FNSドキュメンタリー大賞
大都会の片隅、閉ざされた空間から見えてきたもの…

第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『ネットカフェ漂流』

(制作:フジテレビ)

<2007年6月24日(日)深夜2時35分〜3時30分放送>

 6月24日(日)深夜2時35分〜3時30分放送の第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『ネットカフェ漂流』(制作:フジテレビ)は、今、新しいホームレスの形として、社会問題化している“ネットカフェ難民”の実態に迫る。懸命に働きながら、それでも家賃が払えず、ネットカフェで寝泊りするワーキングプアの若者が増えている。景気が回復しつつある今もなお、首都東京で漂流し続ける彼らの日常を追って見えてきたこの国の“格差”の実情とは…。

<企画意図>
 今、東京で、懸命に働きながら、それでも最低限度の生活を営めない若者が増えている。彼らは“日雇い派遣”として働きながらも生活に困窮し、家賃が払えなくなり、ネットカフェのリクライニングシートで夜を明かす…。
 景気が回復したと言われる今も、セーフティーネットの網からこぼれ落ち、再チャレンジ不能に陥り、ネットカフェなどで暮らすことを余儀なくされた“現住所不定”の若者フリーター、日雇い派遣労働者が増えているのだ。
 格差社会、ニート、ワーキングプア…。2006年に流行ったこれらの言葉では説明できず、社会から見えない存在となっている新たな貧困層。なぜ今の生活から抜け出すことができないのか? そして今、何を思っているのか? 彼らの本音に迫る。

<番組内容>
 現在、景気は上向いている。東京ミッドタウンや新丸ビルに象徴される不動産ラッシュ。有効求人倍率も、去年ついに1倍を超え、今年の新卒採用はバブル期並みの超売り手市場とも言われている。
 しかし、ここに至るまで長い就職氷河期があった。バブル崩壊後、失われた10年で就職した25歳から35歳の就職氷河期世代は実に2000万人。この中には一度、つまずいてしまったばかりに、這い上がれず、未だ漂流し続けている人がたくさんいる。番組では、漂流する就職氷河期世代の日常を追った。

◇7年間ネットカフェで暮らしている日雇い派遣フリーター(34)
 21歳で、地元の娯楽施設に就職したTさん。しかし27歳の時、仕事中に腰を痛め、辞めざるをえなくなる。新たな仕事を探すが、不況下で高校中退のTさんを雇ってくれる企業は見つからない。人材派遣会社に登録し、“日雇い派遣”の仕事(ワンコールワーカー)を始めたものの、生活苦に陥り、家賃が払えなくなり、ネットカフェ生活に陥った。現在の月収は約10万円。
 23時、ネットカフェに入店。節約のため、5時間で1180円のナイトパックを利用している。Tさんは言う…「この生活のことは、誰にも言えない。一日中、誰とも会話しない日も多い。今年中になんとか今の生活を抜け出したい。」

 生活を追って見えてきた、格差という言葉では覆い隠せない貧困の現実…。Tさんがネットカフェから抜け出せる日は、はたして来るのだろうか?

◇会社から突然解雇通告を受け、生活に困窮する女性(34)
 短大卒業後、鉄鋼会社に正社員として就職したOさん。26歳で結婚し、退職。しかし、一昨年離婚したため、正社員として働ける会社を探したが不況下で見つからず、現在、旅行会社でアルバイト契約として、事務の仕事をしている。月収は約14万円。
 しかし、彼女を悪夢が襲う。急病で一日、無断欠席してしまったところ、突如、解雇宣告を受けたのだ。アルバイト契約だったため、失業保険も降りず、生活苦に陥った。
 非正規雇用で働く人は、ここ15年で倍増。いまや3人に1人は、正社員ではない。広がる“雇用格差”の現実を追った。

◇日本一激安のネットカフェ48時間密着ドキュメント
 東京、蒲田に日本一料金が安い24時間営業の激安ネットカフェがある。1時間100円。半年の交渉の末、今回、テレビの取材に初めて応じた。
 雑居ビルの5フロアに、209席ある店内。中でも人気なのが、1畳弱の畳席。どのような人がどのような目的で利用するのか。48時間密着の取材を通し、見えてきたものとは…。


<制作担当者のコメント>


高橋龍平ディレクター(フジテレビ情報制作センター)

 “自己責任”。私の頭の中では取材中、ずっとこの言葉がぐるぐると回っていました。“ネットカフェ難民”が今の生活に陥ったのは、彼ら自身の責任ではないのか。だとすると、別に社会問題ではないのではないか。でも、憲法25条で保障されている文化的で最低限度の生活は明らかに営めていないし…。
 そんな迷いの中、取材を進めるうちに、次第にあることが見えてきました。それは、現在日本が抱えている問題、例えば雇用格差、ワーキングプア、家族崩壊、ネット犯罪といった社会問題の縮図が、ネットカフェに見え隠れしているということ。“ネットカフェ難民”の問題はただ単に一つの問題ではなく、この国の行方を考える際に、極めて重要な問題なのではないかと思うようになったのです。
 “ネットカフェ難民”に対し、あくまで自己責任を強調するのか、それとも社会の問題としてとらえるのか…。この番組を一人でも多くの方々に見ていただき、皆さん自身にも考えていただけたら幸いです。


<番組概要>

 ◆番組タイトル 第16回FNSドキュメンタリー大賞『ネットカフェ漂流』
 ◆放送日時 2007年6月24日(日)深夜2時35分〜3時30分放送
 ◆語り 松田洋治
 ◆スタッフ
  プロデューサー 味谷和哉(フジテレビ情報制作センター)
  ディレクター 高橋龍平(フジテレビ情報制作センター)
  撮影 大津 豊、高川潤子
  構成 岩井田洋光
  編集 村上安弘
  音効 半澤知宏

2007年6月19日発行「パブペパNo.07-174」 フジテレビ広報部