2011.12.21

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
人は変われる~有明高原寮の少年達~
(制作:長野放送

長野県安曇野市にフェンスも鉄格子も無い少年院がある。「鐘の鳴る丘 有明高原寮」。開設以来60年余り、「人間愛」を基盤にした教育を受け継ぎ、地域住民との交流も盛んな更生施設だ。少年たちの収容期間は3カ月から5カ月。法務教官らの指導のもと、集団生活を通して自らの罪を反省し、問題点を改善しようと日夜励んでいる。
少年たちの非行には、今の家庭、学校、社会が抱える多くの問題が投影されている。
番組では、親子問題を抱えた少年のケースを中心に、非行の原因、寮生活での変化、成長ぶりを描く。また、少年達が社会に復帰した後、どんな人生を歩んでいるかを探る。

<12月19日(月)26時50分~27時45分>


 北アルプスのふもと、長野県安曇野市穂高に豊かな自然に囲まれた少年院がある。「鐘の鳴る丘 有明高原寮」。少年達はなぜ道を踏み外したのか。そして、どう変わっていくのか。1年間近くにわたって有明高原寮に通って少年達の非行の原因や背景を探り、寮生活での変化、成長ぶりを追った。

 有明高原寮は、かつて戦争孤児たちがたくましく生きる姿を描いたNHKラジオドラマ「鐘の鳴る丘」のモデルとなった更生施設。開設以来60年余り、「人間愛」を基盤にした教育を受け継いできた。地域住民との交流が盛んで、運動会をはじめ多くの行事を地元地区と合同で行っている全国でも珍しい施設だ。

 収容期間は3カ月から5カ月。短期間で更生が見込める少年たちだ。起床から就寝まで、規則正しい日課。法務教官らの指導を受けて、自らの罪を反省し、問題点を改善しようと励んでいる。被害者のこと、家族のことを考えなかった少年たちが集団生活を通して互いに協力し合い、相手の立場にたって行動ができる社会性を身につけていく。

 A君(19歳)は万引きを繰り返していた。非行の背景にはこじれた親子関係があった。家では部屋にこもり、親子の会話が全くなかった。初めは寮生活にもなじめなかったA君だが、教官たちとの触れ合いや集団生活、1泊2日の親子合宿などを通して、徐々に心を開いていった。

 C君は16歳のとき暴走族にあこがれて不良グループに入り、法を犯して有明高原寮へ送られた。出院後、定時制高校に入学したが、過去を引きずりながらの社会復帰は容易ではなかった。そんなC君が将来に希望を持てたきっかけは、やさしく魅力的な大人に出会ったことだった。「オレもあんなかっこいい大人になりたい」--C君は短大に進んで教員免許を取得し、今、学校の教師を目指して勉強している。

 少年達の非行には、いじめや離婚、学歴、競争、情報化といった、社会の現実が投影されている。また、本来であれば家庭生活、あるいは社会生活、学校生活の中で得られなくてはいけない良質な体験をしていない少年達が多いのも特徴的だ。

 入院当初は生きる気力さえ失っていた少年たちが教官や家族、周りの人たちの温かい励ましや指導を受けて、徐々に立ち直っていく。有明高原寮を出院した少年の更生率は80%以上という。

宮尾哲雄ディレクターコメント

「少年たちに非行を犯した理由を尋ねると、“バレなければいいと思った”、“お金さえあれば生きていけると思った”という答えが返ってきました。社会規範の欠如と空しい人生観。そして対人関係が苦手な少年達。それは大人社会の現実にも当てはまることかもしれません。
 有明高原寮では携帯電話もパソコンも禁止。人間と人間が生身でぶつかり合い、共鳴し合う、いわばアナログ的な生活です。寮に入った時の、生気のない、ふてくされたような表情が、日がたつにつれて消えていき、退院時は見違えるようにまぶしい姿の少年達を目にするたびに、“人は変われる”という人間の可能性を実感しました。
 しかし、本当の試練は再び社会に出てからです。少年たちがそれぞれの目標と居場所を見つけ、立派な社会人として生きていくことを祈らずにはいられません。

 この番組が子育てや教育に悩んでいる人たちに、少しでも参考になれば幸甚です。」


<番組概要>

番組タイトル

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『人は変われる~有明高原寮の少年達~』
(制作:長野放送)

放送日時

2011年12月19日(月)26時50分~27時45分

スタッフ

語り
檀 ふみ
題字
川村龍洲
撮影・編集
吉川勝義
音効
プロジェクト80
ディレクター・構成
宮尾哲雄
プロデューサー
太田耕司

2011年12月19日発行「パブペパNo.11-319」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。