2010.9.10

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
男として 親として~仙台、ある父子の物語~
(制作:仙台放送)

宮城県仙台市の村上吉宣さん(30)は、8歳の長男と7歳の長女と暮らす父子家庭。
長男の大病がきっかけで仕事を辞め、生活保護で生計を立てる。
その中で村上さんは母子家庭に比べて児童扶養手当などの公的支援がほとんどない事に疑問を持ち、全国の父子家庭に呼びかけて、手当の支給を求める行動を起こした。
仲間との活動を通してあらためて知った子ども達への愛情…やがて彼は、自らの生活をも立直すべく、新たな一歩を踏み出す。

<2010年9月13日(月)26時40分~27時35分放送>


 世の働く、子育て中のお父さん…もしあなたの奥さんが、今日突然亡くなったり、今日突然家出をしたら…あなたは仕事も含めて、今の生活を続けることはできますか? それを現実に、目の当たりにしているのが「父子家庭」である。「父子家庭」は全国に9万世帯しかなく、超がつくほどのマイノリティ。多数派であることに安心を覚える今の世の中で、「生きにくさ」に直面してきた人々だ。第19回ドキュメンタリー大賞ノミネート作品『男として 親として~仙台、ある父子の物語~』(制作:仙台放送)はそんな「父子家庭」の現実を見つめたものである。

 宮城県仙台市に暮らす村上吉宣さん(30)は、家出した妻との離婚後まもなく、白血病など2度も大病を患った長男・響君(8)に付き添い、看護するうちに、仕事を辞めざるを得なくなった。響君に骨髄を提供し、兄と命を分かち合った長女・桜胡ちゃん(7)との父子3人での暮らしは、生活保護が頼みの綱。響君の病が癒えて、仕事を探した村上さん。ひとり親でも、子育てと両立できるような仕事…4年半ハローワークに通い続けても、彼の望む求人はなかった。

 生活保護以外の公的支援はないものか? 調べていくうちに、低所得世帯向けの児童扶養手当など、「母子家庭」にはいろいろあることがわかった。でもそれが「父子家庭」にはない…平均年収が「父子家庭」の方が高いからという理由だが、全国には年収300万円未満の「父子家庭」がおよそ4割いることも知った村上さん。彼はそれに疑問を持ち、自分で「宮城県父子の会」を立ち上げ活動を始めた。インターネットを駆使して、仲間を探す日々。その中で出会った同じ「父子家庭」の父…新潟県阿賀野市に住む片山知行さん(38)。彼も家出した妻との離婚後、中3と小4の2人の子を抱えて暮らしていた。同じような境遇の2人…そして同じように片山さんも疑問を持っていた。

 そこへ政権交代が起こる。民主党のマニフェストの片隅には「父子家庭への児童扶養手当支給」の文字。鳩山首相も国会の場でそれを明言し、村上さん、片山さん、そして全国の父子家庭の父親たちが期待を持った。しかし、マニフェストには他にも国民に約束した政策が並び、新年度予算は過去最大規模にまで膨らんだため、マイノリティである「父子家庭」のための政策は、実現がかなり厳しい状況に追い込まれていく…「腹が立った」村上さんがネットを通じて全国に呼びかけた。「行きましょう」…「父子家庭」の全国組織としては初となる「全国父子家庭支援連絡会(全父子連)」発足のきっかけだった。

 有力者への伝手もない彼らの活動は、国会議員1人1人への呼びかけから始まった。素人が手探りで始めた活動は、やがて次第に伝手を増やしていく。しかし厳しい状況は一向に変わらない…知人に子どもを預けて上京し、活動を続けるも、くじけそうになる村上さん…彼に再び力を与えたのは、子どもたちの存在だった。「子どもたちの存在が、自分を親にさせてくれた。いろいろな物を子どもたちからもらっているはずなのに、もっと求めちゃう」。村上さんは、子どもたちがいるから、親は彼だけだから、頑張れるのかもしれない。白血病を乗り越えた家族は、毎年骨髄移植が行われた日を、兄と妹「2人の誕生日」として1年で最も大切な記念日にしている。自分たちのできる範囲でパパをサポートする子どもたち。それに応えようと、パパが歩みだした新たな一歩…母親はいないかもしれないが、それを3人で補い合うように、寄り添って生きる父子の姿を見つめてほしい。

西村和史ディレクターコメント

 「君に何かあったら、ウチは崩壊するよ」。村上さんと出会う少し前に、私が妻に言った言葉です。家のどこに何があるかすらわからない自分にとって、子育てをし、家事をし、私を気にかけてくれる妻がいるから、仕事に打ち込める。そう思う日々の中で、私は宮城県父子の会代表の村上吉宣さんと出会いました。父子家庭の父親は、彼らが望んでそうなったわけではありません。子育て中のお父さん…そして、これからお父さんになる可能性のあるすべての男性に起こりうることであり、私が、村上さんを追い続けた理由です。「父子家庭に光を!」そんな大それたメッセージを発するつもりはありません。ただ、自分と同じように、働く父親の皆さんにとって、奥さんやお子さんにさらに愛情を注ぐきっかけになれば…やはり家族はきずながあってこそ、家族なのです。


<番組概要>

◆番組タイトル

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『男として 親として~仙台、ある父子の物語~』
(制作:仙台放送)

◆放送日時

2010年9月13日(月)26時40分~27時35分放送

◆スタッフ

プロデューサー
佐藤俊昭
ディレクター
西村和史
構成
西村和史
撮影
西村和史
編集
佐藤真巳
ナレーター
梅島三環子
音響効果
谷川正幸

2010年9月10日発行「パブペパNo.10-171」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。