2011.7.22

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
自然のふところで~森のようちえん まるたんぼう流~
(制作:山陰中央テレビ

鳥取県智頭町にある「森のようちえん・まるたんぼう」。園舎はないが、そこには毎日子どもたちが野山を走り回り、自然と触れあう昔ながらの風景がある。既存の幼稚園や保育園とは違うオリジナルの保育を目指す中、徐々に共感を呼んでいる。約2年半カメラが追いかけながら、子どもたちの成長過程を伝えるとともに、幼稚園、保育園、認定こども園などさまざまな選択肢がある中、独自の路線を行く「まるたんぼう」の取り組みに密着した。

<2011年7月26日(火)25時50分~26時45分>


 鳥取県智頭町にある無認可の保育園「森のようちえん まるたんぼう」。その活動は独特だ。園舎はなく、園児たちが普段活動するのは、智頭の森。おもちゃや遊びは、人が作ったものではなく、すべて自然からの贈り物。そこでは、毎日子どもたちが野山を走り回り、自然と触れあう昔ながらの風景がある。教育方針の「自然の中でのびのび」、「子供一人一人のペースでゆっくりと」を柱に、心と体を鍛えること。既存の幼稚園や保育園とは違うオリジナルの保育を目指している。
 人口約8000人の智頭町、地元に住む子育て中の母親2人、西村さんと熊谷さんが中心となり、2009年に立ち上げた。幼稚園の統合で近くにあった幼稚園が無くなったのがきっかけで、開園を後押ししたのは、「大人の基準で子どもたちの行動を制限し、芽をつぶしてしまっているのでは…」という子育てに対する漠然とした不安だった。そんな2人が注目したのが、ヨーロッパで積極的に取り組まれている自然保育。自然豊かな智頭ならできると、保育に関しては全くの素人だった2人が準備を進め、開園にこぎつけた。自然の中で保育をするということは、けがのリスクなど良い事ばかりではないが、豊かな自然の中で、泣いたり、笑ったりするなどさまざまな経験を積むことで、自立心や人を思いやる心などさまざまな効果が表れてくるという。当初は、2人の子供を含め4人の園児からスタート、徐々に共感を呼び、現在は11人が通うようになり、新年度にはさらに園児が増えている。
 ただ、ここで浮上したのが運営資金。これまで地元の智頭町から3年間の期間限定で、助成金を受けていたが、その期限が迫っていた。支援が受けられなければ、保護者の保育料にはね返ったり、保育士の給料を下げなければならなくなる。国の助成を受けられるように「認可」施設になるためには、園舎の整備などが必要だが、資金の問題が横たわる。また国の画一的な基準によって、「森のようちえん」本来の良さが失われることを西村さんたちは恐れている。開放的な方針を望む保育者や保護者、子どもたちのために、国が歩み寄ってくれることを期待しているが、その行方は不透明だ。
 今、子どもが減っている地域が全国にはたくさんあるが、そんな地域がまるたんぼう方式で、「森のようちえん」を作っていければ…。西村さんは「過疎地での子育てが選択肢の一つになれば良い。どんな市町村にも、普通の施設型幼稚園と“森のようちえん”が共存し、保護者がどちらか選べるようになったら…。」と夢を語る。
 子どもたちが、自然の中で学ぶ生きる力と生活の知恵、また自然と向き合って、困難に打ち勝つ力や甘えない心を身につける新しい取り組みを、約2年半の間カメラが追い続けた。「児童虐待」、「ゆとり教育の弊害」など、子育て、教育に関する様々な問題が噴出する中、「森のようちえん」の活動が日本の教育の現状と課題を訴える。

平井謙太ディレクターコメント

「森のようちえん まるたんぼう」が開園したのは2009年4月。TSKが取材を始めたのは、その4カ月後の8月でした。「森の中で、子どものやりたいようにさせる保育」。それが子どもにとって正しいことなのか、正しくないことなのか、取材を終えた今でもわかりません。しかし、取材して強く感じたことは、子どもたちの生き生きとした表情と、それを見守る大人たちの、同じ様に生き生きとした表情でした。山陰には古き良き田舎が残っていますが、それでもここまで自然の中で毎日を過ごすことはありません。当然ながら国は、このシステムを認めることはありませんが、ここに通わせたい大人たちが集まり、現在は開園時の5倍の子どもが通っています。保育園、幼稚園などさまざまな選択肢がある中で、なぜここを選ぶ人たちがいるのか、取材をして分かった気がします。


<番組概要>

◆番組タイトル

第20回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『自然のふところで
~森のようちえん まるたんぼう流~』
(制作:山陰中央テレビ)

◆放送日時

2011年7月26日(火)25時50分~26時45分

◆スタッフ

プロデューサー
山根 収
ディレクター
平井謙太
構成
山根 収
平井謙太
ナレーター
瀬乃加奈子(シグマセブン)
撮影・編集
野田 貴

2011年7月21日発行「パブペパNo.11-166」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。