2012.5.24
<6月6日(水)26時10分~27時5分>
日本の農業を取り巻く環境が悪化している。米価は下落し続け、ピーク時の3分の2に、一人が一年間に食べるお米の量は、50年前の約半分になった。農家の収入は減り、米作りに欠かせない田植え機・トラクター・コンバインなど高価な農機具が農家の経営を圧迫する。そんな中、大手スーパーの西友が中国産米の販売を開始した。値段は5キロ1299円。低価格帯の国産米に比べ3割ほど安いという。そしてTPPが農家に追い打ちをかける。
新潟県長岡市に田んぼに囲まれた会社がある。「エコ・ライス新潟」だ。農家たちが集まってできた会社で、コメの製造・販売を行い、これまで有機栽培による安全で安心なコシヒカリを全国各地に届けてきた。コメの環境の変化に、マネージャーの豊永有さん(48)は「白い米だけを作って売る時代は終わった…」と話し、コメを加工することで需要拡大を狙う。そこで2004年の中越地震をきっかけに、透析患者などの食事制限者でも食べられるアルファ米の「はんぶん米」を開発。また、今注目されている“米粉”を使ったスイーツの開発を進め、全国各地に売り込む。
エコ・ライス新潟にコメを卸している見附市の鳥屋脇町生産組合。農機具を個人で所有することができないため、農家9戸で購入し、共同利用して、組合員が支えあってコメを栽培する。収入は右肩下がりで減少しているため、豊永さんの取り組みに期待を寄せる。
また、豊永さんが取り組んでいるもう一つの試みが2007年から始めた「白藤プロジェクト」。東京家政大学の学生と一緒に、新潟で幻のコメとなっていた「白藤」を復活させ、スイーツや化粧品などの商品開発を進めている。この白藤プロジェクト出身である松本恭子さんは、東京都墨田区の押上小学校で栄養士として働き、子どもたちに米作りを体験させる“食育”を進めている。「学生時代、お米は誰が苦労して作っているのか知らなかった。今の子どもたちに伝えることで日本の将来を考えることになる」と話す。豊永さんはコメを使った商品開発だけでなく、“お米のあした”を創っていたのだ。
「百年後も二百年後もここで農業をやっていく」と力強く話す豊永さんの取り組みを通して“日本のコメ”の生きる道を探る。
「豊永さんは農家の息子でもなければ、米どころ新潟の生まれ育ちでもありません。東京都出身で転勤族の息子です。変革の担い手は“よそ者、若者、ばか者”という言葉をよく聞きます。取材を進める中で、彼はこの言葉に当てはまるのではと感じました。今まで農家はコメを作るだけでした。むしろそれだけでよかったのです。しかし、コメの消費量の減少に伴い、米価の下落、そして後継者不足など、さまざまな問題が農家に振りかかっています。そんな中、国内での消費が見込めないため、コメの海外輸出を考えている農家も少なくありません。ところが豊永さんは“海外への輸出にコメの未来はない”と話し、農家や洋菓子店、醸造会社、腎臓病患者団体などさまざまな人たちを結びつけることで、コメに新しい可能性を見出そうとしています。番組を通して、崖っぷちの日本農業に何が必要なのか、考えるヒントになれば幸いです」
第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『お米のあした~農業の未来を耕せ~』
(制作:新潟総合テレビ)
6月6日(水)26時10分~27時5分
2012年5月24日発行「パブペパNo.12-174」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。