FNSドキュメンタリー大賞
和太鼓4人と三味線3人のバンドの青年たちの姿を追うドキュメンタリー

第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『蒼の夢 〜ひびきよ届け いまどき道場〜』

(制作:仙台放送)

<2007年11月3日(土)深夜3時10分〜4時05分>

 第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『蒼の夢 〜ひびきよ届け いまどき道場〜』(制作:仙台放送)は、和太鼓4人と三味線3人のバンドの青年たちの姿を追うことで、若者たちの等身大の苦悩を描き、夢を持つ、仲間とつながるという「普遍の大切さ」を訴える。

<企画意図>

 和太鼓4人と三味線3人のバンド「閃雷」は平均年齢18歳である。本拠地は、「道場」と呼ばれる、ちっぽけなプレハブ小屋だ。月収7万円で結婚して、将来の不安に揺れるリーダー。日本一になったが売れずに焦る三味線弾き。兄の自殺以来、家にひきこもるニートな大太鼓打ち。弱くてふぞろいな若者たちが、道場に集い、輪郭が曖昧な「蒼の夢」を、1年間取材し、追いかける。季節のうつろいに合わせるように、若者たちが変わっていく。

<番組内容>

 和太鼓4人と津軽三味線3人のバンド「閃雷」は平均年齢18歳。和楽器だけで、みちのくから世界へ通じるような音楽を作りたいと2年前に結成された。ディレクターとリーダーのコウキ(22)は「主婦の和太鼓教室」で講師をしている時に出会った。金髪にピアス 生意気そうなイマドキの兄ちゃんだった。でも、妙に礼儀正しくて、爽やかで…まっすぐな瞳で、ディレクターに「和太鼓で食っていきたい」と言う。別れ際、コウキはディレクターに言った。「今度、道場に遊びに来てくださいよ…。」
 「閃雷」の本拠地は、宮城県北部の農村地帯にある山の中。かつて牧場だった草原の片隅に建つプレハブ小屋。彼らはそこを「道場」と呼ぶ。「道場」という響きに、ボクは新鮮さを覚えた。道場とは、「修行するために生活をともにする場所」。辞書には、そう書いてある。いまどきの若者たちが、いまどき道場と呼ばれる場所に集う。10畳ちょっとのオンボロでちっぽけな道場に、メンバーたちの熱があふれていた。
 「夢を持てない」と世間の若者たちが嘆く今、天才でも優等生でもない、弱くてふぞろいなメンバーたちが、夢を追いかけていた。不器用でまだ輪郭が曖昧な「蒼い夢」だ。「閃雷」を取材する1年が始まった。
 リーダーのコウキ(22)は、面倒見の良い兄貴分。小児ぜんそくを克服するため、小学2年生の頃から和太鼓をやっている。高校時代は不良を気取ったが、和太鼓だけは続けてきた。人から唯一ほめられたのが和太鼓だという。高校卒業後、コウキは実家を離れ、焼肉店のアルバイトで食いつなぎながら活動を続けている。月収は、7万円…。焼肉店の上司である4歳年上の女性と結婚するが、生活は支えられっぱなし。夢と将来の不安とのはざまで揺れ動いている。

 コウキより1歳下の津軽三味線のマサト(21)は、妹2人と一緒に「閃雷」に入っている。高校から三味線を始め、わずか2年で日本一に輝いた「閃雷」の音楽的な柱。始めるのが遅かった分、マサトは一途に打ち込み猛練習を積んだ。恋愛もせず、高校時代のニックネームは「シャミー」だった。「吉田兄弟のように有名になって、世界で演奏したい」という夢を持ち、高校卒業後、三味線1本で生きていく道を進んでいる。
 着実に結果を残す年下のマサトに対してあこがれ、嫉妬を感じるコウキ。いっぽうマサトは、焦っていた。兄妹3人が三味線をすることで、両親にかかる経済的な負担は大きい。
工場勤務の父は、最近体調が思わしくない。早く売れて金を稼がなくては一家がつぶれてしまう…長男としての責任を感じていた。コウキとマサトは、同じ夢を持ちながらそれぞれに悩みを抱えている。
 「閃雷」の中で、落ちこぼれそうになっているヤツがいた。大太鼓のエースケ(21)。彼はニート。2年前、仕事のストレスから兄が自宅納屋で自殺。以来、エースケは仕事を辞めて道場に来る以外は家にひきもっている。父の死後、女手ひとつで育ててくれた母に対して申し訳ない…しっかりして、働かなければいけないのは分かっているが、エースケは、現実から逃げてばかり…どうしても動けない。
 季節のうつろいに合わせるように、ふぞろいな若者たちが変化を見せる。結婚後、道場から足が遠のきがちだったコウキは、雪の夜に涙する。マサトは、腕試しのためひとりアメリカへ旅立つことを突然告げる。エースケは、仲間の大切さを知り、自分と向き合い始める。悩み、夢への温度、はそれぞれ違うが、3人はもがきながらがむしゃらに走り出す。道場の中で、響きを重ねあっていく。
 春、「閃雷」は、東京でのソロ初ライブを決意。場所探しから会場設営、動員にいたるまですべて手作り。スタートラインである道場から東京への挑戦だ。解決しない悩み、壊れてしまいそうな形、誰にも負けない希望。弱くて愛おしい若者たちの等身大の今を描き、夢を持つ仲間とつながるという「普遍の大切さ」をこの番組では伝えてゆく。

<制作者のコメント>
ディレクター・高原康弘コメント


 彼らと出会ったのは、去年の夏。和太鼓4人と津軽三味線3人のバンド「閃雷」平均年齢18歳。夢は、和楽器だけで、みちのくから世界へ通じる音楽を作ること。彼らの本拠地は、宮城県北部の農村地帯にある、「道場」と呼ばれるちっぽけなプレハブ小屋。いまどきの若者たちが、なぜこんな道場で…ボクは新鮮に思った。月収7万円で結婚して、将来の不安に揺れ動くリーダー・コウキ(22)。家族の期待と苦労を背負う、三味線日本一のマサト(21)。兄の自殺以来、ニートになった大太鼓のエースケ(21)。メンバーは、金も力もない、ごくごく普通の若者たち。
 道場に集いまだ輪郭が曖昧な「蒼の夢」を、不器用に追いかける。1年間取材。季節のうつろいに合わせるように、ふぞろいな若者たちは少しずつ変わっていく。
 若者たちの等身大の苦悩を描き、夢を持つ、仲間とつながるという「普遍の大切さ」を伝えたい。現代の若者たちへの応援歌になれば…。


<番組概要>

 ◆番組タイトル   第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『蒼の夢 〜ひびきよ届け いまどき道場〜』
 ◆放送日時   2007年11月3日(土)深夜3時10分〜4時05分放送
 ◆スタッフ      ナレーション 古田優児
  撮影 高橋明広
  編集 斉藤佳子 田中裕介
  構成 水落恵子
  プロデューサー 岩田弘史
  エグゼクティブプロデューサー 佐藤俊昭
  ディレクター 高原康弘
  制作著作 仙台放送

2007年10月25日発行「パブペパNo.07-326」 フジテレビ広報部