2009.7.31

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『薬害肝炎 証の壁』
(制作:新潟総合テレビ)

去年1月に薬害C型肝炎の救済法が成立したが、中身は患者を「カルテなどの証明」で線引きするものだった。
救済法の成立から約3週間後、新潟県では「カルテのない薬害C型肝炎の全員救済を求める新潟の会」が結成された。
C型肝炎患者に立ちはだかる「証の壁」。
カルテ無きC型肝炎患者の活動を通し、薬害肝炎問題の「全員救済」について考える。

<2009年8月2日(日)深夜2時50分〜3時45分放送>


 国が認めた「血液製剤・フィブリノゲン」を出産や手術の時に止血剤として投与され、C型肝炎ウイルスに感染した人は全国で少なくとも1万人以上と言われている。
 去年1月、この問題を巡り救済法が成立。患者は、カルテなどの証明をもとに国と製薬会社を相手取り提訴、裁判所が製剤投与の事実・因果関係の有無を確認できれば和解が成立する。和解した患者には症状に応じて国などから1200万〜4000万円の給付金が支払われる。
 しかし、実際に救済されるのはカルテのある患者がほとんど。カルテのない患者は証明を手に入れるため、当時の医師や看護師などを探さなければならない。
 新潟県で救済法の成立から約3週間後に結成された「カルテのない薬害C型肝炎の全員救済を求める新潟の会」(通称・薬害C型肝炎新潟の会)。会には全国各地から約700人もの患者が入会し、救済法の幅広い適用や治療費・生活費の補助などの恒久対策を求めて活動している。このようにカルテのない患者が集まり、行動を共にするのは新潟県が全国で初めてである。
 救済法の成立以降、カルテのない患者は証明を求めて病院や昔の医師・看護師などに問い合わせるが、出産や手術は10年〜30年以上も前のことで記憶のない人がほとんど。病院の廃院や移転などに伴いカルテが廃棄されるケースが多く、個人情報という理由で医師の名前を明かさない病院もあった。
 新潟県・小千谷市に住む和田イネさん76歳。和田さんは45年前の出産時にフィブリノゲンを投与されたと主張するがカルテは残っていない。和田さんは母子手帳をもとに当時の助産師・篠田キクイさんを探し出し、「フィブリノゲンを使った」という証明を手に入れた。
 また、篠田さん以外の看護師などもフィブリノゲンは使ったと一様に口をそろえるが、肝心の医師は「使用した記憶はない」と主張し、記憶が食い違う。
 和田さんは提訴するために一つのカギとなっている「医師の証明」を手に入れることができず提訴に踏み切れない。そんな中、和田さんは肝臓ガンの再発・治療のため再入院、現在も治療を続けている。

 一方、新潟県・上越市の久保紀子さん50歳は当時の医師から証明を手に入れることに成功。今年3月、薬害C型肝炎新潟の会の患者として初めて新潟地裁に提訴した。久保さんから協力の依頼を受けた医師は製薬会社に納入記録を照会。残っていた手術記録と照らし合わせたところ、久保さんにフィブリノゲンを使った可能性が高いことが明らかになった。
 全国ではカルテのない患者が「医師や看護師などの証明」をもとに和解しているが、証明の内容に和解の「基準」はない。厚生労働省も和解について「提出された資料・司法の判断に任せる」と話す。患者は病・時間・記憶と闘わなければなければならない日々が続く。
 番組ではカルテなき新潟県のC型肝炎患者の活動を追いかけ、「全員救済」について考える。

制作担当者のコメント

 新潟市に住む薬害C型肝炎東京原告の一人・平井要氏の取材をきっかけに薬害肝炎問題を一から勉強して取材を進めた。
 薬害C型肝炎新潟の会の活動や患者に何度も足を運び、救済法が成立してからの患者の「姿・声」を見て聞いて取材を続ける中、薬害肝炎問題の根深さを知った。
 患者の多くは、救済法の成立は一つのステップであり、これからが「全員救済」に向けての闘いであると活動している。番組では患者の高齢化や病状が進む中での活動の難しさを訴えた。


<番組概要>

◆番組タイトル

第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『薬害肝炎 証の壁』
(制作:新潟総合テレビ)

◆放送日時

2009年8月2日(日)深夜2時50分〜3時45分放送

◆スタッフ

プロデューサー・構成
酒井昌彦(NST)
ディレクター
小師智彦(NST)
ナレーター
鈴木秀喜(NST)
撮影・編集
中島茂雄

2009年7月31日発行「パブペパNo.09-180」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。