FNSドキュメンタリー大賞
静岡イチゴの代表、「章姫」を開発した農家の親子を通して、イチゴ栽培の現状と課題、品種を守り、新品種を開発する難しさを見つめるドキュメンタリー

第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『章姫〜父が残したイチゴ〜』

(制作:テレビ静岡)

<2007年7月23日(月)深夜2時55分〜3時50分放送>

 2007年7月23日(月)深夜2時55分〜3時50分放送の第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『章姫〜父が残したイチゴ〜』(制作:テレビ静岡)は、静岡イチゴの代表として長年親しまれてきた「章姫」が新品種に押され、韓国では無許可で大量に栽培されるという現状のなか、「章姫」を開発した農家の親子を通して、イチゴ栽培の現状と課題、品種を守り、新品種を開発する難しさを見つめる。

<企画意図>
 静岡市駿河区久能のイチゴ農家、故・萩原章弘さんが15年前に開発した「章姫」は、静岡イチゴの代表として長年親しまれてきた。しかし「章姫」が今、正念場を迎えている。県が、開発した新品種に全面的に切り替える方針を示したためだ。一方、韓国では「章姫」が無許可で大量に栽培されていた。なぜ「章姫」は海を渡ったのか。「章姫」を開発した農家の親子を通して、「章姫」の一生を通して、日本と韓国のイチゴ栽培の現状と課題、品種を守る・新品種を開発する難しさを見つめる。「章姫」には親と子の絆が込められていた。

<番組内容>
 静岡県静岡市。駿河湾に面した久能地区は1月から5月にかけ「イチゴ」を求める客で混みあう。イチゴの栽培は100年前から始まった。この地域では、粒が大きく・甘いイチゴが長く栽培されてきた。その名は「章姫」。だが最近、新たなライバルが現れた。その名も「紅ほっぺ」。静岡県の試験場が開発した、40年ぶりの自信作だ。イチゴの生産額全国5位の静岡県。栃木・福岡を追い越そうと「章姫」から「紅ほっぺ」に全面的に切り替えて大量生産する方針だ。
 「章姫」は、イチゴ農家の故・萩原章弘さんが15年前に開発した品種だ。現在は、息子の和弘さん(48)が開発した農家・通称「育種元」の後を継ぎ、栽培している。
 「章姫は父さんそのもの。できるだけ長く栽培してあげたい。」和弘さんの思いだ。
 しかし、この「章姫」は幾つもの問題に直面していた。「章姫」は2007年1月、国の品種登録の期間が終了した。日本の歴代のイチゴは、15年から20年で姿を消している。登録期間が終了するということは、品種の世代交代を意味する。今、国に登録されている野菜や果物は約15000件。この内4分の1は「育種元」と呼ばれる一農家が開発した。しかし、この「育種元」の許可を得ずに登録品種を栽培し、利益を得る人も多い。「権利侵害」。登録期間が終了すると、この権利侵害に対する手立てもなくなる。期間終了の日。家族はどんな思いでこの日を迎えたのだろうか。
 そしてもうひとつの問題。それは韓国での大量栽培。「章姫」が、育種元である和弘さんの許可を得ずに韓国で栽培されているのだ。韓国の人々は、日本の2倍はイチゴを食べる。値段も3割程度安い。昨年、和弘さんは韓国の生産者に対し、「栽培許可料」の支払いと日本の最盛期に「章姫」を輸出しないよう要請した。しかし何の回答もないまま交渉は決裂した。「安い章姫が大量に日本に入ってくれば、章姫を栽培している農家に申し訳ない。もし、交渉が再開されればもう一度韓国に要請するつもりだ。
 それが「育種元」としての責任だから。」
和弘さんはそう思っている。
 普段何気なく食べているイチゴ。そのひと粒ひと粒に、品種を守り・育てたい、いつか父を超えたいと願う親と子の絆・思いが詰まっていた…。


<橋本真理子ディレクター・コメント>


 農業、特にイチゴの奥の深さに驚きました。萩原和弘さんは、イチゴを作ることが好きで後を継ぎましたが、イチゴの品種競争・権利侵害の対応、韓国の無許可栽培と課題が山積みで、正直驚いたそうです。萩原さんは、「品種保護」は農家が一人で太刀打ちできる問題ではないことを教えてくれました。「章姫」を栽培している農家から「あの人は栽培許可料を払っていない。韓国は払っていない。不公平ではないか」と言われれば対処しなければならないつらさがあります。そして「品種開発」に挑戦することも、並大抵のことではないのです。  子どもたちの前で酔っ払ってしまった父、それを見守る妻と子どもたち、店で子どもの背を測る父、「育種家」が集まる飲み会で「親父さんの味がようやく出せましたね」と言われ喜ぶ父。最近見ることがなくなった光景・どこにでもあるような、大したことがないと思われがちなそのひとことが、人を前向きにしてくれることを自然に表現しました。「品種開発したい。けれど、父の背中を見てきた自分にはなかなかできない。」大人の男のジレンマが、つらさが伝わると幸いです。そして幾つになっても父親が好き、母親が好きと言える、親子の絆をぜひ感じてほしいと思います。


<番組概要>

 ◆番組タイトル 第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『章姫〜父が残したイチゴ〜』
 ◆放送日時 2007年7月23日(月)深夜2時55分〜3時50分放送
 ◆スタッフ
  ナレーション 阪 脩
  撮影・編集 杉本真弓
  映像総括 大村義治
  音声 山本洋久/内藤裕貴
  効果 長田 渉
  タイトル 西川清美
  コーディネーター 陸 敬熙
朴 哲鎬
  取材・構成 橋本真理子
  総括デスク 榛葉晴彦
  プロデューサー 長谷川 明

2007年7月20日発行「パブペパNo.07-210」 フジテレビ広報部