FNSドキュメンタリー大賞
2005年7月、戦時中に石川県七尾市の港に強制連行され過酷な労働を強いられたとして、
元作業員の中国人4人が国と企業を相手に謝罪と損害賠償を求める訴えを金沢地裁に起こした。
戦後60年が過ぎた今、日本は何を置き去りにしてきたのか…。
日本と中国が本当の信頼関係を取り戻すためには何が必要なのか…。
彼らを支援する角三外弘さん(60歳)の姿を通し考える。

第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品

『信頼を築きたい〜七尾・中国人強制連行から60年〜』

(制作:石川テレビ)

<9月3日(日)深夜2時35分〜3時30分放送>

 9月3日(日)深夜2時35分〜3時30分放送の第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『信頼を築きたい〜七尾・中国人強制連行から60年〜』(制作:石川テレビ)は、戦時中、強制連行され過酷な労働を強いられたとして、昨年、国と企業を相手に謝罪と損害賠償を求める訴えを金沢地裁に起こした中国人の元作業員4人を支援する、角三外弘(かくみ・そとひろ)さん60歳の姿を通し、戦後60年が過ぎた今、日本と中国が本当の信頼関係を取り戻すためには何が必要かを考える。

<企画概要>

 2005年7月、戦時中、石川県七尾市の港に強制連行され過酷な労働を強いられたとして、元作業員の中国人4人が国と企業を相手に謝罪と損害賠償を求める訴えを金沢地裁に起こした。この中国人たちを支援する角三外弘(かくみ・そとひろ)さん60歳。彼は七尾市内の小学校の教師の傍ら、1995年から市民団体の一員として中国人の“被害者”たちとの交流を深めてきた。戦後60年目にしてなぜ今、裁判なのか。地元の日本人として戸惑いながらも、高齢化する中国人たちの支援を決意する角三さん。2度にわたる角三さんの訪中に取材班が同行する。
 戦後60年が過ぎた今、日本が何を置き去りにしてきたのか、日本と中国が本当の信頼関係を取り戻すためには何が必要かを考える。

<番組内容>

 外務省に残されている資料によると、太平洋戦争末期、日本に強制連行された中国人はおよそ4万人。その内、6,800人あまりが日本で亡くなったとされている。石川県七尾市でも当時399人の中国人が七尾港に強制連行され、石炭や食料の荷揚げ作業など過酷な労働と、わずかな食料による栄養失調によって、わずか1年たらずで15人が死亡。60人あまりが失明した。
 終戦直後、この七尾の地で生を受けた角三外弘さん(かくみ・そとひろ)60歳。小学校の先生をしてきた彼は、地域の歴史を子どもたちに教える中で、この問題を知る。そして1995年。被害者の一人、馬得志さん(現在82歳・北京市在住)が50年ぶりに七尾を訪れたことをきっかけに、その後、強制連行を調査している仲間たちと共に何度も中国に渡り、被害者の中国人たちとの交流を深めてきた。そんな中、中国人の被害者たちは、日本と七尾の企業を相手に謝罪と損害賠償の裁判を起こすことにし、昨年2005年7月、金沢地裁に提訴した。地元の日本人として裁判には大きな抵抗はあったが、高齢化する被害者たちの叫び、日本側の状況の変化など、彼はさまざまな思いを胸に裁判を支援することを決意する。
 一方、中国で活動する若い男性・王水華さん(河南省在住)。彼は2002年に角三さんたちと出会い、活動を共にしていく。中国側の人間として活動しながらも、日本人の支援者との交流が深まる王さん。農作業の合間をぬって、自ら調査活動を続け、新たに見つかった生存者からの聞き取りや、新聞社への名簿の掲載などを続けている。なぜそこまでするのか。彼の父、王忠耀さんもまた、七尾へ強制連行された中国人の一人だった。彼の父は2005年2月に死亡。高齢化し次々と亡くなっていく中国人たちの叫びを、遺族となった王水華さんは誰よりも強く感じ、残された時間に限りがあることを知っている。だからこそ、時間を惜しんで彼は生存者や遺族を捜し続ける。
 裁判が始まった。一方で角三さんは、七尾で当時、死亡した15人の中国人のことをずっと気にかけていた。七尾の寺に保管されていた遺骨は、戦争が終わり、中国・天津市まで戻されたことまでは分かっている。その後が、分からない。角三さんは、七尾で死んだために、家族、遺族がどれだけつらい目にあったのか、一家の大黒柱を失うことがどれほどつらい事なのかを、実際に遺族から聞いて確かめたかった。それは次の世代に伝えるべき事。戦争の悲惨さを伝えるためには必要なことだと感じていたからだ。
 調査が始まって11年目の春、ようやく遺族が見つかる。王水華さんの調査活動が実ったのだ。角三さんはすぐさま、中国へ行くことを決断する。そして七尾で亡くなった3人の中国人の遺族から話しを聞いて、遺骨が戻されていないこと、それどころか日本に連れて行かれたことすら知らなかった事実に愕然とする。せめて遺骨だけでもと話す遺族の思いに対し、遺骨を探しに天津へ向かう角三さん。しかし、天津で国というものに翻弄される個人の小ささに衝撃を受けるのだった。
 番組では角三さんの姿を通して、日本と中国が本当の意味で信頼関係を取り戻すためには何が必要なのかを探っていく。

<ディレクター・才澤孝コメント>

 団塊ジュニア世代の自分にとって、戦争というものは遠い存在でした。その中で、かつて強制連行されていた中国人のお年寄りたちが裁判を起こすという話を聞き、六十年も経ってからなぜ、今、裁判なのか、それが私の一番、最初の感覚だったのです。
 取材を進める内に、この問題は今もって解決していない。それどころか、全くの誤解や偏見、さらに、政府側の隠蔽の連鎖などもあり、今の日本社会のゆがみを浮き彫りにしている問題なのではないかと感じたのです。裁判はしたくない、けれども、今だからこそ裁判をしなければならないという中国側、日本側、双方の思いがありました。日中関係がぎくしゃくしている中、主人公となった角三先生の姿を通して、本当の友好ってこういうことなんだ、と感じてもらえるものになっていればと思います。


<番組概要>

 ◆番組タイトル 第15回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『信頼を築きたい〜七尾・中国人強制連行から60年〜』(制作:石川テレビ)
 ◆放送日時 2006年9月3日(日)深夜2時35分〜3時30分放送
 ◆スタッフ
プロデューサー 米澤利彦(石川テレビ)
ディレクター 才澤 孝(石川テレビ)
構成 赤井朱美(石川テレビ)
ナレーター 高田伸一(劇団110SHOW)
撮影 小島崇義(フリー)
森 修(ラックプロ)
編集 斉藤淳一(フリー)
制作 石川テレビ

2006年8月28日発行「パブペパNo.06-281」 フジテレビ広報部