2009.10.2

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
風と土は好きなのに
   〜能登半島 原発のある町〜

(制作:石川テレビ

日本海に囲まれた能登半島の中ほど、
石川県志賀町に原発計画が持ち上がったのは今から40年あまり前。
その歴史は、住民間の亀裂や原発稼動後の臨界事故隠し、
運転差し止め訴訟など、決して平坦なものではなかった。
原発のすぐそばに暮らす、橋たきさん(85)は不安な気持ちを取り除こうと毎日、放射線の測定を欠かさない。
能登の優しい風と土に抱かれながら、ひたむきに生きてきた、たきさんの思いを通し、原発のある町を見つめる。

<2009年10月5日(月)深夜2時35分〜3時30分放送>


 2009年10月5日(月)深夜2時35分〜3時30分放送の、第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『風と土は好きなのに〜能登半島 原発のある町〜』(制作:石川テレビ)は、今まで住民間の亀裂や原発稼動後の臨界事故隠し、運転差し止め訴訟など、さまざまな歴史をたどってきた、能登半島の石川県志賀町にある原子力発電所のすぐそばで、不安な気持ちを抱えながらも、能登の優しい風と土に抱かれながら、ひたむきに生きてきた、橋たきさん(85)の思いを通し、原発のある町を見つめた作品。

 日本海に囲まれた能登半島の中ほど、石川県志賀町で生まれ育った橋たきさん(85)。手押し車を押しながら、今日も畑へ向う。心地よい風が吹く高台の畑で雑草を刈り取るたきさん。根気のいる作業だが、野菜は口に入れるものだからと農薬は絶対に使わない。ところが真横に見える原発の巨大な煙突が、たきさんの心を揺らす。   
 志賀町で原子力発電所の建設計画が発表されたのは1967年。町は地域活性化の切り札になるとして大きな期待を寄せた。しかし、原発の賛否をめぐり住民同士の意見が割れ、つながりが強い集落の中に大きな亀裂が生まれたのである。
 紆余曲折の末、1993年に1号機が、2006年に2号機がそれぞれ営業運転を開始した。志賀町にはこれまでに1号機で約40億円、2号機で100億円以上にも上る電源立地地域対策交付金が入った。約140億円という町の年間予算に匹敵するこの交付金で道路の整備はもちろん体育館や学校が新しくなり、温浴施設もできた。さらに交付金とは別に約350億円もの固定資産税がこれまでに納められ町の財政を潤してきた。しかし、人口はここ10年で3300人減り過疎に歯止めがかからない。
 一方で、反対派住民らは、原発建設差し止めや運転差し止めを求めて裁判を起こした。2006年3月、金沢地裁は2号機について想定を超えた地震によって事故が起こり、住民が被爆する危険性があるとして、全国で初めて原発の運転差し止めを命じた。翌2007年3月、衝撃的なニュースが伝えられた。1号機で定期検査中に炉心から制御棒が抜け、連鎖的に核分裂反応が起きる臨界状態になっていたことが発覚したのだ。しかし、北陸電力はその事実を国や県に報告せず、さらに当時の記録も残さないまま事故を8年間も隠ぺいし続けていたのである。国は「国内初となる臨界事故を隠していたのは極めて悪質」と判断。1号機の運転も停止された。その10日後、県内の観測史上最も強い震度6強の揺れが能登を襲う。死者1人、重軽傷者300人以上、全半壊した住宅は2400棟にも上る甚大な被害を出した能登半島地震だ。幸い原発に異常はなかった。
 高裁に持ち込まれていた運転差し止め訴訟。今年3月、名古屋高裁金沢支部は1審判決を取り消し、住民側逆転敗訴を言い渡した。この判決から1週間余り、地元の理解や再発防止対策などの条件がそろったとして、県は1号機の再稼動を認めた。
 カメラは能登の優しい風と土に抱かれながら、ひたむきに生きるたきさんの日常を映し出すことで原発のある町を浮き彫りにする。

藤井直之ディレクターコメント

 志賀町は松本清張の小説「ゼロの焦点」で知られるヤセの断崖や、日本海の幸を堪能できる恵まれた場所です。ここで暮らす人たちは、先祖代々受け継がれて来た畑や田んぼ、そして何より住民同士の結びつきを大切にしてきました。しかし、過疎の波が押し寄せ原発計画が持ち上がると、その賛否をめぐり町が大きく揺れます。志賀町で原発に関する世論調査を行ったところ、60%の人が「不安を感じる」とし、四、五十代の女性では90%までに上りました。たしかに町には莫大な原発マネーが納められ、道路や施設の整備が進みました。ところが、1号機の営業運転から15年。原発の減価償却で年5億円のペースで税収が減り続けます。整備された施設の維持管理費が重くのしかかってきます。さらに過疎にも歯止めが掛かりません。国が推し進めるエネルギー政策。その一方で不安を感じながら暮らす人々。原発に将来を託した町の将来は…。


<番組概要>

◆番組タイトル

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『風と土は好きなのに〜能登半島 原発のある町〜』
(制作:石川テレビ)

◆放送日時

2009年10月5日(月)深夜2時35分〜3時30分

◆スタッフ

プロデューサー
井家 通(石川テレビ)
ディレクター
藤井直之(石川テレビ)
ナレーター
梶田香織(名古屋タレントビューロー)
構成
鍵谷真二
撮影
和田光弘(Mビデオ)
編集
斉藤淳一
音効
大川育三(東海サウンド)
美術
高倉園美(石川テレビ)

2009年10月2日発行「パブペパNo.09-243」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。