2009.1.15

『決定!第17回FNSドキュメンタリー大賞』

「第17回FNSドキュメンタリー大賞」の大賞作品が北海道文化放送制作の『バッケンレコードを越えて』に決定!

トリノ五輪の代表選出を目前に大きなアクシデントに見舞われ、一命を取り留めながらも記憶を失い、周囲の支えで奇跡的な回復を見せたあるアスリートが再びジャンプ台に立ち、しかしそんな彼にふりかかったさらなる悲劇までをつづったスケールの大きいヒューマン・ストーリー

<2009年1月25日(日)16時〜17時25分放送>


 フジテレビの系列28局が番組制作能力の向上と、そのノウハウの蓄積を図るという趣旨の元、ドキュメンタリー作品を競い合う「第17回FNSドキュメンタリー大賞」。厳正な審査の結果、大賞に『バッケンレコードを越えて』(北海道文化放送)、優秀賞に『「空白」〜冤罪被害者のその後〜』(富山テレビ)、『光と影〜光市母子殺害事件 弁護団の300日〜』(東海テレビ)が選ばれた。大賞作品『バッケンレコードを越えて』(北海道文化放送)を中心にした番組『決定!第17回FNSドキュメンタリー大賞』が1月25日(日)16時〜17時25分に放送される。
 今回大賞に選ばれた北海道文化放送の『バッケンレコードを越えて』は、トリノ五輪の代表選出を目前に大きなアクシデントに見舞われ、一命を取り留めながらも記憶を失い、周囲の支えで奇跡的な回復を見せたあるアスリートが再びジャンプ台に立ち、しかしそんな彼にふりかかったさらなる悲劇までをつづったスケールの大きいヒューマン・ストーリーである。登場人物を通じて、見る人に生きる勇気を与えながら、夫婦とは? 人間とは? を問いかける。闘病生活を追ったプライベート映像も効果的に用い、ナレーションを実際の関係者に依頼するなど手法にも新鮮さを感じさせて、作品内容、制作技術共に高い評価を受け、全会一致での大賞選出となった。
 制作の北海道文化放送は、第8回(1999年)『高度1万メートルの挑戦 〜エア・ドゥ就航の真実〜』以来9年ぶり2回目の大賞選出。
 また他の各賞は以下の通り。

大賞 北海道文化放送 『バッケンレコードを越えて』
優秀賞 富山テレビ 『「空白」〜冤罪被害者のその後〜』
優秀賞 東海テレビ 『光と影〜光市母子殺害事件 弁護団の300日〜』
特別賞 フジテレビ 『家路〜海を渡った孤児たちは今〜』
特別賞 岡山放送 『先生は桃太郎〜障害者野球がつなぐ夢〜』
特別賞 沖縄テレビ 『ヘリコプターを私に下さい〜すべては命のために〜』

 3月13日(金)にホテル日航東京で行われる贈賞式では、大賞を獲得した北海道文化放送に500万円、優秀賞の2局にはそれぞれ300万円が贈られる。

<『バッケンレコードを越えて』の内容>

■大倉山のバッケンレコード

 バッケンレコードとはスキージャンプの競技場最長不倒記録のこと。ジャンパーにとっては、そのジャンプ台で最も遠くに飛んだ輝かしい勲章だ。国内に2つしかないラージヒル競技場の1つ大倉山のバッケンレコードは145メートル。長野県白馬の137メートルを8メートルも上回る国内最長記録でもある。その驚異のバッケンレコードを樹立したのが金子祐介選手で、トリノ五輪前年の2005年3月25日のことだった。

■バッケンホルダーを襲った悲劇

 破格の記録を打ちたてた金子祐介選手だったが、トリノ五輪のシーズン直前に、こつ然とシャンツェから姿を消した。ジャンプには珍しい「命」に関わる大ケガが原因だった。シーズンインを前にした海外合宿でのこと、空中でスキー板と体をつなぐ金具が外れるというアクシデントに見舞われる。板が外れ翼を失った彼は、そのまま顔面からランディングバーンに突っ込み、上下アゴの骨を粉砕骨折したほか、目から下のほとんどを骨折した。頭蓋骨の底部で脳を支えている無数の小さく薄い骨も折れ、溢れるほどの出血があった。一命は取り留めたが、ジャンプの再開どころか一般の社会復帰さえ危ぶまれた。

■最愛の人の存在と取材のきっかけ

 金子選手が表舞台から消えている間の様子を婚約者の長井ひとみさんが写真やビデオ、ノートに記録していた。UHB〈北海道文化放送)アナウンサーの近田誉は、ひとみさんが撮影した当時の写真やビデオを見せてもらい驚く。そこに映っていたのは、精悍なジャンパーだった金子選手とは別人のような痛々しい姿だった。ビデオの中で金子選手は、「自分の名前はカメヤだ」と他人の名前を名乗る。恋人の名前を尋ねられ「今は分からない」と言う。ヒントをもらい、何度も聞かれて、「長井ピース」と指を指して答える。間違っていた。自分が誰かも分からない。家族も最愛の人の名前も分からなくなっていた。言葉や記憶が失われていた。

■奇跡のジャンパー

 脳に障害が残り、生きがいを失い、失望感にさいなまれ苦しんだ金子選手を救ったのは「ジャンプへの思い」と「最愛の人の支え」だった。2006年7月、金子選手は再びジャンプ台に立つ。その年のジャンプシーズンが到来すると選手として復帰。「奇跡的」とも言える復活を果たす。そして、悪夢から2年、2007年11月、2人は結婚する。試練を乗り越えたアスリートの取材は結びとなるはずだった。しかし、復帰2シーズン目、金子夫妻と食事の約束をしていた近田のところにひとみさんから電話が入った。内容は2つ。「今季が夫、祐介の現役最後のシーズンになるだろう。そして、私(ひとみさん)は悪い病気らしく治療のため北海道を離れることになった」というものだった。UHBの取材は続くことになった。

<制作者のコメント> 企画・取材を担当した/近田 誉(北海道文化放送アナウンサー)

 スポーツ実況のアナウンスにおいて記録やデータはコメントを構成する上でとても重要な要素です。
 私はアナウンサーとして15年以上もジャンプ競技に関わってきて、常に「記録」を意識していたつもりでした。しかし今回の番組をスタートするきっかけにもなった「記録」は、私がそれまで扱ってきた「記録」とは意味が違っていました。
 「写真の1枚でもあれば…」そのくらいの気持ちで訪ね見せられた記録、ひとみさんが撮影したビデオの内容は強烈でした。記録することの大切さ、記録のもつ重さ、メディアの役割を取材相手に教えられ、愕然としました。
 「記録」と「記憶」は番組のキーワードでもあります。バッケンレコードという記録には、たくさんの深い「おもい」が寄せられていると感じています。今回、取材対象者の持つ力、素材の力を思い知らされました。不思議な出会いの数々にただただ感謝するばかりです。


◆スタッフ

ナレーション
本山真弓(金子選手の実の妹)
取材・制作・ナレーション
近田 誉アナウンサー(北海道文化放送)
撮影
北口康宏
編集
堀 威
ライン編集
西本七菜
CGテロップ
トップ・クリエーション
MA
TSP
音効
早川歩希
プロデューサー・構成
吉岡史幸

2009年1月14日発行「パブペパNo.09-009」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。