2008.10.24

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『光と影〜光市母子殺害事件 弁護団の300日〜』
(制作:東海テレビ)

1999年、山口県光市で本村洋さんの妻と長女が殺害された。「光市母子殺害事件」。
当時18歳だった少年が逮捕され、一審二審の判決は、無期懲役。しかし、最高裁は、死刑含みで、審理を広島高裁に差し戻した。
21人の弁護士が集い、この事件を再調査することになる。そこで、弁護団が見たものは、精神年齢の低い青年像だった。
刑事事件の弁護活動とは、弁護士とはどうあるべきかを、弁護団会議などにカメラを入れ、取材を重ねた。
果たして、この番組から、何が見えてくるのか…。

<2008年10月25日(土)深夜3時5分〜4時放送>


 1999年4月14日、山口県光市で母と生後11カ月の長女が殺害された「光市母子殺害事件」。当時18歳だった少年が逮捕され、一審二審の判決は、無期懲役。しかし、最高裁は、死刑含みで、審理を広島高裁に差し戻した。
 最高裁の途中段階から、弁護団は、差し変わった。起訴事実を争わず、情状を主張してきた旧弁護団が、「死刑含み」の状況に危機感を感じたためである。新弁護団には、21人の弁護士が集まり、この事件を再調査することになる。この弁護団の中に、名古屋の村上満宏弁護士も加わっていた。村上弁護士は、自身の弁護経験から「謝罪や反省は、いつか被害者遺族に届く」と信じていて、事件に真っすぐに向き合うよう、光事件の被告と幾度も面会を重ねていた。村上弁護士が見た被告は、流布されていた凶悪な姿ではなく、精神年齢の低い青年だった。
 一方、裁判は思わぬ方向へ動き始める。被告は、新弁護団に殺意がなかったこと、そして、強姦目的で現場を徘徊していたのではないことなどを告白する。一、二審で争われなかった新事実であった。弁護団は、争点を絞りながら、法廷で新事実を展開する。しかし、感情的な空気の中で、世論は「荒唐無稽な供述を始めた」「死刑が恐くなって事実を翻した」と被告を非難、さらに、弁護団にまで、「鬼畜」「悪魔のしもべ」などとバッシングの嵐が吹き荒れる事態となる。また、「悪者を弁護する必要などない」ということを、メディアで平気で語るコメンテーターまで現れる。

 私たちは、裁判とは何か、刑事事件の弁護活動とはどうあるべきか、弁護士とは、どういう職責を持つものなのかを、冷静に見ることが欠落した危険な風潮を感じた。このため多様な視点を提示するべきだと考え、弁護団会議などにカメラを入れ、取材を重ねた。差し戻し控訴審判決は、「死刑」と出た。しかし、裁判員として法廷で人を裁く立場となる私たちに「光市母子殺害事件」は、さまざまな問題を残したのではないかと考える。果たして、この番組から、何が見えてくるか…。

制作担当者のコメント … プロデューサー・阿武野勝彦

 「死刑だ」「殺してしまえ」…。会ったことも、言葉を交わしたこともない被告に、なぜ、こんなに感情的になってしまうのか? 「鬼畜弁護団」「悪者を弁護するなど必要ない」…。被告の弁護士たちまでバッシングする社会のありようを、正常と言えるのか。私たちは、弁護団側から「光市母子殺害事件」を取材しました。この番組は、誰かを陥れたり、傷つけたりするためではなく、よりよい社会を作っていくために、多様なものの見方を提示することが必要だとの思いから制作しました。「情報過多」も問題ですが、「予断」や「偏見」は「情報過疎」から生まれるものです。メディアとしての役割を考えながら制作しました。すでにご覧いただいた方たちからの感想を、東海テレビのホームページに掲載しています。視聴後に、隣人の意見としてお読みください。


<番組概要>

◆番組タイトル

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『光と影〜光市母子殺害事件 弁護団の300日〜』

◆放送日時

2008年10月25日(土)深夜3時5分〜4時放送

◆スタッフ

プロデューサー
阿武野勝彦
ディレクター
齊藤潤一
撮影
岩井彰彦
村田敦崇
編集
山本哲二
効果
久保田吉根

2008年10月23日発行「パブペパNo.08-299」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。