FNSドキュメンタリー大賞
生きる意欲を失いつつある認知症のお年寄りが、
残り少なくなった人生を自分らしく精一杯生きていこうとする姿を描く渾身のドキュメンタリー!

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『今が消えても〜認知症と介護をめぐる記録〜』

(テレビ長崎)

<2006年1月10日(火)深夜2時53分〜3時48分放送>

 認知症のお年寄りは現在およそ150万人にのぼり、さらに10年後には250万人に達すると見られています。認知症の高齢者が増加する中、介護の質や家族の向き合い方が問われています。
 今の記憶は残らないとしても、その瞬間は幸せであってほしいと願う家族と介護スタッフの日々を追いました。
 2006年1月10日(火)放送第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『今が消えても〜認知症と介護をめぐる記録〜』(テレビ長崎)<深夜2時53分〜3時48分>では、生きる意欲を失いつつある認知症のお年寄りが、残り少なくなった人生を自分らしく精一杯生きていこうとする姿を描いていきます。

 長崎県佐世保市にある「グループホーム・ピア花水木」は、認知症のお年寄りを受け入れ、家庭的な雰囲気の中で一人一人を大切にした介護を行っています。入居者の一人、木村キヌさん(77歳)はアルツハイマー型認知症です。キヌさんは最愛の夫を25年前に亡くしました。アルツハイマーの症状が出始めた頃、キヌさんは夫への思いを書き残しています。そこには一人暮しのキヌさんが孤独の中で生きる意欲を失っていく心の叫びが綴られていました。キヌさんには3人の子供がいますが、それぞれ結婚し、遠くで暮しています。次女の恵子さんは長崎市から車で1時間半かけて佐世保市まで母に会いに来ます。親子でどんなに楽しい時を過ごしても、風が吹くように忘れていく母を前にして、娘は「いつか自分や孫の顔さえもわからなくなってしまうのでは…」という不安と悲しみを抱えています。それでも、娘はたとえ母の記憶には残らなくても、瞬間瞬間の今、母が幸せを感じてくれたらいいと考えるようになっていきます。認知症の母と娘の心の軌跡を追いました。

<ディレクターコメント>

 認知症のお年寄りはたった今のことをどんどん忘れてしまいます。何度も会っている私たち取材スタッフのことも憶えていなくて、いつも初めて会うお客さんだと思って「いらっしゃい」と笑ってスリッパを出してくれます。そして、今度はお盆にのせてお茶を繰り返し持って来ようとするのです。「さっき、頂きましたから…」とお断りしても「なんば遠慮しよっとね。飲まんですか…」と私たちをもてなそうと一所懸命してくれます。「母の最後の記念になるなら…」。そう言って、娘さんはアルツハイマー症の母親の取材を承諾してくれました。
 「その願いを裏切らない番組を作らなければならない」。私はそう心に決めて取材に臨みました。でも、大きな迷いがありました。記憶を失っていく哀れな姿を撮影することは家族や本人を傷つけることになるのではないか。もし、自分の母親が認知症になった時、取材を許すだろうか。
 そんな中で、母親のキヌさんとの取材を重ねるうちにその迷いは少しづつ薄れていきました。認知症のお年寄りはよく本音を話すと言いますが キヌさんは私にも自分の今の気持ちをたくさん聞かせてくれました。最愛の夫を失った悲しみ、年をとることの寂しさ、家族との幸せな日々、やがて近づく死への思いなど心の奥まで静かに話してくれました。そして誰もが辿る老いという道の中にある真実に気づかされました。それを私はキヌさんを通して、作品の中で伝えることができたらと願っています。


2005年12月26日発行「パブペパNo.05-472」 フジテレビ広報部