FNSドキュメンタリー大賞
能登半島地震の被災者たちを見つめるドキュメンタリー

第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『激震の町で生きる〜能登半島地震から2ヵ月〜』

(制作:石川テレビ)

<2007年11月10日(土)深夜3時55分〜4時50分放送>

 2007年11月10日(土)深夜3時55分〜4時50分放送の第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『激震の町で生きる〜能登半島地震から2ヵ月〜』(制作:石川テレビ)は、今年3月に起きた能登半島地震の被災者たちを見つめる。

<企画概要>

 今年3月25日、石川県内で観測史上最大となる震度6強の能登半島地震が起きた。この激震によって死者1人、300人余りの重軽傷者を出すなど住民に大きな被害を与えた。中でも被害の大きかった輪島市門前町は、人口に占める65歳以上の割合が5割近くに達する典型的な過疎と高齢化の町。
 番組では、現在も帰宅規制の措置がとられている地区の住民や、母屋が傾き住めなくなったため県外に転居するかどうか選択を迫られる高齢の親子を中心に2ヵ月にわたり取材。復興への希望と将来の不安が交錯する被災者の生活を見つめた。

<番組内容>

 今年3月25日。日曜日の朝に発生した能登半島地震。県内観測史上最大の震度6強を記録したこの地震によって1人が死亡し、300人を超えるケガ人が出た。さらに2000棟余りの住宅が全半壊、能登を縦断する幹線道路も次々に寸断された。また、ライフラインが断たれた地区も多く、地震の猛威に圧倒された住民たちはなすすべもなく立ち尽くした。中でも被害の大きかったのは輪島市門前町。人口に占める65歳以上の割合が47%と県内でも最も高齢化率が高い典型的な過疎と高齢化の町だ。
 三方を山々に囲まれ、海沿いに位置する門前町深見地区は36世帯80人余りが暮らす自然豊かな集落。ここも多くが高齢者世帯だ。地区に通じる海沿い2本の道路が土砂崩れによって寸断され、孤立状態となった。さらに、有線放送を通じた情報も途切れ、住民たちは繰り返される余震と押し寄せてくるかもしれない津波の恐怖に怯えた。
 助けを待っている時間はないと考えた板谷弘区長(72)は、自らの判断で漁船を借り、地区に残っていたお年寄りなど約50人を隣りの港まで運んだ。脱出は成功したものの、わずかな着替えだけを抱えて飛び出してきた住民たちを待っていたのは不自由な避難所生活。中にはストレスなどで体調を崩すお年寄りも―。
 発生から2週間後、待ち望んだ一時帰宅が認められた。しかし、散乱した我が家を見た住民たちはあらためて愕然とする。追い討ちをかけるかのように、集落の裏山に数十ヵ所の亀裂が見つかり、約1年は帰宅規制が続くことになった。
 深見地区で唯一子どものいる米田正志さん一家。妻の千草さんは家族がだれもケガをしなかったことが不幸中の幸いだと、前向きに考えようとしていた。長女の千夏さんが中学の入学式を迎えた日、避難所生活を送る住民たちの間にまるで自分の子どもや孫を祝福するように笑顔が広がった。千夏さんにとって一生忘れられない入学式となった。
 深見地区の住民たちは現在、仮設住宅で暮らしている。自宅とは違う不便さはあるが、採れたてのワカメを分け合うなど温かい近所付き合いは健在だ。地震で出た大量のゴミの片付けも力を合わせ済ませた。「みんなでいっしょにふるさとに帰ろう」。板谷区長を先頭に住民同士が団結しながら、この難局に立ち向かっている。

 深見地区と同じく豊かな自然に囲まれた海沿いの町、門前町道下。西町紀美子さん(67)は、母・とし子さん(86)と二人暮らしだ。5年前、夫と父を相次いで亡くし、足の悪いとし子さんとのただでさえ不安な生活。そんな状況の中、地震は起こった。幸い二人ともケガはなかったものの、蔵と納屋は倒壊。母屋も傾いてしまった。石川県は「住宅の補修・再建」に使える支援制度を創設した。ただ、上限は100万円。年金頼みの二人には、自宅再建は望めない。仕方なく紀美子さんは思案した。「思い切ってここを離れて、娘のいる京都へ行くしかない」。一方、母・とし子さんの思いは違っていた。「ふるさとを離れたくない―」。
 地震から一週間。とし子さんのひざに水がたまり、病院に運び込まれてしまった。急に悪化した症状に、主治医は「地震のストレスも影響している、しばらく門前を離れなさい」とアドバイスを送った。しかし、とし子さんの口から出たのは、やはり「行きたくない、どこへも」だった。葛藤の末、とし子さんは京都へ行くことを決断するが…。

<ディレクター・藤井直之コメント>

 取材は困難を極めました。被災された方々は時間がたつにつれ、不安やイライラが募り、押し寄せるマスコミに対して口を閉ざすようになってきました。この非常事態に被災された方との信頼関係を築き上げるのは大変でした。被災住民の皆さんには、苦しい生活を強いられる中、取材のために時間を割いてもらい感謝の言葉しかありません。時折、見せる笑顔にふるさとへの愛着や住民同士の結びつきの強さを感じる取材の日々でした。
 番組でも指摘した「高齢者の生活再建」など被災地には課題や問題が山積しています。真の復興までの道のりは険しいものとなることが予想されますが、住民の皆さんが本当の笑顔を取り戻すことができるのか、取材を継続していくつもりです。

<スタッフ>

 プロデューサー 赤井朱美(石川テレビ)
 ディレクター 藤井直之(石川テレビ)
稲垣真一(石川テレビ)
 構成 赤井朱美(石川テレビ)
 ナレーター 高田伸一(劇団110SHOW)
 撮影 藤井直之(石川テレビ)
木本俊也(デジカム)
小島崇義
近堂清司(石川テレビ)
千葉好則
 編集 斉藤淳一
 音効 高田暢也
 MIX 酒造博之(石川テレビ)
 録音 辻 夏樹
 美術 高倉園美(石川テレビ)
 制作著作 石川テレビ

2007年11月08日発行「パブペパNo.07-338」 フジテレビ広報部