデオU)
編集
鵜浦千暁(岩手めんこいテレビ)
MA
音響ハウス
CG
馬場直之(めんこいエンタープライズ)

2012年8月15日発行「パブペパNo.12-294」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。