FNSドキュメンタリー大賞
第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『約束〜日本一のダムが奪うもの〜』

(制作:東海テレビ)

<2007年5月14日(月)深夜3時〜3時55分 放送>

 5月14日(月)深夜3時〜3時55分放送の第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『約束〜日本一のダムが奪うもの〜』(制作:東海テレビ)は、「約束」という切り口からダム建設において横行する不誠実さに迫る。

<企画概要>
 岐阜県揖斐川町・旧徳山村に建設中の「徳山ダム」は、湛水が昨年9月下旬に始まった。このダム建設で、旧徳山村村民1300人が、集落水没のため、全村移転し、村は20年前に廃村となった。廃村の際、水資源開発公団は村民に水没する道路の代わりに、新しい道路網の建設を約束していた。
 しかし、6年前、この約束は反故にされた。番組では、徳山村最後の総務課長が、この問題に正面から取り組んでいる姿を追いながら、現在も、非水没地区で暮らす人々のふるさとへの思いと、湛水開始によって退去させられていく一部始終を密着した。そして、水資源開発公団、国が、岐阜県など行政が一体となって、村民を陥れていった構図に迫っていく。
 お金に換えられないもの、大事なものを奪い取られたり、追い詰められることほど悲惨なことはない。そして、ダムの犠牲者に強いた2度目の仕打ちを追い、「約束」という切り口から、現代社会に、横行する「不誠実」について、村民の怒りに寄り添いながら迫っていく。

<番組内容>
 2006年秋、岐阜と福井の県境、岐阜県揖斐川町の山奥で、貯水量日本一の『徳山ダム』が動き出した。貯水量は、浜名湖2個分(6億6千万トン)という日本一のダムである。このダムに水没する旧徳山村は、20年前に、全村1300人の村人が移転した。
 この取材は、25年前から1人の先輩記者が継続的に続けてきましたが、現役を引退したため、ダムの稼動という時に、現在の担当ディレクターがいわば「打席」に立つことになった。
「約束を破られた」
「道ができない」
 20年前、水資源開発公団(現 水資源機構)は、村人にダム湖周辺の道路網の整備を約束したが、ダムの本体が完成したというのに、「約束」の道は、全く建設していなかった。ダムに水没していく道。代わりの道がないと、村人はご先祖様から受け継いだ自分たちの山にさえ行けなくなる。治水、利水、発電という「公」のため、ふるさとを追われた村人への仕打ち…。
 時代が変わった…。緊縮財政だから…。そんな誰も通らない道を作る必要はない…。
 いくらでも理由はつけられる。しかし、「公」が約束を破ることを容認しては、世の中、メチャメチャになってしまう…番組では徹底的に旧村民を追いかけた。
 番組では、水資源機構と正面から向いあう旧徳山村最後の総務課長の腹の底からの憤り。ミツバチとともに、今も、水没しない地区に通い続ける養蜂家のおじいさん。そして、最後まで、家を壊したくないと住み続けた夫婦の物語を追いかけていた。

(ディレクター・阿武野勝彦コメント)

 この番組は、東海テレビが、25年にわたって取材を続けてきた岐阜と福井の県境、遠く離れた山里のお話です。
 ダムに沈む村「徳山村」。そして日本一の貯水量を誇る「徳山ダム」…。その集大成が、この番組です。しかし、ダムに沈む村のノスタルジーではありません。ダムの稼動を目前に取材に行ってみると、「公」に踏みにじられる山の人々の姿がありました。
 「国のために、ふるさとを追われた村人に、約束を果たさないダム行政…」
 いつからか、私たちは、だまされた人に同情するどころか「だまされる方も、悪いんだ」という国民性に変わってしまったことに気がつきました。私たちは、どんな社会を作ってきて、これから、どこへいこうとしているのか。大自然と村人の暮らしに分け入りながら、考えました。
 一本の道。一つの「約束」から、何が見えてくるか…。いま、一番伝えたいメッセージを、番組にのせました。


<番組概要>

◆番組タイトル 第16回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『約束〜日本一のダムが奪うもの〜』(制作:東海テレビ)
◆放送日時 2007年5月14日(月)深夜3時〜3時55分
◆スタッフ
  取材・構成・演出 阿武野勝彦
  撮影 塩屋久夫
  編集 山本哲二
  取材 鈴木祐司
  効果 森 哲弘
  ナレーション 小西美帆

2007年5月14日発行「パブペパNo.07-132」 フジテレビ広報部