2010.7.13

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
凸凹な僕たちと学校の母ちゃん ~特別支援学校の1年~
(制作:岩手めんこいテレビ

知的障害や発達障害の生徒が学ぶ岩手県立盛岡峰南高等支援学校。
個性が凸凹な生徒たちが就職するまでの1年間を
彼らが生活する寄宿舎で、36年間、指導員として
生徒たちの心をまるごと受けとめてきた“学校の母ちゃん”の目線で綴る。

<2010年7月16日(金)26時50分~27時45分放送>


 岩手県立盛岡峰南高等支援学校には、知的障害のある生徒と発達障害のある生徒が学んでいる。生徒の目標は、卒業後、就職をして社会に出ることだが、発達障害というものをあまり知られていないため現実は厳しい。7月16日(金)26時50分~27時45分放送の第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『凸凹な僕たちと学校の母ちゃん~特別支援学校の1年~』(制作:岩手めんこいテレビ)は、発達障害のある生徒と軽い知的障害のある生徒の二人に1年間密着し、彼らが就職先を見つけるまでの苦悩など、ありのままの姿をとらえた。そしてその姿を、36年間、寄宿舎で指導員として生徒たちの心をまるごと受けとめてきた“学校の母ちゃん”の目線でつづる。

 岩手県立盛岡峰南高等支援学校の生徒に講演したことがきっかけで取材を始めた。特別支援学校(前の養護学校)の高校生に何をどう話したらよいのか…。正直、講演することすら戸惑った。実際に講演すると、生徒のどこに知的障害があるのだろうと疑問に感じるとともに、彼らの純真無垢な表情に強くひかれていた。後日、講演の時、正面に座っていた生徒から1通の手紙をもらう。手紙には、「学校を休んだり遅刻したりの日々。今まで集団の中に入れないでいた」という。そもそも、見た目や話した感じでは、明らかに知的障害のない生徒が、なぜ特別支援学校に通っているのだろう?理由を知りたくて、なんとなく学校に通い始めた。すると、校長から衝撃の一言を聞く。「知的障害のない生徒が、知的障害者として社会に出ていく。このことは、私の中で認めがたいことである」と。
 知的障害のない生徒を指すのは、“発達障害”である。発達障害とは、知的障害はないものの、能力のバランスが凹凸であること。高機能自閉症を指すアスペルガー症候群やADHD(注意欠陥多動性障害)や、LD(学習障害)などさまざまである。
 発達障害は、一般の高校へ通うこともできるが、集団行動や自分の気持ちをうまく伝えることが苦手なため、周囲からは、変な人と誤解され不登校になってしまったり、“キレ”やすいなどの行動に表れ、周囲の手に負えないことなどから、特別支援学校に通う生徒が多いのが現状だ。
 一方で、アインシュタインやスーザンボイル、有名俳優なども発達障害である。得意不得意の差が大きい半面、得意なことに対しては、周囲が驚くほどの能力を発揮すると言われている。
 生徒の目標は、卒業後、就職をして社会に出ること。しかし、発達障害すら知られていないため、企業やお店などの雇用側は、雇うことに後ろ向き。学校の中にも、外へ実習に出すことすら躊躇している先生がいるほどである。
 番組では、発達障害のある生徒、そして、軽い知的障害のある生徒の2人に密着した。就職先を見つけるまでの苦悩や遠回り、何が苦手なのか、どう苦しいのか、ありのままをすべてさらけだしている。

 3年前、国の教育制度が大きく変わり、“特別支援教育”がスタートした。特別支援学校を卒業することは、たとえ知的障害のない発達障害でも、イコール知的障害者としてみなされるのが今の社会である。そこで、発達障害など特別な支援が必要な生徒でも、一般の学校で生徒と共に学び共に成長しあえるよう、一般学校で受け入れる“特別支援教育”が義務化された。しかし、一般高校では戸惑いが隠せない…。
 発達障害のある人が一般の学校で学ぶことができるようになるには、周囲や社会の協力が不可欠である。番組は、障害のある子供たちを見守って36年、宿舎で母ちゃんをしてきた“学校の母ちゃん”の視点で展開し、発達障害の生徒が何をどう苦しみ、それを受け止めるとは何か、母ちゃんの言葉でつづった1時間である。
 昔は、ちょっと変わった子など一般クラスにいたものだ。一緒になって遊んだり教室で勉強し、手を差し伸べるゆとりがあった。今の世の中は、枠にはまらない凸凹な個性のある人は、どこか追いやられがち。大切な何かを失っているのではと思うことがある。ぜひ、学校の母ちゃんのように、周囲の人が、大きな心で彼らを受け止める“地域の母ちゃん”であってほしいと強く願う。

坂口奈央ディレクターコメント

 学校の母ちゃんといると、いろんな生徒が、夜な夜な相談にやってきます。その相談を一緒に聞いていると、生徒は素直で、今までいじめられた経験もあることから、他人の痛みにとても敏感です。純粋な彼らゆえの悩みなんだろうなあと感じます。世間は、特別支援学校に通っているというだけで、生徒を偏見の目で見ています。彼らがどんなことを考え、何を悩んでいるのか。ちょっとした悩みでも、絡まりやすくガラスのような心の生徒たち。周囲にいる人が、母ちゃんのような心で受け止めてくれたら、少しは、生きやすくなると思います。障害が軽いという理由で、年金ももらえない、就職先もままならない生徒。番組では、生徒の表情を見て下さい! とても豊かで生き生きと輝いています。一生懸命生きています。


<番組概要>

◆番組タイトル

第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『凸凹な僕たちと学校の母ちゃん ~特別支援学校の1年~』
(制作:岩手めんこいテレビ)

◆放送日時

2010年7月16日(金)26時50分~27時45分

◆スタッフ

プロデューサー
一戸俊行(岩手めんこいテレビ)
構成・ディレクター・撮影
坂口奈央(岩手めんこいテレビ)
ナレーター
渡辺えり
撮影
今野賢也(岩手めんこいテレビ)
佐々木 潤(岩手めんこいテレビ)
高橋直樹(めんこいエンタープライズ)
音声
藤村貴博
編集
今野賢也(岩手めんこいテレビ)
MA
渡辺 究(クリエイティブ・コア)
CG
馬場直之(めんこいエンタープライズ)
制作
岩手めんこいテレビ

2010年7月12日発行「パブペパNo.10-133」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。