2010.11.26

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
朋友~中国人研修生・実習生問題に向きあって~
(制作:テレビ熊本)

最低賃金の半分にも満たない労働を強いられてきた中国人実習生の代理人として全国でも例の少ない勝訴判決を勝ち取った弁護士・小野寺信勝さん。「たとえ、出稼ぎ目的であっても人権を無視した奴隷労働は許されない」と語り、外国人実習生たちの支援の輪を全国に広げている。日本の国際貢献として20年にわたり続けられている外国人研修・技能実習制度。日本の技能移転という大義の一方で都合のいい労働調整という側面。全国に20万人とも言われる外国人研修・実習生たちの闇を見つめる。

<2010年11月24日(水)26時40分~27時35分放送>


 5月中旬、東京上野のとある倉庫の一室。家族の写真を前に涙ぐむ34歳の中国人男性。彼は、外国人研修制度という国際協定を利用して来日、3年という在留期間中に建設関係の会社で研修と実習を受けお金を稼ぎ帰国するはずだった。しかし、研修とは程遠い長時間の単純労働を強いられ、残業代も支払われないまま、仕事が原因で手に病気を患い労災も適用されず、過去1年間は給与ももらってない。中国人男性は東京の労働組合に保護され建設会社を相手に未払いの賃金を求めて団体交渉を続けている。第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『朋友~中国人研修生・実習生問題に向きあって~』(制作:テレビ熊本)は全国に20万人とも言われる外国人研修・実習生たちの闇を見つめる。

 取材の始まりは、今年1月、熊本地裁で勝訴判決が下された中国人研修生が研修先の天草の縫製会社などに損害賠償を求めた裁判。この研修生たちもまた、天草の小さな縫製工場で1年4カ月、研修とは名ばかりの過酷な労働を強いられた。ひと月の手当て6万円、時給300円の残業代、1日12時間以上の労働、ほぼ休みのない日々…。そんな現実を前にしても帰国の自由すら研修生にはなかった。来日にあわせ、借金をして中国の送り出し機関に支払った年収の4~5倍のあっせん料と保証金。契約期間の3年を待たずに帰国すれば保証金が戻らないばかりか法外な違約金が待っている。にもかかわらず研修生が来日するのは、たとえ6万円の手当てでも中国での月収を上回るという現実だ。

 豊かさを求めて来日する外国人研修生の一方で安価な労働力として受け入れる日本の企業。発展途上国への技能移転を目的に日本の国際貢献という美名の下で、20年前に始まった「外国人研修・技能実習制度」。無事に3年間を終え帰国する者の一方で、帰る自由さえ奪われもがき苦しむ研修生たち。製造業から農業、畜産業など、日本で働く外国人研修生はおよそ20万人、しかも、そのほとんどは中国人だという。法律に守られることもない制度の是非が問われる中、毎年6万人以上の研修生が日本の土を踏んでいる。かつて、海外に渡った日本人移民の歴史と変わらない現実が支える日本経済の現実。番組では、外国人研修・技能実習制度の現実と問題点を探る。

沼田健吉ディレクターコメント

 「外国人研修・技能実習制度」という言葉を知ることになった熊本での中国人実習生殺傷事件。制度の存在さえ知らなかったわたしたちにとって、20年前から大量の外国人が日本の一時的な労動力となり、最低賃金にも満たない不当な労働を強いられてきた事実にがくぜんとしました。しかも日本の国際貢献という美名の下で生まれた制度にもかかわらず、法制度には全く守られていないというのが現実…。3年間という期限付きの出稼ぎ目的で来日する外国人と、最低賃金の半分にも満たない賃金で過酷な労働を要求する日本の中小企業。しかし、互いに経済大国日本を底辺で支えているのもまた事実。悪いのは国か! 出稼ぎ目的の外国人か! 奴隷労働を強いる企業か! そのゆがみは底なし沼のような深い闇の中に隠れています。今回の取材だけでは到底伝えきれない問題の大きさ、また自分たちの無力さを痛感した取材でした。


<番組概要>

◆番組タイトル

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『朋友~中国人研修生・実習生問題に向きあって~』
(制作:テレビ熊本)

◆放送日時

2010年11月24日(水)26時40分~27時35分

◆スタッフ

構成
沼田健吉
ナレーション
石原佳代子
撮影
古江智宏
渡辺俊一郎
坂口 修
編集
可児浩二
MA
森 仁
ディレクター
酒井麻衣
沼田健吉
プロデューサー
沼田健吉

2010年11月24日発行「パブペパNo.10-227」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。