2012.6.22

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
あそんでぼくらは人間になる~子どもにとって遊びとは~
(制作:テレビ新広島)

“遊び”を通して子どもの可能性を引き出そうとしている、広島のユニークな幼稚園「かえで幼稚園」。隣接する森や自作の遊具など、園内は子供たちの興味や挑む心をくすぐり、その力を目いっぱい発揮できる環境に満ちあふれている。そこで子どもたちは、どう成長するのか、彼らの1年間をカメラが追った。子どもたちが見せる本気の顔は人間味にあふれ、安心して遊べる環境作りの大切さが今、われわれ大人に問われていることを教えてくれる。

<7月4日(水)26時15分~27時10分>


“遊び”を通して子どもの可能性を引き出そうとしているユニークな幼稚園がある。それが広島県・宮島をのぞむ高台にある「かえで幼稚園」。その取り組みを通して、子どもたちが“遊び”から何を学び、どう成長するのか、1年にわたって取材した。

 園内は、子供たちが自分の力を目いっぱい発揮できる環境に満ちあふれている。例えば遊具。園庭には先生たちが手作りした、さまざまな遊具がそろう。中でも一番人気なのが竪穴式住居をイメージした遊具。もともと建物の中で遊ぶことを考えて作られたが、子どもたちが興味を持ったのは屋根の方。駆け上がることに夢中になった。その様子を見た先生たちは、すかさず屋根の角度に改良を加え、さらにてっぺんから短いロープをはわせた。それが、子どもの力で届きそうで届かない絶妙な長さ。そして大切なルールを一つ作った。「大人が手伝って登らせてはいけない」。これが子どもたちの挑戦する心を揺さぶった。休む間もなく、助走をつけててっぺんに駆け上がろうとする者が続出。中には年少のころから何度も何度も挑戦を続け、年長になってようやく登れた子もいる。初めてロープをつかむことができて、てっぺんによじ登れたとき、子どもたちが見せる、うれしさに満ちあふれた顔は、何ともいえない。この遊具はいつしか「屋根登り」と呼ばれ、幼稚園を代表する遊具となった。子どもたちはこの遊具で、くじけない心や達成感などを学び、知らぬ間にしっかりと体力をつけていく。

 また、こま回しも人気の遊びの一つ。ここにも先生のちょっとした仕掛けがある。先生の見ている前で連続5回こまを回せたら、ピカピカのマイこまがプレゼントされるのだ。しかし、こま回しは子どもにとって、いろいろなハードルがある。小さな手でこまにひもを巻くのは、大変な集中力が必要。回すのは、もっと難しい。子どもたちはマイこまをゲットするために必死で練習を重ねるのだが、さらに難しいのが「先生の見ている前」で「連続5回」というハードル。4回までは何度も回せるが、5回目になると失敗する子が多い。それは、子どもたちが初めて感じるプレッシャーなのかもしれない。

 ここにはプレッシャーにぶつかってもめげず、それを乗り越えたときの大きな喜びを感じてほしいという先生たちの思いが込められている。そしてプレッシャーに打ち勝ってマイこまを手に入れた子は、今まさにプレッシャーと闘っている友だちを思いやり、そこに自然と応援の輪ができる。ここで子どもたちは、こまを手に入れる以上に大きなことを学ぶ。

 屋根登りやこま回しのように、この幼稚園は子どもたちが思い思いに好きな遊びに没頭できる時間を大切にしている。隣接した自然あふれる森を駆け回る子、木登りでやっと手に入れた木の実をおやつ代わりにほおばる子、虫捕りに熱中する子、仲間と一日中積み木をしている子もいる。

 質の高い遊びには、人間として生きていく上で土台となる、とても大切な要素がたくさん含まれている。そして、そんな遊びに出合うと、子どもたちの目は途端に輝き、本気でぶつかっていき、そこで目いっぱいの力を発揮する。遊ぶときに見せる彼らの本気の顔は人間味にあふれ、安心して遊べる環境作りの大切さが、幼稚園だけでなく、今、われわれ大人に問われていることを教えてくれる。

前田典郎ディレクターコメント

「“ねえ、サル(←カメラマン)。カッパ(←私)は?”“カッパはあおぞら組におるよ”“ふ~ん”。“遊び”を保育の核にすえるユニークな幼稚園の取材を始めたのは2011年の春。園児は我々のことを、サル、カッパと呼び続けました。“おい! 邪魔!”などと撮影中に彼らから怒られることもしばしばで、そのたびに平謝りのサルとカッパでしたが、その“邪魔!”というのは“そこにおったら、こま回しができない!”とか“木から飛び降りられない!”という意味の邪魔で、遊びの邪魔にさえならなければ、カメラがどれほどズンズン迫ろうが、彼らはまったくお構いありませんでした。おかげでサルとカッパは園児の社会にどっぷりと潜ることができました。“遊び”が引き出す子どもの力、彼らの生み出す“世界”がなんと奥深いことでしょうか。同じ年ごろの子どもを持つサルとカッパは、勝手に感情移入しすぎて、彼らの本気に何度も何度も泣かされました」


<番組概要>

◆番組タイトル

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『あそんでぼくらは人間になる
 ~子どもにとって遊びとは~』
(制作:テレビ新広島)

◆放送日時

7月4日(水)26時15分~27時10分

◆スタッフ

プロデューサー
大藤潔
ディレクター
前田典郎
構成
上海五郎
ナレーター
室井滋
撮影・編集
地蔵堂充
MA
広瀬康詞
EED
柳谷基司

2012年6月22日発行「パブペパNo.12-219」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。