2010.10.21

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
政と官~政治主導の挑戦と敗北~
(制作:フジテレビ)

2009年9月の政権交代からおよそ1年…米軍普天間基地移設、政治とカネ、円高・株安など、横たわるさまざまな問題の中、「政治主導」を掲げる民主党政権の内部で果たして何が起きていたのか? 番組は1年間にわたって、内閣府・厚生労働省の政務官とキャリア官僚に密着。鳩山政権から菅政権、参院選惨敗を経て、あの代表選へ…霞ヶ関の最前線で繰り広げられた、知られざる「政」と「官」の舞台裏。その挑戦と敗北を追った。

<2010年11月1日(月)26時40分~27時35分放送>


 2009年8月31日。日本国民は、熱狂をみせていた。第45回衆議院選挙、308議席を獲得した民主党の圧倒的勝利。「政権交代」が現実のものとなった瞬間であった…「今日を明治以来の政治と行政のシステムを転換する歴史的な第一歩にしなければ、この内閣の意味はない」鳩山内閣は初の閣議で、こんな書き出しから始まる「内閣の基本方針」を決めた。
 そんな新政権が掲げた一番の旗印は、「政治主導」である。戦後の日本をけん引してきた霞が関の官僚たちに替わって、政治家が全てを決める…“政”と“官”の関係はどのように変わるのか。そして、何よりも「政治主導」はこの国を良い方向に導くべく、機能するのか。2010年11月1日(月)26時40分~27時35分放送の、第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品「政と官~政治主導の挑戦と敗北」(制作:フジテレビ)は、その行く末を見つめようと、新政権発足直後から、ディレクターが霞が関に250日以上も通い詰め、撮影した舞台裏の記録である。

 2009年9月。政権交代直後…「政治主導」を担う政治家側の核として、各省で大臣、副大臣、政務官のいわゆる「政務三役」が任命された。中でも、自民党政権時代にほとんど機能してこなかった政務官は、とりわけ官僚と最前線で向き合うことが多い立場にある。これまで財務省が握ってきた予算の配分権を政治家のコントロール下に置こうと、鳴り物入りで内閣府に設置された「国家戦略室」。その政務官に任命された津村啓介衆院議員(38歳)は日々、官僚との戦いの中に身を置いていた。“これまで日本を支えてきた”というプライド高きエリート官僚たちを相手に、1人で会議の仕切り役を任され、さまざまな政策について修正点を細かに指摘する津村。官僚の側も戸惑いを隠せない。言葉遣いひとつから、これまで“常識”だったことが次々に覆されていく。政務官より20歳も年上の“官僚のトップ”事務次官は“お手並み拝見”とばかり、全く発言しない異様な光景…官僚の世界に斬り込もうと大いに意気込みを見せる津村だが、“政”と“官”の溝はまだまだ深いように思われた。

 一方、“ミスター年金”長妻昭議員が、大臣として乗り込んできた厚生労働省。「政治主導」といううねりの中で、もがいていたのは政治家ばかりではない。入省17年目のキャリア官僚、首藤健治調整官(43歳)。医療分野の政務官・足立信也参院議員のもとに仕えることになった首藤のために「調整官」という新たな役職が作られた。「政治主導」のもと、政務官が、専門知識を矢継ぎ早に繰り出す官僚の話を理解し、的確に指示を出すのは至難の業。首藤は、足立の“助っ人”として、政治家と官僚のいわば“橋渡し”を行う難しい立場を任された。官僚でありながら、その立場が政治家の側にある首藤。同僚たちは、首藤が足立とどんな仕事を進めているのか、ほとんど知らない。さらに政務官の手足となって働くためには、すべての政策を頭に入れておかなければならず、1人の官僚に膨大な量の仕事が集中する。政務官との仕事に入れ込めば入れ込むほど、同僚との距離が遠くなる…そんなジレンマを抱えながらも、首藤は医療崩壊を食い止めるため、この10年増額が認められていない、診療報酬の改定に「政治主導」で挑むことになった。

 2010年5月。政権交代から、8カ月…「政治主導」でのぞんだ米軍普天間基地移設問題への対応の失敗。民主党政権の迷走は、もう歯止めがきかないものになっていた。取材の過程で、「政治主導」に絶望し、霞が関を去る官僚の話も耳にするようになった。6月、鳩山総理の辞任。新しい総理は、菅直人氏に。そして7月…参院選の惨敗を経て、9月には小沢VS菅の代表選へ。カメラを回し始めて1年…。内閣府の津村、厚生労働省の足立は新しい政務官にとって代わられ、官僚の首藤も新しい政治家のもとで働くことになった。少なくとも、現時点ではほとんど実績を残せていない「政治主導」という試みは、山積する課題に直面し、危機にひんする日本を変えてくれるのか。取材を終えた今でも、正直、明確に断ずることは難しい。ただひとつ言えるのは、“試行錯誤”の時間は、もうそう長くは残されてはいないということだけである。ディレクターが記録した映像は、この1年で起こった霞ヶ関の舞台裏の“ほんの一部”かもしれない。しかし、この作品を見て、皆さんにぜひとも考えていただければと思っている。“政”と“官”の理想的な形、そして政権交代以来、民主党が叫び続けてきた「政治主導」の本当の意味を…

加藤正臣ディレクターコメント

 現在、言葉の定義があいまいなまま当たり前のように使われている言葉が、時々あります。「政治主導」 これもその1つではないでしょうか。政権を勝ち取った民主党の政治家も人によって、その解釈は異なっていました。そんな民主党政権は、「政治主導」を掲げ、一体何を目指すのか? そんな興味からこの取材は始まりました。しかし、取材は戸惑いの連続でした。それもそのはず、取材を受けた政治家も初めての政権運営、一方、大きな改革を求められた官僚も、試行錯誤していたのです。政権交代から1年、米軍普天間基地問題、政治とカネ、円高・株安、尖閣諸島問題など日本を揺るがすさまざまな問題の中で、政権の中で政治家と官僚の間に何が起きていたのか? これまであまり見ることができなかった政治家と官僚による政策策定までの過程を見ていただき、政治主導とは何かを、あらためて考えるヒントになればと思っています。


<番組概要>

◆番組タイトル

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『政と官~政治主導の挑戦と敗北』
(制作:フジテレビ)

◆放送日時

2010年11月1日(月)26時40分~27時35分

◆スタッフ

演出・取材
加藤正臣(フジテレビ)
取材
川上大輔(フジテレビ)
プロデューサー
宗像 孝(フジテレビ)
森 憲一(フジテレビ)
企画
堤 康一(フジテレビ)
味谷和哉(フジテレビ)
語り
尾野真千子
編集
村上安弘(キャバレット)
金子数生(キャバレット)
松村亮一(スローハンド)
音響効果
原田慎也(メディアハウス・サウンドデザイン)
デスク
伊藤ひろみ(フジテレビ)

2010年10月19日発行「パブペパNo.10-195」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。