2008.6.4

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『おはよう、侑子。
 〜いつか目覚める娘とともに〜』(制作:福島テレビ)

学校で起きた事故によって一変してしまった家族の生活と、変わることない両親の娘を想う気持ちを描くドキュメンタリー

<2008年6月14日(土)深夜2時35分〜3時30分放送>


<内容>

 17歳の誕生日を迎えた一人の少女、名前は「侑子」。ベッドの上で迎える誕生日は4回目になる。平成15年10月18日。事故は福島県の須賀川市立第一中学校の柔道部の練習中に起きた。監督する教師が不在の中で起きた事故だった。全国大会に何度も出場したことのある名門柔道部だ。入学から半年後、1年生だった侑子が「休憩中に突然、倒れた」のだという。「急性硬膜下血腫」と診断された侑子は8時間にも及ぶ手術の末、なんとか一命を取り留めた。
 事故によって家族の生活は大きく変わった。母親は仕事を辞めてホームヘルパーの資格を取得、付きっきりで娘の介護を行なっている。父親は、妻に代わって家事の一切をこなすようになった。安全であるはずの学校で起きた事故。体の自由を奪われてしまった娘のことを多くの人に知ってもらうための講演活動をスタートさせるとは、事故が起きる前までは思いも及ばないことだった。

 事故から3年半がたったある日、須賀川市教育委員会がまとめた「事故の再検証報告書」には、部員による侑子への「暴力まがいの行為」があったことが明記されていた。しかし、侑子が「寝たきりになってしまったことと柔道場で起きたこととの因果関係はわからない」というのが教育委員会の回答だった。両親は「真実の解明」と「責任の所在」を明らかにするため、福島県と須賀川市を相手に損害賠償を求めて提訴。しかし、裁判に思うような進展は見られない。「柔道部への入部を認めたことへの後悔…」と「真実を明らかにすることのできないもどかしさ…」そして何より「侑子の将来への不安」が消えることはなく、両親は葛藤の日々を送っている。事故の後、オスの柴犬「大吉」が家族に加わった。大吉と毎朝5時に出かける散歩は、父親にとって唯一、自分と向き合える時間だ。散歩の途中に必ず立ち寄る神社では、ただひたすら娘の回復を祈る父親の姿があった。

 侑子は週に2日、専門的な介護を受けるため病院に通っている。母親にとっては少しだけ自由に過ごすことができる時間だ。片道10分、病院に向かう車の中で母親はつぶやいた「人生をリセットしたい…もう十分やったと思うことがある」と。いつも気丈に振舞う母親の言葉が重く響いた。家族のもとに養護学校から大阪への修学旅行への案内が届いた。母親は不安を抱きながらも修学旅行に参加することを決めた。母親と侑子は多くの人に支えられて、事故以来、初めての旅行に旅立った。中学校では行くことのできなかった初めての修学旅行…そこには忘れかけていた笑顔があった。侑子の部屋には何千、何万という折り鶴が飾られている。インターネットの掲示板をきっかけに侑子の事故を知った全国の人たちから届けられたものだ。侑子を包み込む、まるでカーテンのような千羽鶴の1羽1羽に侑子の回復を願う人たちの想いが込められている。
 侑子はベッドの上で静かに闘い続けていた。医学的にはもう何もやることはないといわれた侑子は、事故以来、音にも光にさえも反応できない日々が続いていた。それでも、侑子は音楽を聞かせることで脳に刺激を与える音楽療法を続けている。音楽療法を始めて1年がたったある日、脳波に大きな変化が…。そして奇跡は起きた。侑子が音楽に合わせて自らの意思で手を動かした…そして涙を流しながら何かを訴えるかのように口を動かした。母親はこのとき「娘は必ず目覚める」と確信した。あの日を境に大きく変わってしまった家族の生活。しかし両親の娘を想う気持ちが変わることはない。

<佐々木博正ディレクターのコメント>

 ある日、突然愛する人の身に体の自由を失うほどの事故が起きたら、自分はこうも強くいられるのだろうか。取材を重ねる度に考えていました。家族を守る者として強くあり続ける父親、優しい眼差しで娘を見つめ続ける母親。つらく苦しい日々でも、ひたむきに前向きに生きて行けるのは、「ベッドの上で懸命に生きる娘の姿があるからだ」と両親は話してくれました。親が子を、そして子が親を安易に傷つけ、家族間の愛情が希薄化する現代にあっては、失われつつある家族の姿なのかもしれません。侑子さんは家族に支えられ、今も回復に向かって毎日を過ごしています。番組を通して、あらためて家族のあり方について考えるきっかけになればと思っています。


<番組概要>

◆番組タイトル

第17回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『おはよう、侑子。〜いつか目覚める娘とともに〜』

◆放送日時

2008年6月14日(土)深夜2時35分〜3時30分放送

◆スタッフ

プロデューサー
橋本 泉
ディレクター
佐々木博正
構成
菊地昭洋
ナレーター
原田幸子
撮影
斎藤俊司
編集
長瀬勝喜

2008年6月4日発行「パブペパNo.08-150」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。