2012.7.06

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
私の生きる証~がんに選ばれ がんと闘う彼女~』
(制作:秋田テレビ)

若くして“がん”と宣告された一人の女性、“医療リンパドレナージセラピスト”大塚弓子さん。彼女は、17歳で甲状腺がんと告げられ、26歳で再発。現在も再々発の不安がつきまとう。
被災地・宮城県石巻市の病院に勤め、がんの手術や放射線治療後に手や足などがむくむ「リンパ浮腫」で苦しむ患者に心と体のケアを施している。二度のがんを乗り越え、命をつないだ彼女の言葉を通して“生きる”ことを見つめ直す。

<7月18日(水)27時13分~28時8分>


 宮城県の石巻赤十字病院で「医療リンパドレナージセラピスト」として勤務している一人の女性、大塚弓子さん。秋田市出身の彼女はがんの手術や放射線治療の後に手足などが病的にむくむ「リンパ浮腫」で悩む患者に心と体のケアを施している。彼女を「医療リンパドレナージセラピスト」の道へと突き動かしたのは、「死にたい…」と思うほど辛かったがんとの闘病経験だ。彼女は若くして“がん”と宣告された“がん患者”であり“リンパ浮腫患者”なのだ。17歳で甲状腺のがんを発症し、26歳で再発。二度の手術を経てなお、現在も再々発の恐怖と闘っている。17歳で直面した≪人生の幕引き≫、命をつないだ後の≪制御不能な精神状態≫、そして体に残された≪手術の傷痕≫。生きることに挫けてしまいそうな状況の中、彼女は歩み…いや、走りを止めなかった。

 ― 私が“がん”になったのは、選ばれた人だから 乗り越えて、誰かの糧になれる人だから ―

 そんな思いの中で、ひとりの患者から投げかけられた言葉。「主人公が死なない闘病記はないものか…」その言葉に応えるように、彼女は自身の半生を綴った手記の出版を決意する。「この本が、同じ病気で苦しむ患者へ希望の光となれば」、「がん患者のありのままを知ってほしい」彼女は著書の中で、がん患者に突きつけられる現実や心の変化を飾ることなく自分の言葉で書きつづった。

 がんの手術でリンパ節を取ってしまったり、放射線治療でリンパ管が機能障害を起こしたりすることで発症する病的な”むくみ”、「リンパ浮腫」。この病気に完治はなく、患者は全国に推定でも15万人以上はいると言われている。がん治療の進む日本においても“命の代償”として当然のものと考えられ、これまであまり知られてこなかった“がんの後遺症”だ。大塚さんは、この認知度の低い「リンパ浮腫」への理解を求めるため、全国各地で講演活動や、患者によりよい改善方法を伝えるために講習会を行っている。彼女の講演は、リンパ浮腫患者自身の"声"であり、講習会で見せる彼女の姿勢は、“患者同士”という立場からの寄り添い方だ。"がん患者"だからこそ分かる"患者の気持ち"。ある医師は言った「他の人のリンパ浮腫を改善してあげることが、彼女にとっての"がん"との闘い方であり、それで自分が生きているんだと実感するんじゃないだろうか」と。

 2011年3月11日。東北地方の太平洋沿岸は、大津波に襲われ、たくさんの“悲しみ”や“苦しみ”、“痛み”や“嘆き”に覆われた。被災地・宮城県石巻市の病院に勤め、多くのがん患者と接する大塚さんは、津波の被害から紙一重で助かった患者が抱える「がん患者の自分が助かってよかったんだろうか」という自問自答に言葉を失った。彼女は、“生きる”ということを今まで以上に深く考えるようになり、そして新たなステップへと進む決意をする。

 この世の中には、生きたくてもさまざまな理由で生きられない人がいる。時に生きることはつらく、試練をもたらすこともある。しかし、その“苦しみ”、“悩み”を共有することで、その“つらさ”は和らぎ、生きることで味わえる“幸せ”を感じることができる。≪生を受けた者≫、≪命を繋いだ者≫は、生きたくても命をつなぐことができなかった人の分まで生きなくてはならない。生きて、その命を次の誰かにつないでいかなくてはならない。第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『私の生きる証~がんに選ばれ がんと闘う彼女』(制作:秋田テレビ)では、若くして“がん”と宣告され、再発の不安、死への恐怖を抱えながらも、自分と同じ病気で苦しむ人の“希望の光”となるために、つないだ命を次の誰かにつなぐために、必死で生きる大塚弓子さんの生き方を通して、“生きる”ということ、今一度見つめ直す。

三浦大輔ディレクターコメント

 「“人はここまで他人のために生きることができるのだろうか…”もしかしたら、私の心が荒(すさ)んでいるのかもしれませんが、彼女を取材していて毎回このことを感じさせられました。もし自分が17歳で“がん”と宣告され、その後再発し、いつ命の灯火が消えてしまうか分からないような人生を歩んでいるとしたら…私は、自分のことで精一杯になっていると思います。取材の度、私は彼女に同じ質問を繰り返しました。“なぜ、そこまで他人のために生きることができるのか?”彼女から明確な答えは返ってきませんでした。恐らく彼女の中では、私が不思議に思っていることが、当たり前のことになっているんでしょう。彼女の一言一言には、力があります。彼女の言葉を通して、彼女が抱える不安や悩みなど“ありのままの声”を聞いていただきたいと思います。そして、“生きる”ということ、“生きることができる”ということを今一度考えてもらえればと思います」


<番組概要>

◆番組タイトル

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『私の生きる証~がんに選ばれ がんと闘う彼女~』
(制作:秋田テレビ)

◆放送日時

7月18日(水)27時13分~28時8分

◆スタッフ

プロデューサー
星野隆(秋田テレビ 報道部長)
ディレクター
三浦大輔(秋田テレビ 報道部)
撮影
北林竜大(秋田テレビ 映像技術部)
菅原裕也(テレモアドットコム)
今野智(ヴィジュアルスペース)
音声
横井茂(秋田テレビ 映像技術部)
橋本広(テレモアドットコム)
森博義(テレモアドットコム)
川越広之(テレモアドットコム)
大黒屋卓也(ヴィジュアルスペース)
編集
能登屋隆(秋田ステージ)
CG
武藤優(秋田ステージ)
MA
伊藤直人(秋田ステージ)
ナレーター
後藤美菜子(秋田テレビ アナウンサー)

2012年7月6日発行「パブペパNo.12-246」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。