2008.10.15

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『手さぐり―児童虐待の真実を見つめた18年』
(制作:関西テレビ)

児童虐待の疑いで子供を児童相談所に預けられた親、そしてその子供の姿を追い、
社会的療育のあり方を訴えてゆくドキュメンタリー

<2008年10月18日(土)深夜2時55分〜3時50分放送>


 2008年10月18日(土)深夜2時55分〜3時50分放送の『手さぐり―児童虐待の真実を見つめた18年』(制作:関西テレビ)は、児童虐待の疑いで子供を児童相談所に預けられた親、そしてその子供の姿を追うことで、社会的療育のあり方を訴えてゆく。

(企画意図)

 「児童相談所に子どもを取られた。死にます」―関西テレビにメールを送った由美さん(仮名)は、虐待の疑いで3人のこどもを強制的に保護された。児童相談所は「3歳の長男の首にひもで絞めたようなアザがある」―しかし真偽の鑑定や詳しい説明もなし。由美さんは「故意ではなく事故だ」と主張し対立。一方、児童相談所は命に関わるので保護したが鑑定などは不十分として真実の争いは避けてきた。1年が過ぎた春、夫婦のもとに1泊だけ長男長女が戻ってきた…。

(番組内容)

 1980年代、小児医療現場や保健所で、明らかに親からのせっかんや暴力で傷ついた子どもたちが目立ち始めた。親が子に暴力を振るう、ののしる、性的心理的に追いつめる―「児童虐待」。社会から孤立した親子やこどものSOSを一部の児童相談所職員が受け止めていた頃、1990年、大阪に全国で初めて民間が運営する「児童虐待防止協会」が設立。活動の中心は電話相談「こどもの虐待ホットライン」。18年間で受けた電話相談は約4万3千件、うち3割が「今まさに虐待している密室の母親」からの訴え。こどもの命を直接左右する親と向き合っている。児童相談所の虐待相談の件数は、データを取り始めた18年前に比べて約34倍の3万7千件で減る気配はなし。2006年、親によるこどもの虐待死は61人。1週間に一人の割合で子どもが虐待で死亡している。
 「児童相談所に子どもを取られました。死にます」、児童虐待を継続取材する関西テレビに、2007年4月届いたメールの送り主、由美さん(仮名)。リストカットを繰り返す原因は、虐待の疑いで3人のこどもが強制的に保護されたこと。児童相談所は「3歳の長男の首にひもで絞めたようなアザがある、命の危機なので3人とも保護します」と主張して、真偽の鑑定や詳しい説明もなく親子は強制的に引き離された。由美さんは虐待の疑惑について「故意ではなく事故だ」と主張し児童相談所と対立。一方、児童相談所は「対応を間違えれば子どもの命に関わる、職員は使命感をもって職務にあたっているが人手不足や鑑定能力などは不十分」とコメント、真実の争いは1年間、避けてきた。
 1年が経過し、子どもたちが1泊だけ帰宅を許され、久しぶりに親子の時間を過ごす。施設で暮らしが長い3歳と2歳の長男、長女。両親とのぎこちない会話、食事中のしつけ。母親を「先生」と呼ぶ長女。「3人を育てることはできない」という由美さんの本音。家族の風景は、こどもをこの家にどのタイミングで帰すべきか? また子育てした経験は自分に当てはめ、自問自答する。由美さん自身も子ども時代、親との確執で心の闇を持っていて治療されてない現実が次第に明かされる。
 虐待の「連鎖」を断つにはどうすればいいか? 由美さんのケースをきっかけに「親と子」のそれぞれの視点で取材が展開、トラウマを克服した虐待当事者や施設で暮らす子どもへのセラピーの最前線が紹介される。
 子どものころ虐待を受けトラウマを持ち、母親になり長女に虐待を加えてきた福岡の心理カウンセラーあきらさんは虐待の「連鎖」を克服できた理由を「事実を受け入れ、自分の行為を虐待と認めたこと」と告白する。またさまざまな事情で親と離れて児童養護施設で生活する子どもたちをグループホームで運営する神戸少年の町を取材。夫婦の職員が5人の子どもを、暮らしながら家庭的な雰囲気ではぐくむ「野口ホーム」の子育てを見つめる。母親役でお姉さん役の野口婦美子さん「子どもたちが自分はエコひいきされたと思って施設を巣立ってほしい」と愛着ある関わり方をさり気なく語る。施設を出る18歳までに親の真実を受け入れるのが宿命。親子関係の真実を見つめることからすべては始まる…。
 虐待相談が数値化されて18年。子育て支援団体虐待防止のNPOの活動も紹介、「1人で悩まないで」というメッセージを通して、あらためて社会的療育のあり方を訴える。

〈ディレクター 塩川恵造のコメント)

 1990年、関西テレビの報道キャンペーンをきっかけに、「児童虐待防止協会」が設立されました。虐待ホットラインのCMは夕方ニュースのスポットで流れています。この18年前は、国が児童相談所の統計を取り始めた年。相談件数は約34倍。過酷な現実に今年4月、改正防止法で児童相談所の権限が強化されましたが虐待の証拠や鑑定能力を必要とするためトラブルになりがちです。番組では「子どもを取られた」と語る由美さんが虐待をしたか、していないか? は最後までわかりません。ただ、虐待の真偽に当事者も児童相談所も、真摯に真実に向き合うこと(鑑定、合意)、そこから次のステップ(親子再統合)へ行くことが解明されています。虐待の「連鎖」を断つため社会はコストを負担できるのか? 真実と向き合う「手探り」を継続的に続けます。


<番組概要>

◆番組タイトル

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『手さぐり―児童虐待の真実を見つめた18年』

◆放送日時

2008年10月18日(土)深夜2時55分〜3時50分放送

◆スタッフ

プロデューサー
兼井孝之(関西テレビ報道番組部)
ディレクター・構成
塩川恵造(関西テレビ報道番組部)
ナレーション
豊田康雄(関西テレビアナウンス部)
片平純子(関西テレビアナウンス部)
撮影
大窪秋弘(関西テレビ報道映像部)
編集
井住卓治

2008年10月15日発行「パブペパNo.08-289」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。