2010.12.01

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
いおりといぶき~私たちが生まれた意味~
(制作:テレビ静岡)

いま「命の大切さ」「家族の大切さ」に気付いていない人が多すぎる。年間の自殺者3万人。困難という壁にぶつかると「生きていても仕方ない」とすぐに考える。障害があろうが介護が必要であろうが、誰にでも生まれてきた意味があることを、生まれつき目が見えない姉と弟が教えてくれた。“いおりといぶき”全盲の姉と重度障害児の弟、その家族の 10年間の心の記録をつづった感動のドキュメンタリー。

<2010年12月1日(水)26時40分~27時35分 >


 いま、困難という壁にぶつかると「わたしは不幸だ」「生きていても仕方ない」と考える子が増えている。すぐに他人のせいにする子も増えている。そして、友達をいじめてしまう子、いじめられて自殺を考える子も減らない。こう考える大人も多い。このような時代だからこそ「この世に1つしかない授かった命を大切にしてほしい」。主人公は目が見えない姉と弟だが、障害があろうがなかろうが、介護が必要であろうがなかろうが、誰にでも生まれてきた意味があることを今一度、多くの方に考えてもらいたい。2010年12月1日(水)26時40分~27時35分 放送の、第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『いおりといぶき ~私たちが生まれた意味~』(制作:テレビ静岡)は、生まれつき目が見えない姉と弟、その家族の10年間の心の記録をつづった感動のドキュメンタリーである。

 1999年、全盲の姉と重度障害児の弟、唯織(いおり)と息吹(いぶき)、その家族に出会った。唯織が通う静岡盲学校の100周年記念式典のニュース取材で学校を訪れたときのこと。目の前を全速力で駆け抜けて行く少女、それが唯織だった。少し見えている弱視の子だと思っていたが、しかし、担任の先生は「全く見えていませんよ」と言う。どういう子だろうと無性に話したくなった。唯織は当時8歳。教育担当記者として、子どもたちにインタビューする機会が多かったものの「この年齢でここまで話せる子はいないな」と思った。この子はどんな環境で育ったのだろう? どんな家族なのだろう? 疑問を持っていたが、当時、学校にカメラを入れるのは至難の業。特に障害児が通う学校は撮影されたくない子、家族が多く、カメラクルーは毛嫌いされていた。その時、「機材重そうですね」と声をかけてくれた家族がいた。重度の障害児(息吹)の世話をしていたが、とても明るい。そこへ唯織がやってきた。全盲の姉と重度障害児の弟。気さくな家族。この明るさと強さはどこからくるのだろう。この時、家族にカメラを向けることを決めたが、10年を超える付き合いになろうとは、想像もしていなかった。

 目が見えない姉と弟。小さいころから撮影し続けた2ショットはなんともほほ笑ましい。抱き合う2人。そして唯織が弾くピアノに合わせてリズムをとる息吹。「いぶちゃん」「姉ちゃん」と呼び合う2人。その掛け合いを聞いているだけで心が和んだ。2人のきずなは永遠だ。唯織の視覚障害児としての豊かな感性にも注目。算数の授業で初めて天井を触るシーン。ピアノで語る美しい花畑。そして、グルグル回るシーン。目が見えないとはどういうことか教えてくれた。そして最大の見どころは、番組の最後に大きく成長する唯織。小さいころは「目が見えない」のはなぜか悩み、「全盲が故に何もできない」と現実から逃げようとした。作家・歌手・ピアニスト…夢も敗れ、中途半端な気持ちのまま、資格が取れるマッサージの道を選んだ。「このままでいいのか?」心の中で自問自答する日々。障害があろうがなかろうが悩みは一緒だ。唯織は「自分はどうせ役に立たない。死にたい」と考えたことがあった。しかし、弟の息吹がいたから踏みとどまることができた。重度の障害を持って生まれた弟。手術11回、入院33回。どんなにつらくても前に進む弟を見て、唯織は自分の甘さに気づく。1人では何もできない息吹。

 「本当に生まれてきて良かったのか」家族も悩んだが、いまは息吹の存在が家族を支えている。困難があっても常に明るく前向きな6人家族。この強さは、多くの人を励まし、そして生きる手本となっている。障害があろうがなかろうか、わが子を愛するが故に本気でしかる母にも注目。いま、ここまでわが子をしかれる親はいないのではないか。そして唯織は最後にこう言う。「命はひとつ。こうして生まれてこれたことは良いことなんだよ。(弟・家族に)気づかされました。」と。目が見えないという苦悩から、1人の人間として誰もが持つ苦悩へ。番組の最後に「唯織が目が見えないことを忘れてしまった」と感じたのは自分だけであろうか。深いきずなで結ばれた姉弟、そして家族が、幸せの意味を教えてくれた。

橋本真理子ディレクターコメント

 家族に出会って11年。私たちのことを「空気みたいだから」と表現してくれます。第8回(FNSドキュメンタリー大賞)では、視覚障害児の感性を柱に『イーちゃんの白い杖』を制作させていただきました。取材もここで終わるはずでしたが「この姉弟はこの先どう生きて、どう困難を乗り越えていくのだろう」という疑問が頭から離れず、ニュース取材の合間合間に取材し続けました。そして個人的ではありますが、両親の看病・死を立て続けに体験し、どうして良いかわからなくなっていた私を、常にこの家族の明るさ・強さが支えてくれました。お手本でした。混迷の時代を迎えている日本。多くの人が、この家族を見て励まされるのではないかと思い、制作しました。これは「障害者番組」ではありません。「命・家族の大切さ」を伝える番組です。これまで『FNSドキュメンタリー大賞』のノミネート作品を7本制作させていただきましたが、『ドキュメンタリー大賞』があったからこそ、ディレクターとして成長させていただいたと痛感しております。ローカル局にとって『ドキュメンタリー大賞』はなくてはならない場所でした。あらためて御礼申し上げます。ありがとうございました。


<番組概要>

◆番組タイトル

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『いおりといぶき~私たちが生まれた意味~』
(制作:テレビ静岡)

◆放送日時

2010年12月1日(水)26時40分~27時35分

◆スタッフ

ナレーター
室井 滋
プロデューサー
榛葉晴彦
ディレクター
橋本真理子(取材・構成)
撮影
杉本真弓
音声
山本洋久
編集
古本孝子
効果
長田 渉
題字
西川清美
デザイン
織田扶美子
音声ガイド
平野有海

2010年11月11日発行「パブペパNo.10-217」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。