2008.7.31

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『My name is “ダッチ”
 〜消防団を見つめる老兵ポンプ車〜』
(制作:秋田テレビ)

秋田県鹿角市十和田毛馬内にある鹿角消防団第12分団。その車庫に古い消防車が眠っている。昭和12年のアメリカ製で「ダッチ」の愛称で呼ばれ、消防団のシンボル的な存在。引退後もこの「ダッチ」が大切に守り続けられたのにはわけがあった。古い消防車を守り続ける消防団の姿を通して、現代の消防団、そして団員が抱える悩みや課題を浮き彫りにしていく。

<2008年8月2日(土)深夜3時25分〜4時20分放送>


 秋田県の北東部、鹿角市十和田毛馬内にある鹿角市消防団第12分団。この分団の車庫に古い消防車が眠っている。そのポンプ車は、ピカピカに磨かれていて、今でももちろんエンジンがかかり、車検さえ取ればすぐにでも出動できそうなみごとなクラシックカーである。この“老兵ポンプ車”は1937年、昭和12年のアメリカ製で「ダッチ」の愛称で呼ばれている。いわば消防団のシンボル的な存在だ。普通であれば現役を終えた消防車は、スペースの問題や維持費の問題などもあり、廃車になるケースがほとんどである。しかし、この「ダッチ」は昭和50年に現役を引退した後も、歴代の消防団員たちが大切に保管し守り続けてきた。「ダッチ」は当時の価格で6500円。米10キロの値段が2円50銭だった時代で、今の価値に換算すると600万円以上である。こんな高価なポンプ車をどのようにして購入したのか。実は当時の消防団員たちが一晩60銭の夜警手当てを大切に積み立て、不足した分は地元の住民たちから寄付を募って購入したのだ。自分たちが住んでいる所は自分たちが守るという意識が強かったのだろう。歴代の消防員たちがこの「ダッチ」をこれまで大切に守り続けてきたのは、こうした先輩たちの思い、地域住民の思いを引き継いできたからであり、その自主防災の精神を語り継ぐためなのだ。こうして長年愛され続けている「ダッチ」が見つめてきた街の風景、人々、そして消防団の姿は大きく変わってきた。特に消防団員の人数が減り、高齢化が進んでいる。これは全国的な傾向で女性団員の採用や企業に協力を求めるなどしながら、どこも団員確保に苦労している。番組では、古い消防車を守り続ける消防団の姿を通して、現代の消防団、そして団員が抱える悩みや課題を浮き彫りにしていく。
 71年間にもわたり「ダッチ」を守り続けてきた鹿角市消防団第12分団には、10年ほど前までは、50人以上の団員がいて、地区の若者はほとんど消防団員だったという時代もあった。しかし、現在の団員数は21人、団員定数の変更などはあったものの、規定より11人ほど少ない状態だ。平均年齢は45歳、20代の団員はわずか2人。まさに高齢化が進んでいるのだ。その貴重な20代の1人、田村智弘さんは入団7年目の28歳。消防団としての経験は浅いが、何をやるのも一生懸命な団員である。そんな将来を期待される若い団員を見守るのは、分団長の勝田保さん。消防団の定年は60歳、その定年まであと2年を切った勝田さんは、田村さんを初めとする若手団員たちに消防団で必要な技術などを伝えていこうと、現場に出動した際はもちろん、訓練などことあるごとに声をかけ、指導している。
 ところで最近は日本国内で大きな災害が発生すると、各地からたくさんのボランティアの人たちが集まってきて、被災した人たちの復興に一役買っている。しかし、自分たちの故郷を守る消防団には、人が集まらないのである。こうした中、田村さんは、学生時代の友人たちとの飲み会で、友人に対し消防団への入団を勧めていた。しかし、友人はなかなか首を縦に振らない。他の消防団に所属する友人も協力して誘うものの、なかなか難航している。しかし、集まりがあるたびに酒を飲むというような消防団の悪いイメージはなんとか払拭できたようだ。自分の消防団のシンボル「ダッチ」をこれからも守り続けるためには、もっともっと若い団員が必要だと感じている田村さん。消防団としての活動の中で、団員としての自覚や故郷を守っていくという思いが大きくなっているのが、強く感じられるようになった。また、第12分団の団員も田村さんに負けず劣らず「ダッチ」への思い、故郷への思いは熱い。こうした団員たちがいるからこそ、私たちが安心して日常生活を送ることができるのかもしれない。

ディレクターからのコメント 長嶋 伸(秋田テレビ)

 今回、主人公として登場する“老兵ポンプ車”ダッチは、鹿角市消防団第12分団のある、十和田毛馬内地区の「毛馬内消防団100周年記念」のパレードに参加して以来、実に14年ぶりに走行することになった。それも今回は地区のパレードではなく、年に一回の消防団の晴れ舞台とも言える鹿角市の消防出初式のパレードだ。エンジンは定期的にかけたり、メンテナンスを行っているというものの、久しぶりの走行、しかも秋田県内屈指の寒冷地域、鹿角の正月となれば「本当に無事に走れるのだろうか」という思いがどうしてもあった。関係者には大変失礼な話だが、もし調子が悪く走行不能になってしまったらせっかくの消防出初式自体が台無しになるかもしれないからだ。晴れのパレードを無事に走り切ることができるか。地区のシンボル、“老兵ポンプ車”の雄姿は見られたのか。そして、守ってきた団員たちの思いはいかに…


<番組概要>

◆番組タイトル

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『My name is “ダッチ” 〜消防団を見つめる老兵ポンプ車〜』

◆放送日時

2008年8月2日(土)深夜3時25分〜4時20分

◆スタッフ

プロデューサー
森 義弘(秋田テレビ)
ディレクター
長嶋 伸(秋田テレビ)
構成
森 義弘
ナレーター
吹浦 清
高橋紀子
撮影
菊池誉啓(秋田テレビ)
清水 聡
土谷三代(AMS)
音効
加藤彦次郎
編集
菊池誉啓
吉川 博

2008年7月31日発行「パブペパNo.08-201」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。